第140話選択肢はございませんわ
あぁ、『かんさいだししょうゆ』味。
なんと美味なのでしょうか。
『しょうゆ』という調味料に出会ってしまったわたくしはもう元の、『しょうゆ』を知らなかった生活には戻れないかもしれませんわ………いえ、そもそも『にほん』の食文化に触れた時点でわたくしはもう前の生活には戻れない身体にされてしまったのだろう。
「奥方様ぁっ!こちらはピザ味のポテトチップスですよーーっ」
「こちらはコンソメ味ですっ!!」
そう、まるで雛鳥の様に使用人達から次々にお菓子を口の中へ入れて貰うお菓子、それら全てが食べた事のない、けれどもとんでもなく美味しく、そして一つ一つ違う味や食感なのだ。
まさかピザも当然の事ながらとんでもなく美味しかったですし鼻から抜けるチーズの香りも強く、ずっと食べていたいと思えたのだが、何よりも高級スープであり貴族しか味わえない筈のコンソメスープの味まであるとは想像以上である。
こんなの、もう元の生活に戻れる事などあろう筈が無い。
この世の中にはこれ程迄に様々な、美味しいと思える味があるのだと知ってしまったのだから。
「奥方様、これはプリンって言うデザートですっ!」
「プリン………ですの?」
「そう、プリンです。普通に食べるのも美味しいし洗い物が増えない良さがあるんですが、私はやっぱりひっくり返してお皿の上にプッチンと容器の突起物を折り落として食べる方が、落とすのもプルプルした見た目も楽しいですし何よりこっちの方が美味しく感じるような気がするので好きですねっ!ささ、一緒にプッチンとやりましょうっ!プッチンとっ!」
「わ、分かりましたわ」
もう王国の食生活には戻れないかもと思っているとナターシャが『ぷりん』なるデザートとスプーン、そしてお皿を持って来るではないか。
そしてわたくしはナターシャの真似をしながら容器を封を開けてお皿の上でひっくり返すと、容器の底に飛び出ている突起物をプッチンと折ってみる。
すると容器の中に入った『ぷりん』なるものがぷるんと落ち、皿の上でぷるんと揺れているではないか。
「また面妖な見た目ですわね………」
もしかすれば嫁ぐ前のわたくしがこの『ぷりん』なる物を見たら、食べようとはしなかったかもしれない。
しかしながら今のわたくしは既に知ってしまっているのだ。
ここ『にほん』で出てくる料理はわたくしの予想を軽く超えてくる美味しさであるという事を。
そもそも『おさしみ』を食べれた今のわたくしには見た目がまるで少し変わったスライムの様であったとしても、その見た目だけで食わず嫌いをするという選択肢はございませんわ。
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