第12話 更衣室前でのやり取り


月城とのバトル?が終了し、望美と月城が友達になったようだ。屋上から体育館隣の更衣室に移動するまで、俺の話しかしないのが気になったが。


今現在、俺は女子更衣室の前にいる。


不可抗力なので許して欲しい。望美たちと亜香里が入れ違いになり、出てきたジャージ姿の亜香里に睨まれるや、俺は思いっきり胴タックルされ、背中から落ちる。


別に覗くつもりは無かったと弁明したが、笑顔の亜香里に親指を下に向けられてギルティーと宣告された俺。


何をされるかと思いきや、そのまま俺の足は亜香里の膝に乗せられ、テーピングの練習相手をさせられているのだ。


今この場所でやることじゃないだろって?俺はそう思うよ?でもさ、亜香里がどうしてもって言うから・・・。


「お兄、足が痛いフリして」


「あ痛たたた!足があぁぁ」


「大根役者」


せめてひねったとか折れたとか具体的なシチュエーションがほしいぜよ。


お隣の男子更衣室の扉が開く。三人の男子が制服姿でこちらを見ていた。ほら、亜香里さん?変な目で見られてるから、やめましょう?


「おお兄様と姫が戯れを・・・ありがたやありがたや・・・」


こちらを向いたまま手を合わせて祈り出す三人。絶対他人じゃ無いよね?怪しすぎて仲良くなれる気もしないけどな。


「お兄、この人たちは、わたしの親衛隊」


「できるとは思っていたよ」


中学の時もいたもんな。あかりちゃんブヒブヒ親衛隊だっけ?


キモすぎて解散になったけど、あいつらの生き残りだろうか?


「お初お目にかかるでござる。拙者は亜香里同好会長男、武藤と申す」


「同じく次男、田中」


「同じく三男、北川」


「だ○ご三兄弟かよ」


「無害だからお兄に言って無かった」


うん、まぁ無害そうなのはわかるけど、こいつら何してんの?


「大兄様。拙者達は兄になるために日々研鑽を積んでいる所存。亜香里姫を妹と呼ぶ許可を」


「「許可を」」


何なんだこのキチガイシスコングループは。


「お兄の手下になれって言ってある」


君の仕業かよ。


「俺、ちょっと困ってることあるんだけどさ」


「ーーー!何でも!何でもしますからぁ!」


必死過ぎて引くわ。


「じゃあ、この姫の、姉の望美って知ってるか?」


「知ってるとも。姉さんを知らないやつなどこのメンバーにいない」


姉さん・・・?


「なんかちょっとその呼び方イラッとするから禁止で」


「!!大兄様の望み通りに・・・」


「普通に五橋先輩でいいだろ」


「御意」


「で、その五橋先輩が今日、変な噂流されて困ってるのさ」


「その噂の元を探れと?」


「いや、もう出目はわかってる。あとはうまい具合にその噂を消火して欲しいだけだ。やってくれるか?」


「あっ、待って長男、ちょっとお耳貸して」


座ったままの亜香里が田中くんに何かしゃべっている。あっ、武藤くんだっけ?・・・どっちでもいいか。


「御意。必ずや、良い報告を持参する」


そして、敬礼したまま走り去る3人組。なかなかにシュールだった。


「何話したんだ?」


「内緒。お兄の足、ツボ押ししていい?」


「目的が変わってるっ!?」


月城の暴走を無かったことにはできない。でもまぁ、望美の受けた風評被害を最小限にすることはできるだろう。


月城をかばってやる義理は無いが、学年一位になるために恩を売ってもいいかな?とか思ったりもするのだ。

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