第106話人徳だと信じたい
◆
私は今、四宮系使用人達と陰ながらお嬢様を見守っていた。
何故そんな事をしているのかと言うと昨日の夜まで遡る。
「そ、それは本当なのですか?ルルゥ」
「ええ、間違いありません。私は日本で旦那様と奥方様の距離をグッと近づける為のバイブルを知っており、今手元に御座います」
そう私が言うと使用人達は固唾をがぶ飲みし始める音が聞こえる。
なんだかんだで使用人達皆この短い期間で既に奥方様の事が大好きになっているみたいである。
当たり前である。
この私ですら奥方様を守ってやりという母性本能の前では、例え奥方様を傷つける者が旦那様であったとしても敵対しそうな勢いである………いや、流石に今の幸せな暮らしと居場所を下さった旦那様を相手に敵対するのは気が引けるので全力でもて話し合いをした上で改心させて上げましょう。
「それは………」
「「「「そ、それはっ!?」」」」
そして使用人達の視線を一心に浴びてわたくしは一つのゲーム、それも乙女ゲームを取り出す。
そのパッケージには様々なイケメンが描かれた真ん中にヒロインである女性のイラストが描かれていた。
「それは、この乙女ゲームっ!『ずっと君だけを見ている』という乙女ゲームですっ!!」
「え?それマジで言ってんの?」
「はい、解散解散」
「ちょっ!?話を聞く前に帰ろうとしないでよっ!?」
「お母さん、流石にそれは無いわ」
「娘だけは味方でいてぇぇえっ!!」
そして何とか私の人徳が功を奏したのか何とか使用人皆足を止めてくれ『一応聞くだけなら只だから聞いてこのバカをスッキリさせやろう』という表情をして上げた腰を下ろしてくれる。
………人徳だと信じたい。
「ま、まぁいいでしょう。そして皆の疑問も分かります。乙女ゲームがどう影響しているのかと、遊び半分で語るのならば帰らして頂くと思ってしまうその気持ちも分かります。では何故私がこの乙女ゲーム『ずっと君だけを見ている』をバイブルと言ったのか。まずはこの登場人物から説明して頂きましょう」
そして何とか皆が私の言葉に真剣に聞き始めた所でこの乙女ゲームの登場人物を一人一人キャラクターの背景も含めて説明していく。
「まずこのヒロインであり主人公である平民の娘なのですけれども名前がアリリスといい、産まれつき魔力量が一般成人と同等の保有量を持って産まれて来ます。その彼女ですが両親は幼い頃に共に病死し、教会で育てられる事となるのですが、この教会の司教様が魔術学園の卒業者であり、アリリスの高い魔術センスを見込んで王国立魔術学園へ推薦状を書いてくれたおかげで魔術学園へと通い始める所からこの乙女ゲームの物語は始まります」
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