第100話買ってくれますよね

「どうした?シャーリー。顔が赤い気がするが体調が悪かったら我慢せずにちゃんと言うんだぞ?」

「い、いえ。体調が悪いとかでは無いのでお気になさらず」

「ならば良いのだが」


そしてそんなわたくしの変化に旦那様が気づいて気にかけてくれる。


それだけで心がどうにかなってしまいそうな程、先ほどとは少し違う、けれども同じ様な感情の部類にはいるであろう感じた事の無い嬉しさが込み上げてくるのだが、それと同時に明らかに子ども扱いをしてくる旦那様の態度にまたもや何故だかもやっとしてしまう。


嬉しいはずなのに何故だか素直に喜べない。


そんな感じた事の無い感情に、もしかしたらわたくしは病気になってしまったのかもしれないと今度は不安になってくる。


そんな事を考えながら、旦那様と手を繋いだまま気が付けば『うにくろ』へついたみたいである。


そこには所狭しとお洋服が並べられており、まるで貴族御用達の店よりも洗練された内装とお洋服が揃えられていた。


「旦那様っ!旦那様っ!わたくしこれ程お洋服が並べられたお店見た事もございませんわっ!!」


その光景を見てわたくしは思わず童心に帰ったかの如く旦那様をぐいぐいと引っ張って中へ入ると一着一着眺めていく。


「因みに奥方様、これらお洋服は貴族の方たちが通う洋服店と同じく手に取って触り、そして試着室で着替えて着た時の全体の印象とサイズの確認も出来るんですよ?と、いっても奥方様がいつも利用していたであろうお店みたいに店員が側について至れり尽くせりサポートをしてくれる訳では無いのですけれども近くにいる店員さんが近くで見守っているので困った事、分からない事があれば聞く事も出来ますよ…………日本語の習得が必要なんですけどね」

「て、手に取り触って、そして試着して良いんですのっ!?あ、あぁ、どうしましょうどうしましょうっ!?このようなお洒落なお洋服など今まで身に着けた事が無いものですから、試着するだけでも心が躍りそうですわっ!!」


そしてわたくしはルルゥの説明で興奮してしまうのだが、ある事に気付いてしまうと一気に興奮していた感情がしぼんでいく。


「で、ですがわたくし、お金持ってませんわ。買わないのに触ったり、ましてや試着など怒られますわよね………」

「そんな事ならば悩まなくても奥方様が気に入ったお洋服であれば旦那様がドドンと買ってくれますよっ!!」

「おい、流石に量を買うと────」

「旦那様が買ってくれますよっ!!」

「いやしかし物には限度────」

「買ってくれますよねっ!?」


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