27話 第一回セントベル島開発会議

「それでは! 第一回セントベル島開発会議を行います!」

「はいっ」


 今日は前からしたかったセントベル領の開発について、住民の意見を聞く会を開催している。

 ひときわ元気に返事をしたのはカラだ。

 この日のためにお父さんのルアオを連れてきてもらったら、なんか張り切ってしまっているみたいだ。


「今後、この島をどう発展していくか、島の住人……特に集落の人達の意見を聞きたいと思います」

「はいっ、はいっ」


 カラ、落ち着いてくれ。僕は浜辺に大きく『セントベル島開発』と書いた。


「産業として今あるのはキナハ織りのシャツと石鹸だね」

「ええ。それがなにか」


 ラリサが不思議そうに僕に聞く。


「僕のスキルで複製は出来るけど、どうしても多少品質が劣化してしまう」

「ですねぇ」


 一ヶ月熟成させた石鹸も、オリジナルと複製では泡立ちが違った。

 この差をどうしたらいいか僕は悩んでいた。


「ならば複製は安価に手に入る普及品として流通させればよろしいのです」

「普及品?」

「ええ。まずはキナハ織りの涼しさと丈夫さを手軽に体験してもらい、そのブランド力を高めます。アレン様が複製していないオリジナルのものは高級品でよろしいかと。石鹸も同様です」

「ほうほう」

「ほかに、小物入れやバッグを作ってみてはいかがでしょう」

「ふーん、そうだね」


 僕は浜辺にそれらをかき込んでいく。


「問題は流通網だね」

「その通りです、アレン様。このまま連絡船だよりというのは……」

「かといってツテもないな。とりあえずは保留だ」


 次の連絡船が来た時に、船長に聞いて見よう。あの船長は僕達と敵対している訳ではないし。


「資金が増えたら技師を呼びたい。カラの集落の治水をもっと徹底的にして病気を根絶するんだ」

「アレン……」

「井戸と下水道を作ろう。今よりもっと暮らしやすくなるよ」

「あたしたちはそれにどう答えたらいい?」

「そうだな……」


 僕は頭を巡らす。この島で暮らしていくのに彼らの知恵は随分役に立っている。

 今さら何か求めるつもりもないけれど……。


「民芸品とかも作って貰おうかな。それからここを保養地にしたときの従業員もやって貰いたい」

「保養地?」

「うん。ここはあったかいだろ。ルベルニア本土で病気の人もここにきたら元気になるかもしれないって僕は思っているんだ」

「へぇ……」


 僕はくるりと簡単に、島の地図を描く。


「僕達がいるここ。ここに大型船も停まれる港を作る。それから宿泊所……。これは集落の伝統的な建物がいいかな、南の島の雰囲気は大事だしね」


 そして僕はマリーに目を移す。


「それで! お客さんをもてなすのはマリーの料理だよ。マリーの中には数千のプロの料理人のレシピが入っているんだ!!」

「はい、その通りです。またいくつかのレシピを自動で組み合わせることもできます」

「すごいんだねぇ」


 マリーを見るカラの尊敬のまなざしが強くなる。


「その、保養地? ってのがアレンがここでやってみたいことなんだね」

「うん。でもそのためにはこの島に人を呼ばなくちゃならないんだ。前途多難だよ」

「まあ、それは先にするにしても、宿の建物は作っておいたら?」

「……! そうだね」


 カラの言う通りだ。修復のスキルもあるから経年劣化のことは考えなくてもいい。


「そうだね。場所もある程度目星はつけているし」

「それってどこ?」

「ほら、カラと初めてあった山のあたりだよ」

「ああ……」

「あそこから見る海は綺麗だから」


 あそこにカウチを置いて、いつまでも海を眺めていたらきっと素敵なはずだ。


「そうか、じゃあ村から人を出そう」

「本当ですか、ルアオさん」

「ああ。まずは木の伐採だな」


 助かる。こうして、僕達は山の中腹を切り開いてホテルを作る計画をスタートさせた。




「ほい、リョウシュ様」

「はい! えっほえっほ」


 村人の力を借りて木を切っては下に運んでいく。

 三ヶ月もすれば出来るっていうけど本当かな?

 とにかくこれでまた一歩、リゾート地としてセントベル島は進歩したのだった。

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