第99話頬が緩んで行くのが分かる

「そこは冗談だと言っても良いんですよ?ミヤーコ」

「本気も本気。冗談抜きでやるつもりだったけど?」

「まぁ、この流れだとミヤーコは被害者だから無罪、ルルゥだけ強制送還だったな」

「旦那様までっ!?」

「もう、恥ずかしいって言ってるでしょお母さんっ!!良いから早くウニクロに行こうよっ!」

「それもそうだな。いつまでも立ち止まる訳にはいかないからウニクロに向かうとするか」


そしてわたくしの中でもはや恒例となり始めている仲のいいコント風のやり取りを一通りした後にララちゃんが痺れを切らしたのか早く『うにくろ』へ向かおうと言うと、それを号令に皆で『うにくろ』へと向かう。


それにしてもすれ違う人、すれ違う人皆お洒落な人ばかりで何だか今までのわたくし達貴族が話していたお洒落の話が薄く思えてしまえて来る。


そして皆、独創的かつ、かといて変では無くむしろ『すっごくお洒落な普段着』と思えるお洋服を着ており、本当にこの様な先鋭的なデザインのお洋服が銀貨一枚で一式揃える事が出来るのか、そしてこれ程の人数が買える程のお洋服が流通出来る程の人数のデザイナー及び仕立て屋さんがいる事が最早驚愕であるし、何よりも皆明らかに『新品』を購入して居るであろう事である。


旦那様曰く『にほん』には貴族がおらず皆平民であるという事であるのだがそれでもお金持ちとそうで無い者に別れるのが世の常、その為ここに見える人々その全てが皆が皆お金持ちでは無いであろう。


であるにも関わらず皆着ている服が真新しと思える程に綺麗なのだ。


そんな事を思いながら旦那様と手を繋ぎ目的地であるウニクロへと向かって行くのだが、何だかわたくしが皆に見られている気がするのだが気のせいであろうか?


そして着物を着ているのはわたくしだけである為、目立ってしまっているのだろうか?


「あー、まぁ確かに着物だけだと偶に見る程度の感覚で恐らくここまで注目される事はなかったのだろうがシャーリーが綺麗過ぎるから皆が足を止めるんだろう。言い換えれば皆着物ではなくシャーリーに見惚れてるという事だな」


その疑問を旦那様に聞いてみると、着物ではなくてわたくしが綺麗だからだというではないか。


そう言われた瞬間、今まで言われて来たどの『綺麗』というわたくしを称賛して下さった言葉よりも比べ物にならないくらい嬉しいと思ってしまう。


そして嬉しさのあまり思わず嬉しすぎて悶えそうになるのをグッと堪えるという苦行を耐え、何とか凌ぐのだが『綺麗』と旦那様に言われた時の事を思い出すたびに胸がきゅうきゅうと染付け、嬉しさが込み上げてくと頬が緩んで行くのが分かる。

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