第105話そして気付く
『あっ、こらっ!そんなに引っ張らないで下さいましっ!もうわたくしはヘトヘトで御座いますわっ!?』
そしてわたくしは男の子に当然の様に引っ張られて走る様にオモチャが売られているという場所まで向かうのだが、目的のお店であろう近くに来た時、男の子はわたくしの手を急に振り払うと全速力で走り出すではないか。
「あっ、こらっ!」
わたくしは男の子を見失わない様に走って付いていくと、その先には男の子のご両親だと思われる二人の男女の姿があった。
母親であろう女性は身振り手振り興奮しながら恐らくわたくしとの時間を話しているのだろう男の子に向かって一瞬怒っているような悲しい様な表情をした後お叱りの言葉であろう内容を叫ぶと男の子の頬を叩き、ギュッと抱きしめる姿が目に入って来る。
そして男性の方はわたくしの所までくるとペコペコと頭を下げて仕切りに『わざわざすみません、息子を見てくれてありがとうございます。やんちゃ盛りなもので』と意味は分からないのだが男性の表情と動きから感謝と謝罪をしてくれているようである。
そんな男性に「気にしなくて良いですわ」と返すと今度は『せんきゅーせんきゅー』と返して来る。
その後、先ほどまで母親に叱られて泣いていたとは思えないほどの笑顔でこちらに手を振って来る男の子と、仕切りにぺこぺこと頭を下げながら歩き始めるご両親手を振り返して見送る。
そんな男の子を見て『普通の家庭』というものを垣間見れた様な気がした。
今思い返せばわたくしはお母様から『わたくしの為に叱ってくれた』記憶はなく、基本的には殿下の為、未来の王妃としてしか叱られた記憶がないし叩かれる時はいつもムチである。
それと同時に母親曰く手で叩くのは叩かれるよりも手が痛いからムチに変えたのだと一度言っていた事を思い出す。
そしてお父様は例えそれがお気に入りの駒としてしか思っていないとしても、わたくしが悪い事をすれば怒ってはくださり、可愛がってはくれていた様に思うのだが、先ほどの父親の様に『わたくしの為に頭を下げる』という事をしてくれた記憶など一度もない。
記憶にあるのは侯爵家という権力を使って握り潰す光景ばかりである。
そしてわたくしは旦那様とあの男の子の様な家族を作っていきたいと強く思う。
あれ?旦那様?
それと同時に男の子の親御さんを見つけて安心したのか思考の視野が徐々に広がっていき、そして気付く。
今度はわたくしが迷子になっているのでは?
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やっとタイトルの悪役令嬢について回収して行きます_(:3 」∠)_
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