第3話:笑えない日々
健太朗は妹たちが出来たのは嬉しかったが、幼稚園に行くことが嫌で毎日泣いていた。
理由は幼稚園で健太朗は他の子よりも頭1つ大きいため、どうしても周りから「けんちゃん背が高くていいね」と言われるのが苦痛だった。そして、身体測定の日には幼稚園に行きたくなさすぎてお母さんに何度も直談判していた。
実は彼が幼稚園でいじめられていることはお父さんもお母さんも知らない。なぜなら、両親に言われると怒られると思ったからだ。そんな彼がその日幼稚園に渋々行った姿を見て両親はなんとも思わなかった。ただ、母親だけはいつも幼稚園の準備をしてくれていたため、どこか察してくれているのだろうとは思っていた。その後、母親は仕事に通常通り出勤したが、心がもどかしくなっていて仕事が手につかなかった。
父親は出張で帰りが遅く、母親がその日は残業だったため、幼稚園に連絡を入れて、おばあちゃんとお兄ちゃんにお迎えに行ってもらうことになったが、今朝の彼の姿を見ていたため、どんな感じなのか分からなかった。
そして、お迎えの時間になりおばあちゃんとお兄ちゃんで迎えに行った。すると、お兄ちゃんを見た健太朗が一目散にお兄ちゃんに駆け寄ってきた。そして、おばあちゃんに「連絡帳とは別にお手紙を書いたので、ご両親に伝えていただいて良いですか?」と先生が言ってきて、健太朗の手提げと今日の身体測定の結果、汚した着替えなど荷物がたくさんだった。
そして、家に戻ると今度は妹から「お兄ちゃん迎えに来て!」という連絡が来た。実は妹の習い事が終わって、友達の家に遊びに行っていたのだが、楽しくなりすぎて門限の5時を越えてしまったのだ。彼女は前にも同じ事をしてお父さんとお母さんに怒られた前科があるため、お兄ちゃんしかいないと聞いて安心したのだった。
そして、お兄ちゃんは妹と友達2人を連れて一緒に帰ってきて、帰る途中で彼女たちの家に送り届けて家に戻った。すると、まだお母さんは帰ってきていなかったが、妹たちは健気にプレイルームで遊んでいた。
二人が帰ってきて、少し経った時に母親が帰ってきた。すると、健太朗が何もなかったかのように過ごしているのを見て安心した。そして、おばあちゃんが「先生から連絡帳にお手紙が挟まっているみたいだから見てみてね。」と伝えて、お兄ちゃんが一緒に家に戻った。
その後、お母さんが言われた連絡帳には前向きな考えが手紙を見ると、衝撃の内容が綴られていた。それは、「健太朗君の様子が最近おかしいのですが、家で何かあったのでしょうか?」という書き出しから始まり、「私たちが見ている限りだと園内でいじめなどが起きている様子はないです。もしも、健太朗君が何か話してくれた時は情報をいただけますよう、よろしくお願いいたします。」という内容だった。
お母さんはその手紙を読んで、いろいろな事に不安を覚えた。その後、健太朗に聞くといろいろな話が出てきたため、先生に時間を作ってもらい、翌日に会うことになった。
そして、母親のテレワークが終わり、彼を迎えに行ったときに先生に彼が話していた事を伝えた。すると、驚いた顔で「そんなことがあったのですね・・・それは知りませんでした。」と返されてしまった。
母親は園に対する不信感はどこか否めなかったが、家から一番近くて遅くまで預かってくれていた幼稚園だったため、幼稚園を変えるという選択をすることは出来なかった。そして、今の幼稚園にはかなりの応募があり、奇跡的に抽選に受かったことを考えると一歩を踏み出すことは到底出来なかった。
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