4.2章
4・2章
5月28日 8時10分
セイクリアル南南東 商業都市リベア リベア西区宿屋
アクアが無茶をしたため、リベアの宿で一息つくことになった一行だったが、半ば強引に連れてこられたと言ってもいい形でついてきたクリスは、目の前でせわしなく動く、この世界で最弱と言われるモンスター、クリこと、クゥから目が離せないでした。
(クリス)「(こいつ・・・本当に普通のクリか?)」
朝目が覚め、朝食をとり、ヒカリ、クライン、クゥたちとアクアの部屋へと来て、各々いまだまだ幸せそうにだらしない顔で寝ているアクアを囲むようにして集まり、本日の各々の予定について話し始めた。
(クライン)「すまんが、最近の無茶で剣がボロボロだ。この街に知り合いの鍛冶師がいるから少し行って来たいが良いか?」
(ヒカリ)「私がアクアさんを見てるから大丈夫ですよ、行ってきてください」
(クゥ)「クピ、クプ」
(クライン)「助かる、リステアと剣を交えると絶対に刃こぼれし始め・・・・なんだその顔」
ヒカリがクラインの愚痴の様な、それでいてどこか嬉しそうな表情を見て、とても微笑ましいものを見るように目を細めながらほくそ笑むものだから、クラインは怪訝な顔でそう聞き返した。
(ヒカリ)「仲がよろしいですねぇ」
(クライン)「あれは仲がいいとは言わない、頼むから邪推はしないでくれ。むしろ恨まれてるんだ」
クラインが心底疲れた顔になりながら、ふとクリスに視線を向け。
(クライン)「お前、ずっとクゥ見てるな・・・」
(クリス)「な、ナンノコトカナァ?」
(ヒカリ)「クゥちゃんに負けたことがプライドをズタズタにしたんですね」
(クライン)「前から思ってたけど、ヒカリは容赦ないな」
何を言われているのか良く分からない、そんなかをするヒカリの横で、打ちひしがれてるクリスに、その頭に乗り、クゥが励ます。
ポムポム人の頭の上ではねるクゥをクリスは鷲掴みすると。
(クリス)「こいつは今日借りてく!」
(クゥ)「クピィ~!」
立ち上がると、そういうが早いか、扉に足を向ける。
身の危険を感じたのか、じたばたと暴れるが、すでにがっちりと掴まれているためびくともしない。
(ヒカリ)「クゥちゃんいじめたら許しませんよぉ
顔は笑顔だが、その目が笑っていない、その顔を見てクリスは言い知れぬ恐怖を感じながら、俺はついてくる人たちを間違えたのかもしれないと心の中で後悔したのだった。
俺は逃げるように外に出ると、クゥを手から放してやる。
(クリス)「はぁ、何をしてるんだ俺は・・・・もういいぞ、適当に時間潰したら戻れ」
(クゥ)「ピピ、クピ!」
跳びながら何か訴えかけ、更に俺の足に体当たりをしてさらに中を言うが、全く伝わらない。
しかし、ヒカリや、今ベットで魔法陣を素手で破壊する、とんでも戦法をしたアクアはこのモンスターと意思疎通が取れていた。
(クリス)「お前・・・・何言ってるか俺にはわからんが・・・う~ん」
少し考えこんだ後、ふと大昔に読んだ変な本の内容を思い出した。
モンスターは元は人間説、という題材の本だった。
正直うそくせぇ本だと思ったし、おそらく適当に描かれた題材の本だと思っていたが。
(クリス)「えっとぉ・・・喋れるようにぐらいはできるか?」
何を血迷ったのか、そう思ってしまった俺は、現在地が商業都市リベアである事を思い出し、ちょうどいいと思い、少し試してみようと思った。
うまく行けば本当にこのクリと会話ができるかもしれない、そう思った。
(クリス)「よし行くぞ、お前もついてこい。喋れるようにしてやる!」
その言葉が通じたのか。
(クゥ)「クピッポォ!」
うれしそうに鳴くと、喜んでクリスの後をついてくる。
路地を曲がり、狭い薄暗い路地を進み、更に胡散臭そうな場所を進むと、おどろおろしい佇まいの、小さな洋館が現れ、そのドアをクリスは躊躇なくたたく。
(クリス)「おーい、居るかばあさん?」
呼びかけると、特に反応はなかったが、何か中で物音がしたと思ったその時だった。
扉が破壊され、扉の前に居たクリス事弾き飛ばした。
爆発音とともに、クリスは吹っ飛ばされ、その方わりに居たクゥはびっくりして身を硬直させたまま、動かなくなる。
(クリス)「つぅぁ・・・・・なんつう歓迎だ」
(ばあさん)「ちっ・・・生きてやがるわい・・・なんの様だい、50年ぶりに顔出したかと思えば」
ばあさんと呼ばれているが、その姿は美しく、綺麗な黒髪をなびかせ、白のワンピースの胸の大きなとてもスタイルのいい女性が、手に大きな深紅の水晶のつた杖をもって、それをクリスに向けながらそうつぶやいた。
(クリス)「いや、頼みがあってだなぁ・・・・なんで魔力をため始めてんの!」
(ばあさん)「死ね!」
いうが早いか、赤い球の魔法を容赦なくクリスに向けて放ち、慌てて防御魔法を張ると同時に、目の前で大爆発を起こし、煙に包まれる。
あまりの出来事に、クゥは、ばあさんに体当たりをしようとして、その目がクゥをとらえた時、あまりの鋭さに、身動きが取れなくなってしまった。
(ばあさん)「私の名前は、深紅の魔女、ヒスイだ。あんた・・・クリだな・・・名前は?」
(クゥ)「クピィ!」
相手が普通に態様してきたことに驚きつつ、クゥは越えにならない声で答えると。
(ヒスイ)「そうかい、クゥっていうのかい」
(クゥ)「クピ?!」
なぜか会話が成立したことに驚き、クゥは目を見開き、ヒスイに問いかける。
(ヒスイ)「話はあとだね、そこのバカ弟子。生きてるだろ、そのことともに入ってきな」
煙が段々と晴れ、砂ぼこりまみれになった、見るも無残な姿のクリスは、このクソばばぁ、と思いつつ、ヒスイを睨みつけつつ、クゥと一緒に中に入っていった。
(ヒスイ)「あははははは、ひぃー、負けたの。クリに?!しかも、一撃で、あはあははははは」
師匠がソファーに腰かけ、目の前のテーブルにはクゥが居り、ぴょうんぴょんと飛び跳ねている。
クゥと会話しているのか、何事か聞いた途端、師匠は腹を抱えながらその辺をのたうち回り始め、てしまった。
おそらく昨日の話をしているのだろう、と思ったが、そもそもなぜその話を。
とここで、クゥに目を向けると、テーブルの上に乗り、師匠に何事か伝えている。
そして師匠もまた。
(ヒスイ)「ほうほう、へぇ、割と波乱万丈だねぇ・・・・どうしたバカ弟子?」
俺の視線に気がついたのか、そういいながら怪訝そうな顔をする。
(クリス)「なに、俺がおかしいみたいな空気出してんだ! おかしいだろ、モンスターと会話してる時点で!」
(ヒスイ)「説明が面倒だ・・・・ほら」
そう言ってこちらに深紅の水晶のついた杖をこちらに向けると、魔力が自分の体を満たしていき、何かの魔法をかけられたと理解した。
(クゥ)「最低なんですよこの男は、偉そうにして、わざわざ訪ねてきた私たちに偉そうに言ったり、攻撃してきたりと・・・」
開口一番に最低と言われ、何てこと言い出すんだと、そう思ったが、それよりも、それを聞いた師匠の顔がみるみると険しくなり。
(ヒスイ)「ほぉ・・・・200年前に言ったよなぁ・・力におぼれるな。人を見下すな。人の役に立つようにと・・・」
(クリス)「いやいや、それはそのぉ・・・ぐぁ!」
師匠は容赦なく杖をかざすと、赤い魔法を俺めがけてぶっぱなし、狭い部屋は爆炎で満たされるが、すぐにその混成が消える。
俺に魔法が当たり、部屋の中に充満する前に消したのだ。
残ったのは俺が受けた激痛だけという、納得いかねぇ。
(クゥ)「自業自得ですね」
(クリス「がっ・・・ゲホゲホ・・・いっつぅ・・・」
腹部に激痛を感じ、抑えながら、口の中の血の味を感じ、吐き出す。
(ヒスイ)「なんだ、回復魔法は相変わらず使えないのか」
ほれ、と言うように、杖をかざすと、クリスの傷を回復させる。
200年ぶりに合う師匠であるヒスイは相も変わらずで、俺に対して容赦はなくい。
忘れていた、自分があまりにもちっぽけで、何でもない人間だという事を思い知らされるこの感覚。
200年間、俺は人々に頼られ、あがめられ、気がつけば傲慢で、偉ぶっていた。
200年という年月は、人をダメにするには十分すぎた。
いや200年なんて大げさだ、俺は20年でそこまで落ちていたのだと、この人を前にして気がつかされるぐらいには、天狗になっていた。
(ヒスイ)「はぁ、放置してた私にも原因はあるが・・・・情けない。
さて、バカ弟子のことは後回しだ」
そういうと、クゥへと杖を向ける。
すると、クゥを中心に魔法陣が形成されるが、特に変化はなく、そのまま1分ほどそうしていた。
(クゥ)「先ほども、この人に声が届く前から離しましたが。わたくしは人間です。どうにか戻れませんか?」
(ヒスイ)「う~ん・・・・えっとぉ・・・・これか」
何か考え込みながら、本棚へと行くと、何かの本を手に取り、戻ってくる。
パラパラとページをめくり、ぴたりととあるページで止まる。
どうやら目的のページを見つけたようだ。
(ヒスイ)「モンスターは人間だった説・・・・呪いによってその姿を変えられ、更に・・・・元に戻ろうとすると呪いが発動する・・・」
(クゥ)「やはりですか・・・・それでもやっていただくことは可能ですか?」
すでに俺いらないんじゃないだろうかというぐらい、クゥとヒスイで話は進んでおり、俺はこっそりと帰ろうと踵を返し、部屋を出て行こうとすると。
(ヒスイ)「何してる・・・・お前も手伝うんだよ」
(クリス)「い、いやぁ、嫌な予感しかしな・・・イタタタ・・・やる、やるから耳引っ張らないでぇ」
(クゥ)「何してるのよ」
声色でクゥがあきれているのが見て取れ、若干イラっとする。
モンスターのくせしてぇと思っていると。
(ヒスイ)「そういう部分を治せと、何百回いえば分かるんだ!」
(クリス)「やめ、お願いだから、どっかーんはやめて!」
ヒスイはこちらに向けていた杖を戻す、ではなくクゥに向けた。
(ヒスイ)「魔力を貸せ。私一人でどうにかできるわけないだろ、こんなもん」
言っている意味が分からず、首をかしげると、答えと言わんばかりに何かが解除されると同時に、みるみる大きな魔法陣になっていき、あきらかに普通の形でかけられモノではないと物語っている。
魔力を貸せとはこれを解除するのにかせという事なのだろうけど・・・・こんなの2人の魔力で同行できるとはとても思えない。
だが、この師匠であるヒスイは容量が良いので、おそらく解除はできるだろう、だが、なぜだろう、ものすごく嫌な予感が先ほどから消えてはくれない。
(クリス)「あー、はい、これでぇえええええ。ちょっとぉ、すっからかんどころか殺す好きですか!」
ものすごいスピードで魔力がもっていかれたものだから、慌ててヒスイから離れる。
(ヒスイ)「この程度で死ぬか戯けが。良いからよこせ!」
首根っこを掴まれ、引き寄せられ、首を鷲頭神にされ、魔力をちゅうちゅう・・・いや、ドバドバと座れていき、すぐにたつ力すらなくなるスピードで吸われていく。
(クゥ)「本当に大丈夫ですか? 呪いの事がまだ残って・・・」
(ヒスイ)「話しかけるな・・・・『裁かれ者、檻砕かれし・・・・』『牢獄の羊よ、わが前の忌まわしき鎖と砕け』『神、天より来たり、目の前に倒れたるものへ、祝福の光を』『汝あるべき本来の姿へと』『孰れ、その身あるべき姿へと!』」
魔法陣が砕けていく音が聞こえ、どんどんと解除されていく音が聞こえる。
あまりにも予想以上の膨大な術解除に、一つの詠唱ではどうにもならなかったのか、ヒスイは複数の言葉を用いて、一つ一つ解除していく。
最後の人が解除された時、クゥは光に包まれ、膨大な魔力が爆発的に周囲を見たし、次の瞬間。
大爆発を起こした。
家は消し飛び、近くにいたヒスイ、俺は吹っ飛ばされ、壁に激突したような痛みが背中を貫き、そこで俺の意識は失われた。
5月28日 商業都市リベア
AM10時50分 西区第一区画。 ヒスイの館
すでにその場には家・・いや家屋はなく、瓦礫の山が散乱し、砂ぼこりの様な煙に包まれており、辺りは何も見えなくなっていた。
(ヒスイ)「つぅぁー、生きてるなあたしは・・・クゥちゃんは・・おお、いたいた」
ヒスイは自身の杖を拾い上げ、綺麗で清潔感のあった白のワンピースがほこりまみれのぐちゃぐちゃになっているのもお構いなしに周囲を見渡し、お目当てのクゥを見つける。
(クゥ)「うぅ・・・あ・・・お、おお、戻ってる、手がある・・・紙がある!」
体のあちこちを触り、確認するクゥ。
そこには、全身生まれたままの姿の、女の子が、無邪気にはしゃいで喜んでいた。
(ヒスイ)「あほ弟子が来る前に、ほれ・・・・残り少ない魔力で服を作って・・・」
すぐに魔法で服を構築し、赤を基調としたワンピースをすんなりと作り上げたが、そこで魔力が尽きたのか、杖から放たれていた魔力の真紅の輝きが消えた。
それとほぼ同時だった。
(???)「グゥワ~!」
何かの声の様なものが聞こえたかと思ったらすぐに咆哮に変わり、辺りに満ちていた砂ぼこりが一瞬で吹き飛ばされた。
咆哮の主が姿を現し、そちらにクゥとヒスイはそちらに目を向けると、そこには人の5倍ほど大きな一角獣の魔物が、そこに居た。
(ヒスイ)「なるほど・・・・・・これは仕掛けの一部かな・・・失敗したか。ふむ」
(クゥ)「ふむじゃないわよ、どうするのよこれ!」
クゥが叫ぶようにそういうが、全くもの応じせず・・・何事か考えこんだ後。
(ヒスイ)「じゃ、そうい事で・・・」
(クゥ)「え、ちょ・・・・消えた・・魔力なかったはずじゃ・・・・・」
先ほど確かにヒスイは魔力を使い果たした、てきな話をしていたような気もするし、現に杖の光は消えていたはず、にもかかわらず、一瞬でその場からその姿を消した。
(クリス)「げほげほ・・・おぅぇ・・・ぺっぺ・・・・何が・・・は?!」
クリスが、一角獣の魔物の足もの付近の瓦礫から出てくると、化け物の足に手をのせ、一息つき、何かがおかしいとすぐに感じた彼は、その足へと視線を向け、徐々に上へと視線を向けていく。
(クゥ)「クリス・・・・そこに居ると死ぬわよぉ」
クゥの問いかけに、康応するかのように、一角獣のその角に魔力が溜まり始め、クリスを前足だろうかで、蹴っ飛ばすし、浮かせると、容赦なく、その魔力を彼めがけて放った。
(クゥ)「うわぁ・・・・とりあえず・・・・クリス・・・・あなたには感謝してるはさようなら」
合唱をしながら、そう言い残し、クゥは、その場を逃げ出したのだった。
(クリス)「ふざけるなああああああああああああああ」
その様子をこう魔力の一撃を残り少ない魔力を全力で防御にあて、爆発したと同時に吹っ飛ばされながら、彼は叫びはこだまのようになりながら、彼方へと去っていった。
魔物はすぐ、その足で広場へと向かうのだった、まるで探し物を求めるかのように。
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