第110話旦那様の事が好きなのだと
旦那様を探しにここを離れた方が良いのか、それともここでじっとして探し出して貰う方が良いのか。
どちらを選べば良いのか分からず結局わたくしは動くことができず立ち止まってしまう。
これ程までに心細い気持ちになったのはいつぶりであろうか。
これ程誰かに会いたいと思ったのは初めてなのではないか?
そう思える程に旦那様の事がここ数日間という短い間でわたくしの中で旦那様は大きな存在となっていた。
「そっか………わたくし、旦那様の事が好きなんですわ。家族とかお友達とかの好きではなくて一人の異性としてわたくしは旦那様の事が好きなのですわ」
そう思った時、わたくしの中で旦那様の事が好きなのだと、ストンと落ちて嵌った。
わたくしはこの数日間の内に、いや、もしかすれば会ってその日のうちに好きになっていたのかもしれない。
迷子になるまで自分の気持ちに気付けないとは、これでは旦那様に子供扱いをされても仕方ないだろう。
でも今この時よりわたくしは恋を知らない子供から恋を知る大人へと階段を一歩登ったのである。
そしてわたくしは深呼吸を一度深く吐くと集中する。
探すは旦那様の色である。
わたくしのスキルは子供にだけ接触すれば喋らずとも意思疎通が出来る不良品であり国王様の様に遠く離れた者へと自分の思考を伝える事は出来ないし、わざわざ接触する程近くに居るのならば基本的に話せば早いというまるっきり使えないスキルだと思っていた。
しかし、その代わり相手の感情が『色』で読み取れる事が出来るのである。
そのスキルを使えば感情だけではなく本人の色を探し出せるかもしれない。
そう、例えば旦那様の色を。
今までそんな事考えた事など無かったため出来るかどうか分からないのだが、何故だか分からないのだが出来るという何の根拠の無い自信がわたくしを突き動かす。
静かに目を閉じる。
思い出せ。
旦那様の色を。
あの陽だまりの様な旦那様の色を。
どれ程集中して探していたのであろうか?
気が付けば周りの雑踏は聴こえなくなっていた。
「居ましたわっ!!」
旦那様は今わたくしの近くに居るのが分かるのだけれども反対方向へと向かおうとしていた。
その旦那様の様子から、恐らく旦那様もわたくしを探してくれているのであろう。
それに気付いた瞬間、わたくしはスキルを使うのを止めて目を開くとお置いていかれないと旦那様のいた場所へと向かおうとしたその時、わたくしの手首を何者かが掴む。
『ねぇ、今暇?良かったら俺らと一緒に遊ばない?』
『一人じゃつまらないでしょ』
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