星めぐりのロックンロール
3-1 ◯
「なぁ」
窓の向こうに広がる宇宙を眺めながら、ワンフォンが気怠げにぼやく。
「どうした」
同伴している相棒のウィーピンはまた始まったかと思いながら、普段の調子で返す。
「前も話しただろうけどさ、俺、宇宙を冒険することに憧れて宇宙開拓調査官になったんだよね」
「あぁ、それは前にも聞いた」
「だけどさ、映画で語られるような冒険ってないんだなって最近気づいたよ。こう、全然変わらない景色を見ているとさ、俺が飛んでいる意味って何なんだろうなって思うように鳴ってきたんだ」
実際、二人が乗る調査船は既に二ヶ月以上飛んでいた。その間の外の世界では他の惑星が見つかるどころか、小惑星の一つすら見当たらなかった。
「ワンフォン。お前、すっかり宇宙病にかかってしまったな」
「そういうのじゃないんだ」
「いや、いいかワンフォン。よく聞いてくれ」
すっかり弱った相棒を励まそうと、ウィーピンは続ける。
「この仕事は退屈じゃないだろう。銀河連盟が宇宙各地に広がっているとはいえ、まだまだ未知の領域が多いわけだ。そこには生命体がいるかもしれないだろう。そうじゃなくても、新たなハイウェイを架けるために、星系間の開拓だって必要だ。それのどこが退屈だ?」
「いや、だから、そういうのじゃないんだ」
「だったら何だ。故郷が恋しくなったか?」
「まぁ、そうとも言えるかもしれないな」
「あれほど空を見て、星々の魅力を語っていたお前の言葉とは思えないな」
「生きていれば考え方も変わってくるもんだ。最近気づいたんだ、劇的な生活が欲しいんだって。開拓調査官になるまでの課程で死ぬほど努力したこととか、どうしても大学に行きたいから家業は継げないって親父を突っぱねたこととかさ。あの時は、劇的な明日が待っているもんだと思っていたんだ。今思えば、あの日こそが劇的な日々であったんだよな。こう思い返すってことはさ、俺にとって宇宙はそういう所じゃなかったんだよ。だとしたら、故郷に帰って何か違う仕事を見つけようとして、恋人でも探そうとすることが、まだ劇的な生活になるんじゃないかなって思うんだよ」
相棒の赤裸々な告白にウィーピンは言葉を失くしていた。ワンフォンはいつでも冗談を飛ばし、宇宙船で飛ぶことが人生そのもののように生きているように見えていたからだ。それをもう辞めたいということは、ワンフォンなりの心境の変化があったということだろう。
それに気づけなかった自身に、ウィーピンは一抹の寂しさを覚えた。始めはどうにか受け止めて「そうか。ならそれもいいんじゃないか」と返そうとしていた。だが長い年月を共にした相棒がいなくなると考えると、言葉が体の奥に引っ込んでいた。調査目的すら思い出せなくなるほどに、思考回路が明滅する。
「おいワンフォン」
「なんだよ。引き留めよう立って無駄だぞ」
「いや、違う。見ろ」
二人の眼前で申し訳なさそうにランプが青く光っていた。その意味は、未確認物体をレーダー上に捉えたという意味を知らせていた。
「もしかすると、お前の求める劇的な展開かもしれないぞ」
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