第74話一つ忘れ物をしておる

「貴様等こそ無礼では無いかっ!未来の国王に対してその態度っ!覚悟してぐぼへっ!?」


そして俺は未来の国王たる俺の命令を一向に聞く気配どころか言うに事欠いて父上に侮辱していると言うでは無いか。


どう見ても未来の国王たる俺を侮辱している父親の方が侮辱罪が適用される筈であるにも関わらずである。


そんな事が許される筈が無い。


故に俺はこの衛兵達の立場を分らせようと、未来の国王に対してのその無礼な態度に吐いた侮辱をその身でもって償わせようとしたその時、俺の腹に感じた事のない衝撃が背中へと突き抜け、余りの痛みと衝撃に胃の中を吐き、のたうち回る。


「この老骨の動きすら追えず懐に潜られただけで無く反応すら出来ず腹を殴られ、それだけならまだしもそのダメージすら耐えきれず吐き、殴られた事すら理解出来ず自分の吐瀉物の上でのたうち回る…………我が息子ながら、いや我が息子故に実に、実にみっともない」

「ぐぎぎ………っこのクソ親父………この俺様に暴力を振るって、タダで済むと思うなよ………っ!!」


そしてこの俺が床でのたうち回る原因が父上であると知り怒りで目の前が真っ白になるも身体は痛みで未だ動く事が出来ず座る事すらままならない。


「ほう、それでもまだその目を出来るのだけは褒めてやろう。しかしながらそれができるのも王族と言うバックボーンがまだ自分にはあると思って疑わないその姿は実に滑稽であるな。今自分が縋っている物がもう何の意味も持たないガラクタであると知った時、本当の意味でお主の人生が始まるのやも知れぬな」

「な、何を言って───」

「もう良い。コイツを隣町にでも捨ててこい」

「「はっ!!」


一体この老害は何を言っているんだ?


そう聞く事すら出来ず、俺は縄で縛られて衛兵に引っ張られながら連れて行かれる。


それと同時に俺は強く、強く思う。


絶対この老害に復讐をしてやると。


ただ殺すだけでは生温い程の復讐を。


その為には先ずはシャーリーが必要である。


全くもって気の利かない女なのだがこの俺の役に、それも復讐の役に立つのだから泣いて喜び感謝する事であろう。


「覚えておけよこのクソ野郎共っ!!絶対復讐してやるからなっ!絶対にだっ!!」

「フン、それだけ元気ならば平民でも十分生きて行けそうで安心だな。しかし馬鹿息子よ、一つ忘れ物をしておるから今渡しておこう」

「きゃぁっ!?痛いっ!!」


そして老害は俺へ冷やかな目線で馬鹿にする様に言葉をかけて来た後縄で簀巻き状に拘束されている何かを衛兵へ命令して投げ渡して来るでは無いか。

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