第98話旦那様を独り占めしたいという欲求
◆
「わぁーーーっ!!」
「ふふふふふ、凄いでしょう、奥方様」
「す、凄いですわ。正直想像を遥かに超えて凄いですわ」
この『いーおーん』という建物の中にはいると自分が想像していたものよりも何倍も洗練されお洒落で、そして広大な敷地にこれまたお洒落な人々がお洒落な店々へと出入りしている光景が目に入ってくる。
そんな光景に思わず声を上げてしまうのだが、その姿を見たルルゥがまるで自分の事の様に胸を張って「凄いでしょう」と聞いてくるので感情をそのままルルゥへ返す。
「このイーオーンは私も初めて来た時もそれはもう興奮した事を昨日のことの様に思い出しますね。ちなみにミヤーコは恐怖から旦那様に慣れるまでしがみ付いていたんですよ?」
「ちょっと、ルルゥさんっ!!それは奥方様には言わない約束ですよねっ!?今私はきっと奥方様には『出来る大人の女性像』がインプットされているはずですからルルゥさんのせいでその『出来る大人の女性像』が崩れてしまったらどう責任を取ってくれるのですかっ!?」
「どうせいつかボロがでんだから少しくらい良いじゃない、ミヤーコ」
「良くないっ!」
「お母さん最低ー」
「ララまでっ!?そんなっ、お母さんを裏切るつもりなのっ!?」
あぁ、いつもの和やかなシノミヤ家の雰囲気で大分興奮は収まって来たのだけれども、それでも未だに興奮し続けているくらいには衝撃的な光景であるのだ。
ミヤーコが旦那様へ慣れるまでしがみ付いてしまうのも分かる気がする。
でもなぜかそれと同時に旦那様を独り占めしたいという欲求が出て来て、思わず旦那様の手を少しだけ強く握ると、旦那様も少しだけ強く握り返してくれる。
その事が何だか無性に嬉しくて、『いーおーん』の光景をみた興奮すら旦那様が握り返してくれた嬉しさが上書きされて行く。
「別にその程度の事でミヤーコさんの評価が崩れたり致しませんわ。ミヤーコさんはわたくしの中で『出来る大人の女性』のままでしてよ」
「あぁ、流石奥方様でございます。どこぞの羊娘とは訳が違いますねっ!!その帽子をとって日本で見せる事を禁止にされている羊の角を露わにさせ、怒れる旦那様により強制王国送還にしてやろうかと思っていたんですけど、奥方様の手前今回ばかりは許してあげましょうかね。ほら、私は大人の女性ですので心の器は大きいのです」
「さらっとドギツイ事をぶっ込むの辞めなさいよ。本気か冗談か分からないじゃない」
「え?本気でしたけど?」
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