8話 驚きの機能!
「さて」
僕は『修復』したペンダントとイヤリングを手に、灯台の外に出た。
「べーっ!」
「しっしっ、べえこちゃんこれは餌じゃないよ」
僕の姿を見て寄ってきたべえこちゃんを追い払って、僕はペンダントを身につけ、イヤリングを耳につけた。イヤリングは初めから片方しかなくて一個無くしたのかと思ったんだけどこれはこういうものらしい。
「それでなにが出来るんですか?」
「うん、ここの距離とか温度とかが分かるらしいんだけど」
僕はペンダントをスライドさせた。そこにはガラスがはめ込まれていて、数字を表示している。けれどそれはでたらめなものだった。
「これは何だか分からないけど使えないみたいだ」
「『修復』しても駄目ですか」
セドリックが不思議そうな顔をして聞いてくる。これはなんて説明したらいいかな。
「うん。情報を発信する何か別のものが壊れてるみたい」
それがどこにあるのかわからない限り、この機能は使えない。
「でもそれだけじゃないんだ」
僕はペンダントのボタンをいくつか操作した。するとそこにひょうたん型の図形が表示される。そこには赤い点がひとつ点滅していた。
「これは……」
「そう、おそらくこの島の地図だよ。そしてこの赤いのが僕達のいる灯台。つまりこのペンダントのある場所」
「これがあればお館様は迷子になりませんね」
「う……その通りだけど、それだけじゃなくてこれがあったら島の探索がやりやすくなるだろう?」
そりゃまだまだ子供だけどちいちゃい子じゃないんだから!
「それからね」
僕はにんまり笑いながらペンダントをラリサに向けた。
「えっ、えっ、なんですか?」
「笑って!」
「え……」
ラリサが引き攣った笑顔を浮かべた所でボタンを押す。するとカシャという音がした。
「ほら。すごくない?」
「あっ!?」
ペンダントを覗き込んだセドリックとラリサが驚きの声をあげた。
「ラリサの姿絵?」
「わあーん、わたし変な顔してるじゃないですか!」
「なんか見えたものを一瞬で記録できるみたいなんだ」
何に使ったらいいか分からないけど、これはどこかで使える気がする。
「それから?」
セドリックが急かしてくる。待って、えーと。
「あと、音楽が聴ける」
「え?」
「このイヤリングから聞いたことない変な曲が流れてくる」
「……それだけ?」
「うん……」
この機能は微妙だな。でもな、一番使えそうな機能がまだあるんだ。
「それからこれ」
「これは……? 文字……『こんにちは』?」
セドリックが画面を見て首を傾げる。
「うん。これ、色んな言葉を翻訳してくれるみたいなんだ」
「え!!」
「お館様……それじゃ」
「そう。これがあればカラ達先住民と意思疎通ができる!」
「すごい!」
そう、このペンダント……機械の一番すごいところだ。僕が発した言葉を別の言語にしてくれるし、このイヤリングから相手の言葉を勝手に訳してくれるらしい。
実際そう上手く行くかはカラに会ってみないと分からないけど。
「というすごいものだった訳だ」
「はぁー、大変でしたね、アレン様」
「うん。でもね、三日もかかったのは理由があるんだ」
僕は後ろに隠していた箱の中身を見せた。
「ほら!」
「えっ!?」
「同じ物がもうふたつあるわ!?」
「えへへ……『修復』のスキルを使い慣れてきたら出来たんだ。一つ目の道具を複製してみたよ」
「なんてこと……」
「これはセドリックとラリサのぶん!」
どうせならみんなで使ったほうが便利だもんね。これが死ぬほど魔力を消費して大変だったのだけど、頑張りました!
「……緊張しますね」
「壊したらどうしましょう」
セドリックとラリサは恐る恐る、ペンダントを首にかけた。
「壊れたらまた直すから。それが僕の能力だもんね」
「さすがアレン様です」
セドリックがにこにこしている横で、ラリサはじっとペンダントを見ている。
「あんまり女の子らしくないデザインだけど……」
「そうじゃないんです」
ラリサはじっと僕を見つめてきた。な、なんだろう?
「さっきの姿絵、どうやりましたか?」
「それはここのボタンを押して」
「ほうほう」
ラリサはペンダントを操作するとそれを僕に向けた。
「お館様、笑って」
「え」
カシャという音がした。
「お、お館様だ……」
「おいラリサ!」
「うふふふふ」
ラリサはペンダントに表示された僕の顔を見て笑ってる。くそ! 仕返しされた!
「ラリサ! それ消して! 消してってば」
「いやー、やり方分かりませんし」
ラリサはニヤニヤしながらペンダントを胸の間にしまった。そ、そこに入れられたら手が出せないじゃないか……。
「二人とも、ふざけてないで先住民を探しに行きませんか?」
セドリックが呆れた顔をして僕達を呼んだ。別にふざけていた訳ではないんだけどな。
「わかった。さ、ラリサも行こう」
「はいっ」
という訳で僕達はカラと出会ったあの場所に向かった。
「で、どうするの? カラがここに来るとは限らないんじゃない?」
僕がセドリックに聞くと、彼はにっこり笑ってその辺の木をナイフで切りはじめた。
「ええ、ですから少し分かり易くします」
そう言って積み上げたその辺の枝に生木を足して火をつけた。
「げほげほ! すごい煙」
「狼煙です。これを見て来てくれるといいんですけど」
「なるほど」
僕達は細い狼煙を上げながら、カラがやってくるのを待った。
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