第139話流石『にほん』と言うべきか
クッキーを湿らしただけでは食感が変わるだけで、むしろクッキーの良さであるサクサク感が失われてはせっかくのクッキーが台無しではないか────
「な、何ですのこれっ!!今まで食べた事の無い、そして今まで食べた中で一番美味しいクッキーですわっ!!」
「ですよねっ!?ですよねっ!?私、いつも王国の使用人で新しく雇われた方にはいつもこのカントリーマ〇ムを食べさせているのですが、やはり皆様ビックリしておりますものっ!!」
────と思っていた時もございました。
しかしながらわたくしは気付いたのです。
このしっとりなめらかなクッキーを前にしては王国のクッキー等相手にすらならない、と。
「こ、こんなにも美味しくて、そして新感覚のクッキーを食べてしまえばビックリするに決まっておりますわっ!!」
あぁ、いつもならば厳しい側使えによりわたくしが食べ過ぎてしまわないように見張られ、一日に決められた枚数以上のクッキーを食べようと手が伸びようものならば、すかさず教鞭で叩かれておりましたが、今この場にはあの鬼、ではなく、側使えのおばさんもここにはおりません。
それはすなわち、わたくしを止める者が今この場にはいないという事でもあり、そんな環境でわたくしの手が止まる訳も無く、気が付けばわたくしはもう一枚、今度はチョコレート味のカントリーマ〇ムをぺろりと平らげてしまっていた。
「奥方様、奥方様、こちらも美味しいですよーー。あーーーん」
「え?あ、あーーーん…………んんっ!?」
そんなわたくしの前でララが芋を薄くスライスして揚げたものを、まるで幼子に食べさせるかの如くわたくしの口へと入れて来る。
恥ずかしさも相まって少しだけ戸惑ってしまったのだが、貴族の淑女同士では決して体験できないような行動になんだか楽しそうという気持ちと、何故だか嬉しさが込み上げて来て思わず身体が動いてしまい、しのままララの指でつままれた揚げ芋をされるがままに口の中へと入れる。
この薄くスライスされた揚げ芋であるのだが、王国でもわたくしの父上の頃から流行っており今ではポピュラーなスナック菓子の一つとしてここ王国でも定着しているお菓子である。
その様なお菓子がここ『にほん』でも全く同じ様なお菓子が存在する────
「塩味ではございませんわっ!!何ですのこの味はっ!!今まで食べた事がございませんわっ!!」
────と思っていたのですけれども流石『にほん』と言うべきか、クッキーに続き揚げ芋まで想像の遥か上の美味しさが口一杯に広がって行くではございませんか。
「関西出汁しょうゆ味ですよーー」
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