第115話今夜勝負出来る装備
そして気が付けば周りにはニヤニヤとした生温かい表情で見つめて来る使用人達と、その使用人達を見て集まって来る野次馬達に囲まれている事に気付き、恥ずかしさの余り顔をみられまいと旦那様の胸で隠すのであった。
◆
その後、何とか野次馬が集まりだし囲まれる前に旦那様と抜け出し、改めて『いーおーん』を楽しむ事にする。
手始めに『うにくろ』でお洋服をルルゥ達とあーでもないこーでもないと選びながら購入する。
わたくしが公爵家の娘ではなくて平民の一般的な家庭で産まれたのならば、お友達とこういう日常を過ごせていたのだろうか?
お洋服とまではいかなくても屋台で買い食いでも良いし、一緒に外でめいいっぱい遊ぶというのも良いかもしれない。
それはきっと、とても素敵な毎日だった事であろう。
わたくしはお父様とお母様からキツく貴族以外と関わってはいけないと育てられてきた為いつも敷地の外で遊ぶ平民の子供達の姿や楽しそうな声を見て聞くだけであった。
かと言って貴族の令嬢達は表面上は親しくしてくれてはいたものの皆公爵家という肩書きが無くなった瞬間手紙一つ送って来ないであろう事が手にとる様に分かるくらいには皆わたくしではなくて公爵家の娘というわたくしを見ていた事くらいは理解しているし彼女達のその態度で伺えてくるというものだ。
しかしながら今わたくしは公爵家の娘では得る事が出来なかった日常を過ごしている。
使用人達は皆優しく、そして本当の友達の様に今もこうして接してくれる。
それに、もう迷子になるまいと旦那様の手を繋いでいる左手は安心感と幸福感が流れ込んでくる。
「雨降って地固まるですね、奥方様」
「何がですか?ルルゥ」
「もしかしたら今晩旦那様に求められるかも知れませんね」
「なっ!?」
そんな事を思いながら幸せに浸っているとルルゥがわたくしに耳打ちしてきた。
それは良いのだけれども、その内容が問題である。
普通に考えてルルゥの言う通り今晩あってもおかしく無い。
むしろ無い方がおかしい。
わ、わたくしは胸だって押しつけたのだ。
旦那様をわたくしの事を妻だと言ってくださったのだ。
「旦那様、少し手を離させて頂いても良いでしょうか?」
「ん?何でだ?」
「これだから唐変木は。今度はちゃんとしっかり使用人達で見守りますから、旦那様は男性陣とゆっくりしておいてくださいな」
「は?いや、誰が唐変木だよっ?」
「そういう所です旦那様。ささ奥方様様行きましょう」
そしてわたくしは女性陣と今夜勝負出来る装備を探しに行くのであった。
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