第2話:奈津実の初恋
奈津実が初恋をしたのは彼女が幼稚園に入ったときだった。当時は幼稚園の園庭にはアスレチックエリアと芝生のフェンスで囲まれたグラウンドがあった。彼女はいつもアスレチックがたくさんある園庭で遊んでいたが、アスレチックに遊び疲れて、芝生の園庭とアスレチックの園庭の間で遊んでいると、隣から聞こえてくる楽しそうな声が聞こえてきた。「恵輔君!パス!」「雄哉君!こっち!」とまるで、サッカーの試合をしているかのような雰囲気が出ていた。その中に竜哉君という他の同い年の中では小柄だが、気が優しい男の子がいた。彼はサッカーも野球も上手で、頭も良かった。しかし、他の女の子たちはサッカーが上手な恵輔君と野球が上手な孝輔君・亮輔君という双子の男の子にぞっこんで休み時間には彼らの遊んでいる周りに人だかりが出来るほど人気だった。
しかし、彼女はまだ彼が卒園後に両親の仕事の都合で海外に行ってしまう事を知らなかった。その後も、普通に幼稚園に通っていた。月日が流れ卒園まで2週間と迫ったときに彼女は異変を感じた。なぜなら、彼女が通っていた幼稚園では卒園式には小学校の制服で出席することが以前からの決まりで、指定されている制服以外の服を着ている子は違う学校に行くということがここで分かる。その制服は幼稚園に制服メーカーの人が来て、個別にサイズ測定や微調整をするのだ。しかし、サイズ測定をするために小学校に進学する卒園生が多目的ホールに集められたが、その場には竜哉君の姿も仲の良かった芽生ちゃん、彩月(さつき)ちゃん、菜月ちゃんの姿がなかった。隣のクラスも真菜子ちゃん、心遥(こはる)ちゃん、陽菜子ちゃんがいなかったのだ。
そして、2週間後の卒園式の時にいなかった子たちの制服を見てびっくりした。なぜなら、女の子6人は都市部にある国立大学附属小学校の制服を着ていて、竜哉君は英語で書かれた制服を着ていたのだ。この瞬間、彼女は立ちすくんでしまった。彼女が仲良くしていた子たちは全員別の学校に進学し、学区内にある区立小学校に進学するのは彼女だけだったのだ。
そんな中、彼女が小学校で好きな子がいたとしても竜哉君以上に好きになることはないだろうし、仮にいたとしても友達までしか行けないだろう。それだけ、彼女と竜哉君は仲が良かったし、家も彼女の家から歩いて5分もかからなかった。彼女はその家に行ってみると、部屋の中は変わっていなかった。ただ、衣服やパソコンなどの必要な生活用品や一部の電化製品だけがなくなっていて、その他は年に2回(合わせて1ヶ月程度)は帰ってくるかもしれないということもあって、置いていくことにしたのだ。そして、彼がカリフォルニアに旅立つ日にお見送りに行ったが、彼がなかなか見つからなかった。当時は人が多すぎて脳内がプチパニックを起こしていたのだろう。彼を探すことに必死になっていて、ついには迷子になってしまった。すると、背後で「奈津実ちゃん?来てくれたの?」と竜哉が近寄ってきたのだ。奈津実は「うん」と言って手紙を渡した。
そして、彼は再会を約束して、アメリカへと旅立っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます