第111話なら何故シャーリーが、俺の妻が泣いている?

一瞬使用人の誰かかと思い安堵したのだが、手首を掴む者の顔を見ると全く知らない男性二人であり、その顔は下心を隠そうともしていない下品な笑顔を貼り付けていた。


わたくしのスキルが通用しないとしても、言っている言葉が分からなくても、彼らが何を思い何を考えているかなどその表情と舐める様にわたくしの全身を見てくる視線で簡単に分かってしまう。


嫌だ。


嫌だ。


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!!


「だ、旦那様……旦那様っ……ソウイチロウ様っ!!」


そしてわたくしは気がつけば旦那様の名前を叫んでいた。


旦那様の元へ行く道中盗賊に襲われた時よりも、お父様から絶縁を言い渡された時よりも、シュバルツ殿下に婚約破棄された時よりも、今まで経験して来たどんな事よりも、旦那様以外の男性の慰め者にされる事の方が嫌だと、心の底から思った。


他に何も要らない。


お金も、地位も、何も要らない。


わたくしの大切な物を捧げても良い。


だから、神様、どうか助けて下さい。


『おいおい、何怖がっちゃってんの?』

『俺達良い人。優しい人だよ?……えーと、フレンドリー、フレンドリー、ウィーアーフレンドリー』

『なら何故シャーリーが、俺の妻が泣いている?』





気がつけばシャーリーは俺と繋いでいた手を解いてどっかに行ってしまった。


シャーリーもなんだかんだ言っても女性であり、年齢から言っても思春期ど真ん中であろう。


であるのならば服、それも異国の服を選んで買うというのはとても興奮してしまう物なのであろう。


男性の俺には少しばかり分からない事ではあるのだが分からないからと言って人の好きな事や楽しいと思う事に水を差すのは無粋であるという事くらいは分かる。


しかし、俺のこの対応はイオンを知っている者に対する対応でありイオンに来た事がない、それどころか日本にすら来たことが無かい者に対する対応では無かったと直ぐに後悔する。


少し目を離した隙にシャーリーが迷子になってしまったのである。


周囲を探してシャーリーがいない事を確認した後は一旦サービスカウンターまで行き放送にて情報を募るとウニクロとは真逆の場所でシャーリーに似た女性が何故か男の子と一緒に居るという情報が多く入って来たのでそれが本人かどうか確認せず、いてもたってもいられないとばかりに目撃情報があった場所へと走り出す。


使用人達にも探す様に言ってあるのだが、未だ俺のスマホは鳴る気配がない。


もしイーオーンの外に出てしまったらと思うとゾッとしてしまう。

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