第4話:ゆっくり進もう
子供たちも大きくなり、健太朗は小学6年生に、優希は小学3年生に、慎太朗が小学校1年生にそれぞれ進学することになり、家の中が騒がしかった。
そんなときに姉が学校で過ごしていた時に急に倒れてしまい、保健室では応急手当が出来ないと言われ、大きい病院に救急搬送された。周りにいた子供たちは「優希ちゃん!しっかりして!」と懸命に声を掛けていたが、一向に反応することはない。救急搬送された病院で検査を受けた結果、貧血からくるものだと分かった。しかし、彼女には貧血を今まで起こしたこともないため、母親は首をかしげた。そして、彼女の検査結果を見ると今まで見たことのない数値になっていた。特に見ていてびっくりしたのが、血圧が前回測った値から大分下がっていた。その後、血液検査の結果も見せてもらったが、明らかに下がっていて項目によっては正常値ギリギリだったため、何がおかしかったのか分からなかった。
彼女はその後意識を取り戻したが、まだ予断を許す状態ではなかった。彼女が倒れたのが何の前兆もなく、その日の朝は何もなかったため、医師ももう少し経過観察が必要だと判断したのだろう。そして、少し立ってから再び彼女の意識がもうろうとし始めた。
さっきまで普通に動いていた娘が苦しんでいる姿を母親は見ることが出来なかった。そして、その日の面会時間が終わり、家に帰った。すると、父親からこんなものを見つけたと言って1枚のノートを見せた。それは、「最近、なんか苦しいです。ゆきはつらいです。」と優希が自分で書いたと思われる手紙だった。
母親は急いで母子手帳や通院記録を書いたノートを隅々見ていた。すると、彼女の母子手帳を見て愕然とした。2歳の時に受けた検診の所見に「呼吸器の発達が遅れている可能性があります。」という項目があったのだ。そして、総合所見でも「肺の発達がうまくいっておらず、血流が安定しない可能性があります。」という記載があった。
そして、通院ノートを見たときにも年に1度は呼吸器科を受診していて、小学校に入学してからは安定していたため、通院した記録がなかった。そして、今回、これまで異常が無かったという過信が入院の必要なほどまで悪化してしまう要因になっていたのだ。
この時、母親は娘を自分が苦しめてしまったと思ってしまったのだ。ただ、父親も「もっと自分が異変に気付いているべきだった」と心から悔やんでいた。
そして、彼女は1週間入院したのち退院した。その後、月に1回定期検診を受けることになったのだ。
退院した翌週、彼女が久しぶりに学校に行くと心配してくれていた友達がみんなで温かく迎えてくれたのだ。彼女はどこかその空気を作ってくれたことが嬉しかった。そして、遅れてしまった授業の内容を先生が動画にして残しておいてくれた。ただ、時間が長かったため、時間があるときに遅れた分を取り返そうとしていた。
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