第123話自分でしか出せない魅力

そうぼやく若い女性のこの方は王国と日本を行き来している人間族のミランダさんである。


年齢は自称二十歳だそうだ。


ミランダさんの仕事は主に王国側の使用人と日本側の使用人との連絡係として勤めているらしく、互いに認識のズレが無い様調整するという仕事もしているとの事である。


ミランダさんは幼い頃王国の世界の住民であるのだが、もともと王国より更に東にあるダリア公国、その国の山奥で暮らしていた所を人攫いに会い奴隷として売られてしまったところを巡り巡って旦那様が引き取ったのだそうである。


そして違法に奴隷を販売していた奴隷商及び国を股にかけて人攫いを生業にしている賊は国境を超える寸前の所でなんとか討伐済みのようで一安心である。


討伐済みという所を考えると少し恐ろしくもあるのだが、それだけの悪事をしたというのは間違いないので致し方ない事であろうと割り切ると共に、悪事を働くつもり等毛頭無いのだがわたくしも真っ当に生きようと改めて思う。


因みに彼女は今自分の意志で、出稼ぎも兼ねてここで働いており、月に一度ドレイク便で手紙と一緒に仕送りをしているとの事である。


ドレイク便は高いのだが、その代わり陸路で送る場合と違い仕送りに出したお金を中抜きされる心配も無いので結果安くつくみたいである上に、妹や弟達が喜ぶのだそうだ。


そういう家族との繋がりがあるのは何だか羨ましくもあり、そして少しだけ寂しくもある。


因みにドレイク便は国交を築いている国同士間で唯一関所を通らずに国境を超える事の出来る職業であったりする。


「それに、私が暮らしていた村も黒髪が多かったものですから金髪には憧れちゃいますね、やっぱり」

「やはり、自分にはない魅力って憧れますわよね」


貴族間なんて特にそうだ。


誰かが物珍しい物、又はドレス等を購入して自慢すれば翌週には他の者達もお金に物言わせて手に入れる。


流行りについて行く財力が無い者は見下される。


「ですがお互いがお互いに羨んでしまう程の魅力があるという事でもありますわ」

「それもそうですねっ!」


しかし、そんなやり取りをするよりも自分の良さを見つけ出し、自分でしか出せない魅力的な部分を伸ばす方が有意義であると今のわたくしは思う。


記憶にある男爵令嬢のモーリーと騎士爵令嬢のアンナは流行りのドレスを着飾っていなくともあんなにも美しく見えたのだから。


そんな会話をしながら馬無し馬車に揺られる事数十分、わたくし達一行はようやっと日本にある別荘へと帰り着く事が出来た。


外には日本側の使用人さん達であろう人達が出迎えてくれているのは有難いのだが「奥方様っ!!綺麗っ!!」などとお世辞まで言ってくれるのは、そこまでしなくても良いのにと少しだけ申し訳ない気がしてしまう。

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