第4.1章

最弱勇者の物語

                      作者 藤咲 みつき

 4..1章 

 5月28日 午前9時20分

 セイクリアル南南東 商業都市リベア

 クリスを仲間に何とか引き込むことができたアクアたちだったが、その際に無茶をしたことは決して、良かったですむわけもなかったのでした。

クリスを仲間にし、いざ魔王城へ、そんな時代があったなぁ、などと私は、ベットで動けなくなりながら、お腹すいたなぁと、宿の天井を見ていた。

(アクア)「痛いんだけどぉ・・・」

 私の寝ている傍らで、鬼の形相のヒカリちゃんにそういうと。

(ヒカリ)「あんな戦い方するからですね」

 ヒカリちゃんの説明によれば、私が魔方陣を素手で殴り破壊する、などと言う今だかつでそんなバカな事をする人が居なかったことをやったことで、手が血まみれのボロボロで、私は痛みと苦痛にのたうち回りつつ、治療をしてもらったのだが。

 治療と言っても、魔法で身体の自己再生能力を高め、怪我お治すというのが一般的なため、大怪我であればあるほど、たとえ傷が塞がり、助かったとしても、その反動で数日動けなるという事は一般的な常識となっていた。

 よって、私は私の無茶をした分だけ寝る事となり、クリスのお城から南に南下したところにある商業都市へと来て、そこで宿をとり休むこととなった。

(アクア)「で、あの男二人はどこ行ったの?」

 商業都市リベア、セイクリアル王都より南南東にあるこの商業都市は、ここよりさらに南へ南下したところにある港町トリトリアと王都セイクリアルのいわば物流の中心部分でもあり、魔王領土への物流の中心でもある、いわば中継地点らしい。

 そため、多くの人や物資、娯楽などが集中している。

(ヒカリ)「クラインさんならば、武器の手入れをするとのことで、渋い顔しながら鍛冶屋に行きましたよ。何やら知り合いがいるらしく、絶対に文句言われるわぁとか言いながら」

(アクア)「クリスは?」

(ヒカリ)「あの人なら、クゥちゃん連れて、やけ酒するとか言って出ていきました」

(アクア)「クゥに負けたのが応えてるのね・・・・」

(ヒカリ)「クゥちゃんに慰められてましたよぉ」

 ヒカリさん、そんな満面の満足そうな笑みで言わないであげて、可愛そうだから。

 最弱モンスターにやられたあげく、そのモンスターに慰められるなんて、大魔導士とか言われてるクリスにとっては、泣けてくるかもなぁ。

(ヒカリ)「それでね、アクアちゃん・・・・」

(アクア)「は、はぃっ!」

 不敵な笑みと、何とも言えない声色でヒカリちゃんが声をかけてきたものだから、思わず声が裏返ってしまった。

 スーッと、身を寄せてくると、不意に私にビンたする構えをとるのを見て、私はとっさに目をつむると、ふわりと、彼女特有の香りが私の鼻をくすぐり、一瞬何が起きたのか理解できなかった。

(ヒカリ)「もう少し自分を大切にしてください」

(アクア)「おぅ、えぅとぉ・・・・」

 不意打ちの態様にどう答えたらいいのかわからず戸惑っていると。

(アクア)「え、ちょ、痛い、いたぃぃぃぃぃ」

(ヒカリ)「それはそうと、お仕置きですぅよぉ」

 言うが早いか、彼女は抱きしめたまま、私を締め付けた。

 それから10分ほど、しっかり締め付けられ、痛い思いをしてやっと彼女は私を解放してくれた。

 


 そんな私たちがスキンシップをしていること

 クラインは・・・・

(クライン)「親じ・・・」

(おやじ)「っふ!」

 声をかけながら店のドアを開けた瞬間、店の亭主だろうか、彼は持っていた鍛冶の道具であるハンマーがものすごい勢いで飛んできて、お店のドアに突き刺さった。

 そこに居たのは、スキンへっとのよく似合う屈強な筋肉質の大男だった。

(クライン)「殺すつもりか?!」

(おやじ)「あ?!帰れ・・・・絶対に帰れ、今すぐだ!」

 静かな声だが、圧迫感のある声がクラインにふりそそぐが、彼はいつもの態様なので仕方ないかなぁと思いつつ、毎度毎度申し訳ないと思いつつも、黙って剣を鞘から引き抜く。

 鞘から抜かれた剣がおやじの目に入ると、突然おやじはその瞳から大粒の涙をこぼし始めた。

(おやじ)「お、お前はなんでいつもいつも・・・かわいそうだと思わねぇのか!?」

 すかさずクラインに近寄ると、剣を奪い取り、泣きながら研ぎ石で剣を研ぎ始めた。

 あまりの素早さにクラインは苦笑いを浮かべる。

 ここ、鍛冶屋おやじさん、という変わった名前の鍛冶屋はリベア商業都市の中でも有名な鍛冶屋で、腕はいいのだが、自分の作った武器に愛情がかなり強く、武器そのものを売ってくれないと有名な人物なのだが、クラインは古くからの知り合いで、武器も彼のモノでよく治しに来るのだ。

(クライン)「す、すまん・・・そのだなぁ・・・」

(おやじ)「そこのハンマーよこせ・・・・・どうせ魔法をはじいたりしたんだろ、だいぶ酷い事になってる・・・・あとこれは。またケンカしたのか?」

(クライン)「またとか言わんで・・・・」

(おやじ)「痴話げんかで毎度ボロボロにされてたらかなわん・・・・で、リステアちゃんは元気か?」

(クライン)「無茶してはいるが、だいぶ協力してもらってるよぉ」

 あきれつつも、どこか安心しきった顔でそういうクラインに、おやじさんは満足したのか、それ以上何も言わず、集中するようにそこから言葉を発することなく、クラインの剣へと視線を戻す。

(クライン)「それでだなおやじ、もう一本見てもらいたいものがあるんだが」

 そう言ってクラインは、おやじの前にもう一本の剣を出す。

 それはアクアが使っている、勇者の剣(仮)だったがそれを見ておやじは目を見開いたと同時に、顔色が一瞬にして悪くなった。

(おやじ)「そ・・・それをどこで・・・・」

 歯切れが悪く、絞り出すように声を紡ぐおやじに、あきらかな違和感を感じ、クラインは怪訝なお顔する。

(クライン)「どうしたよ、いつもの武器愛はどうしたよ?」

 首をかしげながらそう尋ねるが、おやじの反応は変わらず、一言消え入る声で。

(おやじ)「血塗りの聖剣・・・」

(クライン)「は?・・・・いやいや、冗談だろ?」

(おやじ)「血塗りの聖剣、持ち主はもちろん、あらゆるものを無条件で死へといざなえる、伝説の聖剣。数々の鍛冶師や、勇者、神が破壊を試みたが、誰一人として壊すことはできなかったが、ある一族だけがその剣を安全に持つことができたと言われている、恐ろしい剣だが・・・・お前それをどこで」

 今にでも捨ててしまいたい衝動に駆られていたクラインに、おやじは丁寧に説明品から入手先を聞くと。

(クライン)「最近立ち上がった自称勇者(最弱)が今持っていてな、あまりに使いこなせないから調べてもらおうと思ったんだが・・・・」

(おやじ)「最弱?最強じゃなくてか?」

 おやじが怪訝な顔でクラインに聞くが、彼は今までの経緯をおやじに話すと、おやじは口を開けたまま放心していた。

(おやじ)「あはははははは、ひぃー、お腹いてぇ。クリに負ける?!血塗りの聖剣もっててか?! あははははは」

 まぁ、こうなるわなぁ、俺だってそんな代物持ち歩いて、戦ってたはずなのにクリに負けていたなんて知ったらそうなるわ。

 そうクラインは思いながら、手の中の聖剣に目をやる。

(おやじ)「ひぃー、笑ったわぁ。にしても・・・・浮気か?」

(クライン)「誰が浮気だこのハゲ!そもそも女なんて言ってないだろ!」

(おやじ)「まてまて、これは俺の美、決してハゲてなどいない!!!それに、俺は女なんて一言も言ってないぞぉ」

 ニヤリといやらしい笑みを浮かべながら、手元はしっかりと動いており、どんどん作業は進んでいく。

 クラインはと言えば、ちっきしょぉ、ハメられたわぁ、と思いながら、もう何も言わず、店内にある椅子に腰かけ、その後ボケーともってきたアクアの剣を見ながら。

(クライン)「やべぇもんに関わっちまったかなぁ」

 ぼそりと呟くが。

(おやじ)「お前のほうが厄介だろ?」

(クライン)「はぁ・・・・」

 ため息をつきつつ、どうしたものかと思っていると、店の扉が開き、客が入ってくる。

(???)「おやじさん、わたしの剣を・・よっ!」

 クラインと同じく入ってきた人物に、おやじさんは条件反射のごとく、持っていたハンマーを投げたが、投げられた人物は、彼にそのハンマーを手に取っていた。

(クライン)「げつ!」

 その人物を見ると、そこにはリステアがいつもとは違う、綺麗なレースの淡い青のシャツに、ミニスカートの姿でそこにたっており、クラインに気がつくと、手に持っていたハンマーを投げつけた。

(クライン)「おわっ、なにすんだ!」

(リステア)「あらぁ、手が滑っちゃったわぁ。アツアツの鉄をたたいたハンマーで、火傷すればよかったのいぃ」

 すました顔でそういうリステアに、クラインは何とも言えない顔をする。

(クライン)「魔王様がこんなところに何の用だ?」

(リステア)「おやじさん、遊んでたら、剣がダメになったので治してください」

 クラインなど最初からいないかのように、リステアはしれっとそういうと、おやじさんの前に剣を差し出してにっこりと微笑む。

(おやじ)「お前らさぁ・・・・何度言ったらわかるんだ。俺の剣で痴話げんかするな!」

 毎度の事らしく、半ば呆れながらそうつぶやくと、次の瞬間、二人に対して威圧を放ち、二人思わず息をのみ、リステアは後ずさる。

(リステア)「い、いやだなぁ、ちょっとした・・・・そう稽古ですよ。稽古!」

 リステアはそういうとクラインに振り向き、助けを求めるようにアイコンタクトを送る。

(クライン)「そ、そうですよ。それに俺は今こいつとともにいるわけじゃないし」

 その言葉を聞いて、おやじさんは威圧していた気配を少しずつ弱め・・・・また涙を流しながら、黙々と作業をし始めた。

 毎度のこととはいえ、二人ともにこの状況がとても苦手である。

 申し訳ないと思いつつ、この二人はいつも剣を交えるとお互いの剣を痛めつけてしまう、ヤマアラシのジレンマのように、どうしてかお互い理解はしているが、妙なところで合わないのである。

 二人もそれは理解しているため、極力お互いに関わあり合わないようにしつつも、どうしてか関わってしまうという、なんとも不思議な状況なのだ。

(リステア)「なんでこの街に居るの?」

(クライン)「アクアが大怪我してな。ヒカリが治療したは良いが、治癒の副作用で現在動けないんだ」

(リステア)「なにしたらそんな大怪我になるのよ、弱いんだから、すぐ負けて、それで終わりでしょ?」

(クライン)「そうなってりゃ楽でいいんだが。大魔導士の大型魔法陣に素手で殴りかかって・・・」

(リステア)「え・・・馬鹿なの?!」

 クラインが話し終える前に、リステアはあきれながらそういう。

 そらそうだろうよぉ、とクラインも心の中で思いつつも話をつづけた。

(クライン)「で、素手で魔法陣破壊をしてだな、手が血まみれ状態になったと」

(リステア)「あ、あはははは、ひぃ。お腹・・・お腹痛い、はあははははは」

(おやじ)「マジか・・・・頭いかれてやがる・・・」

 話だけ聞いていたのだろう、おやじさんもクラインのほうに顔を向け、あぜんとした表情をしていた。

(リステア)「いやぁ、ほんとアクアちゃん面白いわぁ。最弱勇者なのに私にケンカ売ったり、今の・・・ぷっあははは」

 どうやらツボに入ったらしく、床をはたきながらお腹を押さえ、笑っている。

 その時だった、彼女が床をたたくたびに、地響きが響き渡った。

(リステア)「へ?! いやまって、私じゃない!」

 あまりの出来事に、我に返り、怪訝な顔で見るおやじさんとクラインにそういう。

 しかし、彼女の言うように、床をたたくのをやめても地響きはやまず、何かがドスンドスンと、まるで巨人でも歩いているかのように、度々響き渡る。

 リステアとクラインは顔を見合わせると。

(クライン)「おやじ、使える武器を貸してくれ!」

(リステア)「私も!」

(おやじ)「あいにくだが、そこにある短剣二つしかないぞ」

 それで良い、といい、二人は短剣を手に取ると外へと出て行こうとして、クラインが振り返り、一言。

(クライン)「おやじさん、この剣、置いておいても良いか?!」

(おやじ)「頼むからそれだけは置いてくな!!!!!!」

 血の気の引いたような顔で涙目になりながら必死にいうものだから、仕方ないかと思い、クラインは店を出た。

 その間も、地響きは響き続け、異常事態であることを知らせるが。

(おやじ)「さて、仕事するか」

 彼は動じることなく、作業に戻ったのだった。



 AM10時40分商業都市リベア西区第1広場

 リステアとクラインが地響きのするほうへと走り続けると、音が近づくと同時に、向かう方向から人が悲鳴をあげながら雪崩れる様に押し寄せてくる。

 二人はその波をよけながら進んでいき、開けた場所に出ると、ちょうど音の正体も広場へと姿を現した。

 そこには、屈強な肉体に、大きな一角の角をはやした、馬の顔をした、大型一角獣がしっかりとした足取りで、二足歩行をしながら歩いてきていた。

 体長は優に3メートルは越え、筋肉質なその体格はかなり鍛え抜かれているのが見て取れた。

 モンスターという部類ではなく、魔物と呼称される部類の上位種だ。

 この世界では、下級の魔物をモンスター、上位の危険な存在を魔物と呼称しており、これは魔物の部類だった。

(クライン)「帰っていいか?」

 予想外の相手に、開口一番にクラインはリステアを見ながらそういうと。

(リステア)「ダメに決まってるでしょ?」

 満面の笑みを浮かべながらそう言い、彼の首根っこを掴み、逃がすまいとする。

(クライン)「お前魔王だよなぁ・・・・」

 そう問いかけるが、返答は変わらないらしく、笑顔を崩す事無く、首を掴むその手に力が加わる。

 彼はその変化で、逃げる事をあきらめ、相手を見る。

 一角獣の中でも凶暴な部類の、ディスグライズ、と言われる魔物であると理解したクラインはより一層逃げたいと思った。

 ディスグライズは魔物の中でも希少種で、それが通った町は瓦礫の山とかすと言われているのだが、普段は人里に降りてくることなど決してあり得ないのだ。

 クラインは不審に思い、必死に逃げてくる人の一人を捕まえ、事情を聴く。

(逃げてきた人)「いきなり行商の大きな馬車から出てきたんだ・・・・もういいだろ!」

 すぐに逃げてきた人は早口でそういうと、血相を変えて逃げていく。

 しばらくすると、広場にはクラインとリステア、そしてディスグライズだけが残された。

(ディス)「ヴァアアアアアアアア!」

 こちらに気がつき咆哮とともに、威嚇してくる敵に対して、二人は腰を低くし身構える。

(クライン)「短剣でどうにかなる奴じゃねぇんだけどぉ・・・・」

(リステア)「倒すわよ・・・・・絶対に」

 静かに、でも強い意志の感じる声色でリステアがそういうと、諦めたように身構える。

 すると、それを待たず、ディスグライズは腕を振り上げ、二人に振り下ろした。

 振り下ろされた腕は、舗装されてるレンガ畳の広場を破壊し、地面がえぐれる。

 二人は飛び散る破片に体を傷つけられつつも、最初の一撃を何とか避けた。

(ディス)「がぐぁああああ」

 さらに間髪入れず、口に魔力が収束し始める。

(リステア)「ちょっ、冗談でしょ。こんなところでブラストつかわれたらとんでもない事になるわよ!」

(クライン)「わかって、るっ!」

 クラインは言うが早いか、相手の懐に入り、短剣で腹を切り裂く。

(ディス)「ぐるるぅぅぅ」

 鈍いうめきをしただけで、たいしたダメージになっておらず、傷も浅く、少し血がにじむ。

(リステア)「『春のそよ風は時として激しく、春に舞う花弁を舞い上がらせ、激しく吹き荒れる』」

 リステアがそう唱えると、彼女の周りに魔力を帯びた風が出来上がり、短剣を思いっきり振り下ろすと、地面をえぐるように風の刃がディスグライズに向かっていく。

(クライン)「ちょっとまてぇええええ、うおおおおおおおおお」

 懐に居たクラインは、リステアの攻撃魔法が後方から襲い掛かってきてることにすぐに気がつくと、横に飛び、魔法が魔物に直撃する直前でよける事に成功した。

 危なく巻き込まれそうになり、ひ汗が背中を覆う。

 直撃した魔物は怯むが、後ろに倒れそうになったが、すぐに立て直し、リステアに向き直り、敵意をむき出しにしながら咆哮をすると同時に、口からブラストを今度は貯めることなく放ったが、なんとかリステアはそれを避ける。

 ドッカン!

 という音ともに街の家々にブラストは当たり、爆発とともに、熱風が辺りを包み、その一帯を巻き込み、瓦礫の山を作り上げる。

(リステア)「割と本気で致命傷になるはずの魔法打ったんだけど・・・・駄目ね・・・硬すぎる」

(クライン)「遠慮せずに打て!」

(リステア)「打ってるわよ!」

(クライン)「街を壊さないように威力抑えただろ」

 クラインはリステアのそばに来ると、そういった。

 確かに彼女は、街を壊さないように魔力の質量を押さえ、魔法を使った。

 そのため、この魔物には致命傷にならず、たいしたダメージにはなっていなかった。

(リステア)「そんな事言うならどうにかしたらどうなのよ、いっつもいっつも肝心な時には役に立たないんだから!」

(クライン)「なんだよその言い方は!」

 二人はこんな状況だというのにケンカを始める。

 損は二人の痴話げんかを魔物が待ってくれるわけもなく、更にこぶしが飛んでくる、そのこぶしをギリギリでかわしつつ、二人は魔物の横をすり抜けると同時に、手に持っていた短剣に魔力を込め、切れ味を良くして、筋肉質なその肉を切り裂く。

 先ほどよりも傷は深く、魔物の血が飛び散る。

(クライン)「雷撃系の魔法を詠唱しろ。俺が短剣を突き刺す、そこにあてろ!」

(リステア)「あんた知らないの、あの一角が電撃を吸収して魔力に変えるのよ・・・ほらあんな感じで、魔力を集め・・・集め・・・」

 リステアが説明しながら、魔物に目をやると。

 魔物の一角に魔力が集中し始めて、赤黒い魔力の塊ができ始め、次の瞬間、首を激しく振りながら、リステアとクラインに向かって赤黒い魔力の塊が放たれる。

 とっさのことで回避はできないと感じ取ったリステアはクラインの前に出ると。

(リステア)「『聖なる盾よ、迫りくる脅威を防ぎたまえ!』」

 彼女を中心に魔法陣が前方に展開されると同時に、その魔方陣に赤黒い塊はぶつかると同時に大爆発をし、あたりを巻き込み、炎をまき散らしながら周囲を飲み込んでいく。

 もちろん二人も巻き込まれ、煙と炎、爆風に巻き込まれ辺りはその魔法に包まれ、視界が悪くなる。

(ディス)「ヴぉぉおぉぉぉぉ」

 魔物の勝利の雄たけびの様な咆哮が街に響き渡る。

 あまりの爆発に周囲の家は瓦礫へと変貌し、辺りはさながら地獄絵図のようにひどい有様となってしまった。

 

                             つづく

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