第136話コップ一つの料金

クッキーと芋をスライスして揚げた様な物等は分かるのだが、基本的にはどのような味なのか分からない物が多く、それら全てがわたくしの好奇心を刺激して行く。


「アイスとジュースとプリンとかは冷蔵庫の中へ入れておくので、食べたくなったら皆さん勝手に取って下さいね」


そしてララがそう言いながら特定のお菓子を白い金庫の様な箱の中へ入れていく。


どうやらこの冷蔵庫という魔道具は物を冷やしたり凍らしたりできるみたいである。


そう言えばわたくしがここ『シノミヤ』の家に嫁いだ時の部屋の説明でも教えて頂いたのですけれども、そもそも今現在は秋から冬になろうとしている時期でございます為、わざわざ食べ物を冷やすという考えに至らなかった事を少しだけ恥じる。


そしてララは皆様へ紙で出来たコップを配って行くではないか。


紙であるだけでも高級であるにも関わらず、更にシミ一つ無い真っ白な紙で出来たコップ。


これ一つを王国で買おうとすればどれ程のお金を取られるのか想像もつかない。


ただ一般的なコップの何十倍もの値段が付く可能性がある事くらいは理解しておりますが、そもそも紙という物は水に弱く、濡れた状態では直ぐにダメになるのですけれども、その紙で出来たコップにジュースを入れてしまっては底が抜けやしないかという不安が頭を過る。


そうなれば『にほん』側のわたくしの部屋は零れたジュースまみれになってしまうのではないか?


絨毯などを選択する手間考えれば、それを行う使用人さんにも申し訳ない気持ちになってくる。


そんなわたくしの不安など関係ないとばかりに皆様『2L』と書かれた縦長かつ透明の容器に入っているジュースを、好きな物を手に取り紙で出来たコップへと注いでいくではないか。


「こ、零れたりはしないんですの?」

「あ、これは水に濡れても大丈夫な様に作られた紙コップですので大丈夫ですよ。因みに使い捨て用途で作られたコップなので洗って再度使うという事は流石にできませんが」


そしてわたくしの疑問を、わたくしの左隣に座ってらっしゃるマチルダさんが答えてくれる。


しかし、水に濡れても大丈夫な様に魔術か何かを施されているのだとすれば、このコップ一つの料金は金貨一枚どころかそれ以上の価値があるのでは?


それほどの物が使い捨てとして扱われ、皆さまなんのためらいも無くジュースを入れて行くでは無いか。


「ちなみにこれは、王国では銅貨一枚で七個セットですので一つ銅粒硬貨一個分ですのビックリしますよね。私も初めはビックリ致しましたし」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る