[短編]猫ちゃんに養ってもらうニートの俺~俺の愛猫はダンジョンで魔物を狩って魔石やレアドロップを持ってきてくれる神猫です!~
[短編]猫ちゃんに養ってもらうニートの俺~俺の愛猫はダンジョンで魔物を狩って魔石やレアドロップを持ってきてくれる神猫です!~
[短編]猫ちゃんに養ってもらうニートの俺~俺の愛猫はダンジョンで魔物を狩って魔石やレアドロップを持ってきてくれる神猫です!~
ねお
[短編]猫ちゃんに養ってもらうニートの俺~俺の愛猫はダンジョンで魔物を狩って魔石やレアドロップを持ってきてくれる神猫です!~
「ひーっひっひっひっ、腹いてー!」
安アパートの一室、散らかった四畳半の部屋で引き笑いをしながらアニメを見ている男。
ニートを絶賛満喫中の俺、黒木マサト。23歳だ。
俺の毎日のルーティーンは、昼前まで寝て起きて飯食って糞して漫画読んでアニメ見て飯食って糞して寝る、だ。
あ、たまに風呂も入るぞ。
つい1か月前までは社会人としてブラック企業で社畜をしていた。
Fラン大学を卒業して新卒で入った会社だった。
だが、ついに我慢の限界が来て入社してからぴったり1年で辞めた。
・・・仕方ないじゃん?
安月給で、死ぬほど残業しても残業代は払われないし、土日出勤は当たり前、上司は死ぬほどやな奴でパワハラ三昧、死ぬほど仕事押し付けてくる。
そんな生活を1年も我慢して続けてた俺、すごくない?すごい!
たぶん後1か月続けてたら過労死してたね。うん、間違いない。
そういう訳で、現在はニート歴1か月だ。
社畜中は満足に睡眠もとれてなかったし、好きなことを何もできなかった。
だからこの1か月は毎日12時間寝て、好きなアニメや漫画を見まくった。
たぶん過去最高に充実した毎日だ。
・・・貯金残高から目を背ければ、な。
安月給でほとんど貯金も溜まってない状態だから、こんな生活をあと2か月続けたら貯金は底を尽きるだろう。
アニメを見終わった途端、そんな現実が俺の頭に押し寄せてくる。
「・・・考えたって嫌な気分になるだけだ。買い物にでも行こう」
☆
歩いて5分の場所にある激安スーパーで買い物を終えた。
1袋15円のもやし、2袋30円。
100g29円の外国産鶏むね肉、2kgで580円。
キャベツ1玉50円。
税込みで700円ちょっと。
俺の定番お買い物メニューだ。
いつもは、もやしとキャベツだけだから100円もしない。
鶏むね肉は冷凍してたストックが無くなったから買った。
目的を果たした俺はスーパーを後にした。
今は夜の7時で、外はうす暗くなってきている。
5月初旬の夜はまだ肌寒い。
俺の懐と同じだな、と自嘲気味に笑いながら歩く。
「あー、誰か俺を養ってくれねーかな・・・」
誰も歩いていない路地で俺はそんなことを呟いた。
「・・・ん、にゃーん」
「ん?猫か?」
どこかから猫の鳴き声が聞こえた。
・・・どうやら空き地のほうから聞こえてくるようだ。
俺は空き地へと足を運んだ。
「にゃーん、にゃーん・・・」
空き地の隅に段ボール箱が置かれていた。
スマホのライトでその中を照らすと、1匹の黒猫がいる。
「捨て猫か、かわいそうに」
俺は黒猫に手を伸ばす。
黒猫は俺の手に鼻を近づけてクンクンと嗅いだ。
指先をぺろぺろ舐めたり、耳の付け根を手の甲に擦り付けてくる。
「随分人なつっこい猫だな。あーかわいー」
捨て猫なので子猫かと思ったが、どうやら成猫のようだ。
俺はひとしきり猫を撫でてから立ち上がる。
「ごめんな。俺はお前を飼ってやる余裕はないんだよ。ごめんな」
そう呟いて、俺は猫に背を向けて歩き出した。
「にゃーん、にゃーん、にゃーん・・・」
背後から悲しそうな猫の声が聞こえた・・・。
☆
ガチャっ
「ただいまー」
俺はアパートの自室に帰宅した。
1人暮らしだが、帰った時にはただいまと口にしている。
母親の教えだ。
「にゃーん」
抱えた段ボール箱から猫の鳴き声がした。
結局あの後、猫を見捨てることができずに、空き地で猫を段ボール箱ごと回収して帰ってきたのだ。
猫を飼う余裕なんてないんだが、それでも放ってはおけなかった。
だって俺猫好きだし。
餌も安いの買えば、まぁ大丈夫じゃね?
と、自分に対して言い訳をしながら、万年床の傍に段ボール箱を降ろした。
「待ってろ、今餌をやるからな」
俺は適当な皿に激安スーパーに戻って買ってきた安いカリカリを入れて、段ボール箱の中に置いた。
黒猫はそれをカリッカリッと、小気味良い音をたてながら食べていく。
水道水を入れた皿も追加で置いた。
喉も乾いていたのだろう、ぺろぺろと長いこと水を舐めていた。
さすがは俺が毎日愛飲している市の水道水だけあるな。
・・・
明るい室内で、まじまじと猫を見てみる。
猫も段ボール箱もそこまで汚れてなかった。
おそらく、捨てられてからそこまで時間は経っていないのだろう。
身体が汚れていたら洗わないとな、と思っていたが、その必要はないかもしれない。
「にゃーん」
水を飲み終えた猫が俺に向かって鳴く。
「よーしよし、いい子だ」
俺は猫を抱えて胡坐を組んだ足の上に乗せる。
そのまま猫の身体を撫でてあげた。
「ゴロゴロゴロゴロ」
気持ちよさそうに目を細めている。
アイドリング状態の車のように喉をゴロゴロ鳴らしているから、機嫌が良いのだろう。
よかったよかった。
「黒猫だから・・・クロだな」
シンプルイズベストの法則により、黒猫の名前が3秒で決定した。
クロもゴロゴロいってるから、異論はないだろう。
あとは飯食って今日は寝よう。
そんな感じで、クロとの1日目を終えたのだった。
☆
ごそごそごそごそ・・・・
俺は部屋の中の物音で目を覚ました。
時計を見ると、朝7時。
健康的な時間だ。いつもの起床時間より4時間は早い。
物音の正体は・・・
「にゃーん」
勿論クロだった。
まるで「おはよう」と言っているようにこちらを向いて鳴いた。
散らかった服の中で。
どうやら室内を探検していたようだ。
「おはよう、クロ」
朝のあいさつを終えると、クロは再び散らかった室内を探検した。
改めて部屋を見わたすと、ひどい状況だ。
大学1年の時から住んでるから、もう5年になるか。
異臭を放つようなゴミこそないものの、服は脱ぎっぱなしだし、漫画やら空のティッシュ箱やら色々なものが散乱している。
片づけるべきだが、面倒で片づける気にはならねーんだよなぁ。
とりあえず、現実を見て見ぬふりをして、俺はクロと自分の餌を用意することにした。
・・・
「うーん、なんか簡単にできて短時間勤務の高い時給のバイトとかねーかな」
朝食後、俺はスマホを使ってネットの求人サイトでバイト探しをしてみた。
クロを飼い始めたことで、自分の経済事情に目を向けた結果の行動である。
しかし、俺が求めるような求人情報など見つかるはずがなかった。
「ググったら穴場のバイト見つからねーかな?」
求人サイトで探すのを諦めた俺は「簡単 短時間 高時給」でネット検索してみた。
検索結果のトップに出てきたアホオ知恵袋の質問内容が、まさに俺が求めていたものだった。
すぐに中身を確認してみる。
〇質問者
・楽して金稼ぎ太陽 さん
簡単に短時間で楽して大金を稼ぐ方法はないですか?
情報おなしゃーす(^_-)-☆
〇回答者
・とっととハゲ太郎 さん
んなのねーよハゲ^^
現実見ようね^^^^^^^^^
・ぶりぶりごえもん さん
俺が知りたいわあほんだら
☆ベストアンサー
・Aランク冒険者キュウゾウ さん
冒険者になってダンジョンに潜りましょう。がっぽりですよ。
その他の回答6件
「えーっとなになに?ベストアンサーは・・・ダンジョンか」
ダンジョン・・・西暦2030年に突如世界多数箇所に出現した謎の迷宮。ダンジョン内には地球上には存在しない怪物=モンスターが徘徊している。地球上に存在しない資源が得られる。(以下略)・・・ワキペデア参照。
今から20年前だな。
当時世界中で大騒ぎになったそうだ。俺は3歳だったから覚えてないけど。
日本では10年前、俺が中1の時に一般開放されて18歳以上の者ならダンジョン探索者・・・通称冒険者になることができるようになった。
ダンジョンに潜ってモンスターを倒すと、魔石をドロップする。
なぜか倒されたモンスターは体が消え、魔石だけが残るのだ。
たまにモンスターの身体の一部がレアドロップアイテムとして残ることもある。
それらは、モンスターの研究用や、高性能な軍事品やら日用品やらに加工できるらしい。
だからダンジョンなんちゃらかんちゃら協会・・・通称冒険者ギルドで買い取ってくれる。
モンスターの種類にもよるけど、高いものだと1個100万円以上になったりもするらしい。
あの時は俺も夢見たよ。
カッコいい冒険者になってダンジョンを攻略することをさ。
モテるし、一攫千金だって夢じゃない・・・そう思ってたさ。
大学1年の時、俺はすぐに冒険者資格を得て1人で近場のダンジョンに潜った。
最寄り駅から電車で1駅、そこから徒歩3分のところにある、冒険者ギルドの敷地の中にダンジョンがあるんだよね。
登録とか買取をしてくれる建物の横。
で、モンスターとの記念すべき初エンカウントで・・・俺は大ケガをした。
スライムに、俺は殺されそうになったんだ。
スライムは全モンスター中最弱と呼ばれるバレーボールほどの大きさのゼリー状のモンスターだ。
物理攻撃でも魔法攻撃でも、とりあえず当てれば倒せると言われている。
落ち着いて対処すれば全然勝てる相手だったのに、攻撃は空振りするわ、スライムの体当たりが股間に直撃するわで、もう最悪の状態だった。
股間の激痛で動けなくなった俺は、スライムに容赦なくボコボコにされたよ。
まさに悪夢だった。今までの人生で最も恐怖を感じたね。
幸い通りがかったおじさんがスライムを倒してくれて俺は助かったんだけど、あれ以来ダンジョンには潜ってない。
ダンジョン怖い。スライム怖い。
「嫌なことを思い出しちまったぜ・・・ダンジョンは却下だ却下。他にはいいのねえかな?」
他の回答を見ると「YeTuber」「ラノベ投稿サイトで自作ラノベを投稿し、作家デビュー」なんてのがあった。
ろくなもんがねぇな・・・。
ちなみにYeTuberってのは動画投稿者な。
大学2年の時、ウホウホ動画っていう動画投稿サイトで俺もゲーム実況動画をあげてみたことがある。
FPSオンラインゲーム・・・一人称視点のシューティングゲームね。
その実況動画だ。
「あ」「はい」「えーっと」「よいしょ」とかしか言えなかったよ。
喋ってた言葉の半分はこの4つだ。
録画中って、なんか緊張しちゃうんだよなぁ。
しかもプレイもたいしてうまくない。
そんな動画だから再生数も少ないし、コメントもほとんどない。
たまにコメントがあったと思えば
「つまらん」「糞動画あげんなカス」「声キモ」
といった辛辣なものだった。
そういうコメントを見る度、万年床の布団の中で枕を濡らしたもんさ。
と、いう訳で動画投稿者は却下。
ちなみに最後のラノベ作家デビューなんて・・・まぁ無理だわな。
俺にはとても文才なんてない。
中学3年の時の読書感想文を思い出す・・・。
「『バリー・ボッチーと便所の石』を続んで、おもしかったです」
「バリーの、ま法が、すごくて、かっこよかっです!」
「とても、びっくりしました。なので、とても、びっくりしました」
小学1年生並みの感想の上、さらに誤字脱字、平仮名⇒漢字、もろもろに赤字でダメ出しされて再提出を食らった。
国語の先生からは「もっとたくさん読書しましょう」って言われたよ。
漫画ならいっぱい読んでたんだけどな。
てか、YeTuberもラノベ作家も、成功するのなんて極わずかじゃねーか!
簡単・短期間・高時給、一つも当てはまらねーだろ!
あー・・・過去の自分を思い出すハメになっちまった。
思えば黒歴史だらけだな。
・・・今もか。
そんなことを考えている時にふと気づいた。
「あれ?クロどこいった?」
・・・
部屋を見渡してもクロの姿は無かった。
「おーい、クロ~」
「にゃ~ん」
「あ、いた」
どこに隠れていたのかわからないがひょっこりとクロが姿を現していた。
「かくれんぼもほどほどにな」
そう言って俺はクロの背中を撫でるのだった。
☆
あれから1週間。
結局俺はバイトをすることなく、今まで通りの生活を送っていた。
昼前まで寝て起きて飯食って糞して漫画読んでアニメ見て飯食って糞して寝る。
こんな感じだ。
あとそれにクロの存在がプラスしたくらいか。
クロに餌をあげて、撫でてかわいがっている。
買ってきた猫用おもちゃで遊んだりもしているな。
クロは相変わらずかくれんぼが好きなようでしょっちゅう隠れている。
だいたい隠れているか、万年床の上で寝てるかのどれかだ。
餌の時間になると近くに寄ってきてニャンニャンおねだりしてくる。
しかし、クロについて2つ疑問がある。
1つは、たまにクロが見覚えのないおもちゃで遊んでいることだ。
・・・毛玉ボールなんて買ってあげたっけか?
2つめは・・・クロがうんちやおしっこをしないのだ。
これは疑問というか問題である。
せっかくあれからトイレや猫砂を買ってきて置いているのに、一向に用を足さない。
部屋のどこかで用を足してるのかとも考えたが、そんなことしてたら臭いがするはずだし・・・。
さすがに1週間も排泄しない猫なんているんだろうか・・・?
まさか、病気とか!?
うーん、でも元気そうだけどな。
でも気になるからクロを呼んで体をしっかり見てみよう。
今はかくれんぼ中みたいだけど、呼べば返事するだろう。
「お~い、クロ~」
しーん
「クロちゃーん、返事して~」
しーん
クロからは返事がない。
あれ?どうしたんだろう・・・。
そう思ってふと部屋の隅に目をやると、なんと壁に穴が開いていた。
猫1匹が通れるサイズはありそうだ。
「うおっ!マジかよ。隣の部屋と繋がっちまったんじゃねぇのか・・・これ絶対クロ隣の部屋に行ってるな・・・」
いつの間に穴が開いてたんだろう・・・散らかってたから全然気づかなかった。
でも何もしてないはずなのに、なんで穴が開いてんだろう・・・建物が古いせいか?
そんなことを考えながら穴の近くに寄ってみると・・・
「ニャーン」
穴からひょっこりクロが顔を出した。
やっぱり隣の部屋に行っていたか。
「クロ~だめだぞ、隣の部屋に行っちゃ」
穴から出てきたクロを抱き上げてそう言ったのだが、当の本人はすまし顔だ。
クロの身体を見てみてもどこも異常そうなところはない。
むしろ毛並みは艶々としていて、うちに連れてきた時よりも健康そうだ。
ということは、まさか・・・
「隣の部屋でトイレしてるな・・・」
隣の部屋「を」トイレにしていると言ったほうが正しいか・・・?
隣の部屋がクロのトイレと化している状況を想像する・・・
・・・1週間分の排泄物が隣の部屋にあることになる。
想像しただけでも嫌だった。
「・・・まぁ、隣は誰も住んでないし、いっか・・・」
両隣の部屋は誰も住んでいない。
だから俺は本来ペット禁止のこのアパートにクロを連れ帰ったのだ。
まぁ、だからといって隣の部屋をペットのトイレにしていい訳ではないが・・・。
とりあえず、これ以上クロが隣の部屋に行かないように、壁の穴の前に漫画本を積み上げて封鎖することにした。
本当はちゃんと穴をふさがないといけないが・・・
退去する時がくれば、その時に壁を修復することにしよう。
面倒くさがりな俺らしい判断だった。
壁の穴をした翌日、クロはちゃんと猫用トイレで用を足した。
ほっと一安心しつつも、これはやはり、隣の部屋をトイレにしていたということである。
そっちの方はこれ以上考えないことにした・・・。
クロは壁の穴を塞いでいる漫画の山の前でニャンニャン鳴いている。
「ダメだよ!大きいトイレの方がいいかもしれないけど、うちの小さいトイレで我慢しなさい!」
そうクロに言い聞かせるのだった。
そして、それから1週間後の夜中、事件が起きた。
☆
丑三つ時・・・午前2時~2時半頃のことで、幽霊や妖怪などの怪異と遭遇されやすい時間帯とされている。
漫画にそう書いてあった。こんな知識を得られるなんて、漫画って本当にいいもんですね~。
で、なんで丑三つ時の話をしたのかというと・・・出たんだわ、丑三つ時に「怪異」が。
ゴトゴトゴト!
暗闇の部屋で、何かが崩れる音が聞こえた。
「うお!」
急な音で目を覚ます俺。
「クロ!暴れちゃダメだぞ!」
枕元に置いているスマホを手に取りながらクロに注意する。
スマホには午前2時と表示されていた。
「まだ夜中じゃねぇか」
「にゃーん!にゃーん!」
あれ?クロは俺の布団にいる・・・
じゃあ物音の正体は・・・
嫌な予感がして俺はすぐに立ち上がり電気をつけた。
そして・・・
「!? な・・・なんで・・・・!?」
部屋の隅に積んでいた漫画本が崩れていた。壁の穴を塞いでいたやつだ。
そして俺の前には・・・スライムがいた。
「なんでスライムが、俺の部屋に!?」
考える暇もなく、スライムは俺めがけて跳んできた。
お得意の体当たりだ。
トラウマが蘇り、咄嗟に股間をガードする俺。
スライムの体当たりが炸裂するかと思ったその時だった。
「シャアアアア!」
クロが威嚇の声を上げながらすごい勢いでスライムを引っ掻いたのだ。
攻撃されたスライムは一瞬で姿が消え、ポトッと、魔石と体の一部が畳の上に落ちた。
「た、助かった・・・」
俺はその場にへなへなと崩れ落ちた。
あまりのことに足が動かない。
まだ動悸が激しい。
「ピーピー」
すると壁の穴からモンスターが出てきた!?
「マジかよおおお!?」
今度は黄色いヒヨコみたいなモンスターだった。
大きさはスライムと同じく、バレーボールほどだ。
どうしよどうしよと思ってたら
「シャアアア!」
再び、クロがすごい勢いでモンスターに突撃して引っ掻いた。
その一撃でヒヨコモンスターは消え去った。
ピロリロリーン
なんだ、変な音が聞こえたぞ。スマホか?
ところで・・・さっきも見えたけど、クロの引っ掻き攻撃した時、爪が光ってなかったか?
そんなことを考えていると、クロは壁の穴の中に入っていった。
「! お、おい、クロ・・・!」
俺は足が震えて立ち上がれなかったので、赤ちゃんのようにハイハイして壁の穴に向かった。
そして、壁の穴の中を覗いて見ると・・・そこは石畳の洞窟のような場所だった。
「これは・・・ダンジョン・・・!」
隣の部屋に繋がっていると思っていた壁の穴は、ダンジョンへと繋がっていたのだった。
☆
あれから30分くらい経っただろうか。
クロは壁の穴のダンジョンから出てきた。
「にゃーん」
壁の穴から見ていたのだが、クロはダンジョン内にいたモンスターを引っ掻き攻撃で全部倒していた。
怖いがクロだけに任せておけない・・・!俺も行かないと!
と思って頭を突っ込もうと思ったけど、部屋の隅っこの方にある穴だから無理だった。
そもそも、頭が突っ込めたとしても穴が小さすぎて肩が通らないけどな。
それで穴を広げようと思って、穴の横の壁を思いっきりマイナスドライバーで叩いてみた。
壁に穴は開いたんだけど・・・隣の部屋が見えただけで、ダンジョンの入り口は広がらなかった。
そういう訳で、クロが戻ってくるのをおとなしく待ってたんだよ。
クロは俺の命の恩人(恩猫?)だから誉めてやらないとな。
「クロ、ありがとう。よく助けてくれたな。怪我とかないか?」
そう声をかけながらクロを持ち上げて体中を見てみたが、どうやら無傷のようだ。よかった。
ほっとした俺は胡坐をかいて座った。
「よしよし、クロはえらいぞ、すごいすごい」
そう言いながらクロを胡坐の足の上に乗せて背中を撫でてやる。
クロはゴロゴロ言いながらリラックスしてた。
「でも、本当よくモンスターを倒せたな。もしかしてレベルが上がってたりしてな」
クロの背中を撫でながらそう声をかける。
人間じゃないんだからそれはないかな、などと思っていたら・・・
「にゃーん」
クロが鳴き声の後、目の前にステータスウインドウが表示された。
・・・ちなみにステータスウインドウというのは冒険者の名前やレベル、HPなどが表示される画面だ。目の前の空間にパッと現れるんだが、普通は「ステータスオープン」と言うと表示される。ダンジョンの謎技術によるものなので、なんでこんなことができるのかは知らん。
で、表示されたステータスウインドウを見てみると、どうやらこれはクロのステータスだということがわかった。
〇ステータス
名前: 黒木 クロ
レベル: 10
HP: 100/100
MP: 25/30
SP: 20/60
攻撃力: 50
防御力: 38
素早さ: 65
知力: 40
魔力: 30
魔法: ヒール(小)
スキル: 幸運(特)※パッシブスキル
スラッシュクロー
レベル10もあるじゃないか!しかも魔法にスキルまで使える!
「ステータスオープン」
試しに俺も自分のステータスを確認してみた。
〇ステータス
名前: 黒木 マサト
レベル: 2
HP: 10/10
MP: 0/0
SP: 0/0
攻撃力: 8
防御力: 6
素早さ: 8
知力: 4
魔力: 3
魔法:
スキル:
「・・・・・」
クロとの差に絶望した!
久しぶりに自分のステータスを見たけどなんだこれ!
HP以外の数字は全部一桁じゃないか!
MPやSPは0だし!
二桁あるHPも10って少なすぎだろ!
でも何よりショックなのが知力だ。
知力4
「うわっ・・・俺の知力、低すぎ・・・?」
思わず口走っちゃったよ。
クロの10分の1だよ、俺の知力。
「・・・いや、逆だ。クロが俺の10倍も知力があるんだ!すごいぞ、クロ!」
「にゃーん」
心なしか、クロの鳴き声の声色がいつもより嬉しそうだ。
もしかしたら、褒められていることを理解してるのかもしれない。
俺の10倍の知力だし。
・・・で、なぜか俺のレベルが2になってる。
俺モンスター倒したことないけどなんでだろ?
知力4の俺には見当もつかない・・・
と思ったけど、そういえばクロがヒヨコモンスターを倒した時に変な音が聞こえたな・・・。
あれ、もしかしたらレベルアップ音だったんじゃ?
パーティーを組んでると、パーティーメンバーが倒したモンスターの経験値は共有されたはずだけど・・・
俺とクロはパーティー扱いになってるのかな。
・・・まぁいっか。考えたってしょうがないし。
ステータスを確認したついでにアイテムボックスも確認してみるか。
・・・ちなみにアイテムボックスというのは、ダンジョンで手に入れたアイテム限定で自由に出し入れできる謎空間だ。「アイテムボックスオープン」と言うと、持っているアイテムリストの画面が表示される。例によってダンジョンの謎技術によるものなので、なんでこんなことができるのかは知らん。
で、表示されたアイテムリストを見てみたら・・・
〇パーティー共有アイテムボックス
スライム魔石×58
ピヨッチ魔石×30
ホーンラット魔石×8
スライムゼリー×58
ピヨッチの毛玉×30
ホーンラットの角×8
なんかいっぱい入ってる!?
「アイテムボックス」の前に「パーティー共有」ってついてるから、たぶんクロが倒したモンスターのドロップアイテムなんだろうな。
これを見る限り、俺とクロがパーティーを組んでいる状態なのは間違いなさそうだ。
しっかし、本当にアイテムの数が多いな。
こんだけ倒せばレベル10にもなるか・・・。
ちなみにこれいくらくらいなんだろう・・・。
スマホで買い取り単価を調べてみた。
スライム魔石・・・100円
ピヨッチ魔石・・・200円
ホーンラット魔石・・・400円
スライムゼリー・・・1000円
ピヨッチの毛玉・・・2000円
ホーンラットの角・・・4000円
こんな金額だった。
・・・これって全部売ったらかなりの金額になるんじゃ・・・
俺は部屋に落ちていたドロップアイテムもアイテムボックスに収納して、金額を計算した。
すると・・・
スライム魔石×59 59×100=5900
ピヨッチ魔石×31 31×200=6200
ホーンラット魔石×8 8×400=3200
スライムゼリー×59 59×1000=59000
ピヨッチの毛玉×31 31×2000=62000
ホーンラットの角×8 8×4000=32000
合計168,300円
「じゅうろくまん、はっせんさんびゃくえん・・・?」
その額を見て驚愕した。驚愕のあまり屁が出た。
す・・・
SUGEEEEEEEEEEE!
「社畜時代の、俺の給料よりたけえ・・・!」
そして、恐る恐るクロに話かけてみる。
「あの・・・クロ・・さん?このアイテムって売ってもよかったりしちゃいますか?」
金額の衝撃で色々言葉がおかしいが、クロの答えは・・・
「にゃーん」
YES
俺にはそう聞こえた。
だから俺は両方のおててを合わせて拝んだね。
「神様仏様クロ様、ありがとうございます」
朝になったら、冒険者ギルドに行って換金しよう。
そして、そのお金で、クロにごちそうをたくさん買ってきてあげよう・・・!
そう決意するのだった。
そして夜が明け、俺は冒険者ギルドでアイテムを全部換金した。
買取金額は事前に調べたとおりだった。
量が量だったから職員さんもびっくりしてたよ。
特にレアドロップの量に驚いてた。
・・・よく考えたら、魔石とレアドロップの数が同じっておかしいよな?
モンスターを倒せば魔石は必ず落ちるが、レアドロップは1%~5%程度だと言われている。
それなのに、魔石と同じ数ってことは・・・レアドロップ率100%!?
たぶん、スキルの「幸運(特)」の影響なんだろうな・・・。
クロさん・・・マジぱねぇぜ・・・!
とりあえず、アイテムを一気に交換すると目立つから、次からはほどほどに交換しよう。そうしよう。
俺はほくほく顔で、クロ用のニャオチューチューのバラエティーセットや高級猫缶、高級カリカリをどっさり買って帰った。
クロも大喜びで俺も嬉しかった。
☆
あれから、半年。
相変わらず俺は今もニートをしている。
でも毎日のルーティーンは少しだけ変わった。
昼前まで寝て起きて飯食って糞して冒険者ギルドでアイテムを換金して漫画読んでアニメ見て飯食って糞して寝る、だ。
クロは毎日、うちのダンジョンに潜っている。
今や、クロが毎月稼ぐお金は100万円を超えていた。
強くなった分、どんどん先に進んでるみたいだから当然だな。
そういえばあれから色々調べたんだけど、ダンジョンから俺の部屋にモンスターが出てきたのは、うちのダンジョンに1週間誰も入らなかったからだった。
通常はダンジョンからモンスターが外に出ることはないんだが、1週間侵入者がいないと、モンスターが外に出てくる仕様らしい。謎だ。
この仕様のせいで、過疎ダンジョンにも定期的に冒険者が入らないといけないから、冒険者ギルドは管理が大変らしいよ。
あとダンジョンの報告義務のことも調べた。
ダンジョンが発生したら冒険者ギルドに報告しないといけないんだと・・・
まぁ、モンスターが外に出てくるから納得は納得なんだけど・・・
そうすると、このアパートごと冒険者ギルドに接収されちゃうからな・・・
アパートのオーナーや、アパートの住民達にも迷惑がかかってしまう。
そしてなにより、俺の飯の種が無くなる(本音)
そういう訳なので、うちのダンジョンは秘密にしている。
マジで、洒落にならないくらい、クロがダンジョンで手に入れてくるアイテムはすごいんだわ。
いくつか紹介しよう。
〇その1 肉
これは俺がうちのダンジョンの存在を知って1週間くらいしてからの話だったかな?
クロがオーク肉をゲットしてきた。
オーク肉といれば、国産最高級の豚肉を超える高級豚肉だ。
俺が初めて食べた時は、あまりのおいしさに涙が出たよ。
ステーキにして塩コショウを振っただけだったけど、今までで食べた肉の中で一番美味かった。
あとは、コカトリス、ブラッディーカウ、グレートシープの肉なんてのもある。
それぞれ、鳥、牛、羊だ。
これらも言わずもがな、高級肉で舌がとろけるくらい美味い。
これらの肉は当然、買取価格も数万円と高いんだけど・・・
売るのが勿体なく感じて、全部アイテムボックスに保管している。
アイテムボックスに入れていれば腐ることがないからね。超便利。
俺もクロも毎日ダンジョン産の美味しい肉を食べている。
もう舌が肥えすぎて、普通の肉は食べられない体になっちまった・・・!
〇その2 宝箱
ダンジョン内の様々な場所には宝箱が置いてあるらしい。
宝箱の中には様々なレアアイテムが入っている。
まぁ、トラップが仕掛けられていたり、宝箱に化けたモンスターだったりもするらしいんだけどね。
で、手つかずのダンジョンには宝箱がいっぱいあるんだけど、うちのダンジョンはクロしか潜ってないから
全部クロが総取りしてるんだわ。
今までクロが手に入れてきたアイテムを挙げると
武器は、ミスリルソード、ミスリルクロー、ミスリルロッド・・・etc
防具は、ミスリルアーマー、ミスリルシールド、ミスリルヘルム、ミスリルグリーブ・・・etc
アクセサリーは、賢者のネックレス、女神の指輪、疾風の腕輪・・・etc
ポーションは、Sヒールポーション、Sマジックポーション、Sスキルポーション、リフレッシュポーション・・・etc
装備はミスリル系が多いね。クロはミスリルクローを装備している。
より深くダンジョンに潜ると、ミスリルよりも希少なアダマンタイトやオリハルコンの装備も出てくるみたいだ。
アクセサリーはステータスアップや魔法効果を得られるものが多い。
賢者のネックレスはMP・魔力上昇、女神の指輪はHP・MP自然回復量アップ、疾風の腕輪は素早さ上昇だ。
アクセサリーはクロが全部装備してる。
ポーションは、Sヒール・マジック・スキルポーションがそれぞれHP・MP・SP全回復、リフレッシュポーションが毒や麻痺などのあらゆる状態異常回復だ。
どれもこれも、普通の冒険者じゃなかなか手に入れられないものばかりだから、買取価格はすごいことになっている。
一番安いものでも数十万円、高いものだと数千万円もする。
インフレがすごい。
〇その3 レインボースライムのドロップ
これが今まででダントツで凄かったものだ。
レインボースライムというのは超激レアモンスターで、今まで世界中で3体しか討伐されていない。
レインボースライム魔石の冒険者ギルドでの買取価格は驚愕の10億円。
アメリカの最高峰研究機関では100億円の懸賞をかけている。
これを手に入れた人は一夜で億万長者だ。
ちなみに魔石にどんな効果があるのかは知らん。
レインボースライムが発見されたダンジョンには冒険者が殺到してる。
現代のゴールドラッシュだ。
でも今までレインボースライムが発見されたのは全て別々のダンジョンだ。
固有のダンジョンに生息するモンスターではないのかもしれない。
ちなみにレアドロップは今まで確認されていない。
今まで討伐されたのが3匹だけだから仕方ないね。
で、そんなレインボースライムから、クロは当然のようにレアドロップもゲットしていた。しかも2つも。
1つめはレインボーシューズ。
装備者の全ステータスを30%向上させるアイテムだ。
ちなみに、どれか1つのステータスを20%向上させるアイテムでも、最低でも価格は億単位になる。
そのレベルの装備になるとオークションで取引されるんだけど、世界中の冒険者が喉から手が出るほど欲しいものだから、すごい勢いで金額が吊り上がっていくそうだ。
今までの最高額は、大賢者のネックレスで50億円相当。
・・・レインボーシューズがいくらになるのかなんて、全く想像がつかない。
とりあえず、アイテムボックスの肥やしにしておくのは勿体無いので、クロが装備している。
2つめはレインボーエリクサー。
効果は死者蘇生。
それって、もはや神の領域では・・・。
ちなみに生きてる人が飲むとエリクサーの効果だ。
エリクサーは、死んでさえいなければ欠損した四肢や不治の難病さえも治す効果がある・・・と言われている。
実はエリクサーですら、世界中で今までに一度も実物を発見されたことがないのだ。
これは激レアスキル「アイテム図鑑」を持っているという冒険者が冒険者ギルドに情報提供して認知されているものだ。
下位のエリクサーですらいくらの価値になるかわからないのに、ましてやレインボーエリクサーは・・・・。
って感じだ。
まぁ、はっきり言ってレインボースライムのドロップアイテムは嬉しいんじゃなくて怖くなったね。
万が一、持ってることが漏れたら国家レベルで命を狙われそうだ。
という訳で、クロが手に入れてきたすごいアイテムの紹介は以上だ。
以上っていうか異常?
☆
更に半年が経った。クロと出会ってからちょうど1年だ。
で、クロはついにやっちまったよ・・・。やらかしちまった・・・。
つい昨日の話だ。なかなか帰ってこないなーって思ったら、なんとダンジョンのラスボスを倒してた。
ダンジョンを1年でソロ攻略って・・・と呆気に取られた目でクロを見たけど、クロはいつもどおりの様子だった。
ダンジョンを攻略したことで、ダンジョンの入り口である壁の穴は塞がり、普通の壁になっていた。
今は、俺がマイナスドライバーで破壊した小さな穴だけが残っている。
それを見ながら、俺はここ数か月間ずっと考えてきた、ある計画を実行に移すことを決意した。
その計画とは・・・。
☆
今、俺はド田舎県ド田舎郡ド田舎村の、さらに仙人が住んでそうな秘境のような山奥にある、廃虚となった集落の近くにあるダンジョンの入り口に立っている。
ここは、アクセスの悪さと、ダンジョンで得られる資源も割に合わないために、人が全然来ない超過疎ダンジョンである。
それでもダンジョンからモンスターが外に出ないようにするために、1週間に一度は冒険者ギルドが冒険者をダンジョンに派遣している。
そんなところだ。
・・・なんでそんなところにいるかって?
決まってるだろ?
俺は隣にいる黒猫を見る。
そう、クロに俺のレベル上げを手伝ってもらって、ここのダンジョンを攻略するためだよーーーーーーん!!!
準備はバッチリだ!キャンピングカーがあるし、食料もアイテムボックスにどっさりある!
まさか野菜や果物までドロップするモンスターがいたとは驚きだったぜ!
ここをキャンプ地として、このダンジョンを攻略する!
俺はクロと一緒に、最強の冒険者になるための第一歩を踏み出すぜ!
「HAHAHAHAHAHAHAHA!!!」
「にゃーん」
俺の高笑いとクロの鳴き声が、誰もいない山奥で響きわたった。
☆☆☆☆☆
これは、後に日本を代表する冒険者として世界的に名を轟かせている・・・と自称する男・黒木マサトと、その愛猫兼相棒・クロの出会いを描いた、自伝冒険譚の序章である。
完
[短編]猫ちゃんに養ってもらうニートの俺~俺の愛猫はダンジョンで魔物を狩って魔石やレアドロップを持ってきてくれる神猫です!~ ねお @neo1108
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