第114話幸せの供給過多
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色々あったのだが、迷子も結局は使用人達が見守ってくれていたという事で一気に気が抜け腰が抜けてしまったわたくしはそのまま旦那様の胸へと飛び込んでしまう。
嘘だ。
気が抜けたのは本当であるのだが腰は抜けそうになったが実際は抜けてなどいない。
しかし、ふらついたのを良いことにわたくしは旦那様の胸へと、わたくしの陽だまりへと自らの意思で飛び込んで行った。
きっと旦那はわたくしがお慕い申していると言っても笑って流してしまうだろう。
恐らくそれが分かってしまっているから自分の気持ちに気付かないフリをしてこれ以上わたくしの心が傷付かない様に、出会ったばかりでだとかどうせ子供扱いされるだとかあれやこれやと理由をつけてはわたくし自身で回避しようとしていたのであろう。
でも、迷子になったお陰でわたくしの気持ちを伝えないよりも伝えられなくなる方がもっと恐ろしいという事に気付けた。
だからわたくしは旦那様に自分から抱きついて旦那様の胸で頬擦りをして旦那様の匂いを自分に付けるのと同時にわたくしの匂いを旦那様へ付ける。
今はまだ言葉で示すのは恥ずかしいのだが、だからこそその分行動で示すのだ。
恥ずかしいけど、それ以上に幸福感に包まれて行く。
「しゃ、シャーリー………?」
そんなわたくしの行動に当然ながら困惑している旦那様であるのだが知った事か。
娶ったというのに初夜は蔑ろにするわ女性扱いではなく子供扱いするそんな最低な旦那様の事など知った事ではない。
わたくしが初夜に何も起こらなかった事がどれ程怖かったのか、子供扱いされどれだけもやもやさせられたか。
旦那様には少しで良いから気にかけて欲しかった。
「何ですの?旦那様」
「いや、いくらなんでもくっつきすぎでは?ほら、流石に胸も当たってるのはどうかと思うんだが」
「む、胸くらい何だというのですっ」
全く気にしておらず抱き付くという事は胸も当然ながら押しつけている訳で、思わず声が上擦ってしまうのだが構わず喋り続ける。
「自分の意思で当てているのですわっ!わたくしは旦那様の元へ嫁いできたのですわよねっ!?ならば今更胸が当たっていようが構いやしないではないですわよねっ!わたくし達は夫婦なんですも………はうぅっ!?」
「そうだな、そうだ。俺達は夫婦になったんだ。決して保護者になったわけではない。不安だったよな、今まで子供扱いされて。でも、シャーリーは俺の妻となったんだよな」
しかしわたくしの言葉は旦那様に抱き返されて、幸せの供給過多により思わず止まってしまう。
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