第137話愛国心
そして、紙コップの扱いに驚いているわたくしを見てマチルダがこの紙コップの価値を教えてくれるのだが、その値段にわたくしは更に驚愕する。
紙一つとっても、とてもじゃないが王国ではその値段で売る事は出来ないであろう。
そもそもそんな安価な値段で売ってしまったら、この紙コップを作っている職人が日々を暮らして行くだけの日銭すら稼げないどころか間違いなく赤字である上に、そんな事をして他国へ移住されでもしたら国の損益ではないか。
王国内の話であるのならば即刻この紙コップを作っている職人が住んでいる場所の領主を呼びつけ怒鳴りつけても良いレベルである。
職人は紐で縛り付けてでも定住させろと言われている程に常識である。
その紐の代わりに好待遇をさせなければならないのである。
そこいらにいる芸術家を志す若者達と同じ、又はそれ以下の扱いをしてここ『にほん』は大丈夫なのであろうか?
それこそ鍛冶職人や大工や石工職人等は守られているのであろう?と思わず心配してしまう。
「因みにその紙コップは全て機械、所謂
「凄い凄いとは思っておりましたが、知れば知る程想像出来ない程の凄い国ですわね」
そしてわたくしはマチルダの話を聞きながら再度ここ『にほん』の凄さを再確認する。
我が王国は隣国と比べて頭ひとつ発展しており強大な大国であると思っていたのですけれども、所詮は井の中の蛙であるという事がいやがおうにも分からされてしまう。
王国には生まれてこの方良い思い出なぞ結局ひとつも作れなかったですし、友達と思っていた者達もわたくしだけがそう思っているだけである可能性があるという結果ではあるのだけれども、不思議な者で愛国心という物はわたくしにもあったみたいである。
むしろわたくしには何も無いからこそ、王国民、それも公爵家の娘というのが誇りだったのかも知れないし、だからこそ抱いていた愛国心なのかも知れない。
そんな事を思いながらわたくしは既に封を開けられた2Lと小さく書かれた容器に入っている、白くしゅわしゅわしている『たんさん』のジュースを紙コップへと注いで行く。
因み『いーおーん』でルルゥからジュースの容量に使われるmlとLの表記について教わっていたりする。
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