第73話侮辱であると判断してもよろしいので?

「ち、違うのです父上っ!!」

「何が違うと言うのだっ!!」

「ひぃぃぃいいっ!!」


余りな物言いに何も学んでいないという事は誤解であるという事と、この俺をまるで無能であるという様な表現に思わず怒りの感情を抑えきれず叫ぶように言い返してしまったのだが、父上から怒鳴り返されてしまい、その迫力に思わず尻餅をついて後ずさりをしてしまう。


「王位継承権の剥奪だけで許そうと、時期が来たら僻地に飛ばしはするものの王族として多くを望まなければ何不自由なく過ごせるだけの待遇は残してやろうと思っておったが、お主にはそれでも生ぬるかったようだ。本日付で王族の証でありこの国の名でもある『グラデリア』の名を剥奪する。今この時よりお前は我が息子でも王族でもなくただのシュバルツとして生きよ」

「ち、父上………何を言って………?」


一体この目の前でふんぞり返っている無能は何を言っているんだ?この俺を王族から外すと言っているのか?バカなのか?流石にいくら何でもそれはあり得ないだろう?いや、そんな、馬鹿な、この俺がこんな無能の老害の一言で?


「何を呆けている。この地下室も本来であれば災害時や戦争時に貴族や王族が使う部屋であるのだぞ?ただの平民がいつまでも居て良い部屋ではないっ!さっさと出て行かぬかっ!!」

「貴様っ!!無能の癖に偉そうにっ!!今までは父上という立場であるから下手に出ていたというのにこの俺の恩を仇で返しやがってっ!!おいっ!!衛兵達よっ!!この者を捕らえよっ!!こんな無能で老害に仕える必要はもうない。俺が次期国王となりこの老害は王族という立場を剥奪の上牢屋にでもぶち込んでやるから迷う必要も無いぞっ!!おいっ!!どうしたっ!?今ここでこの無能な老害を捕えればもうそんな者から命令される事も無くなるのだぞっ!?さっさと捉えよと言っているんだよ使えない奴らだなっ!!」



「それは王家、それも現国王様に対する侮辱であると判断してもよろしいので?」



この俺の前に立つ老害がこの俺を平民呼ばわりするというあまりにも無礼な物言いに遂に俺は我慢できずに怒りのまま怒鳴り散らし、この国の癌でしかない無能な老害を捕らえよと衛兵たちに命令をするのだが一向に動く気配も見せないではないか。


その光景にしびれを切らして再度目の前の無能な老害を捕えよと怒鳴ったその時、一人の衛兵が発した言葉がやけに鮮明に聞こえてくる。


この者は一体何を言っているのだ?


王族は俺で、次期国王は俺で、目の前は無能な引退間際の老害であるのならばなぜあの衛兵は怒りの表情を隠そうともせず俺に向かって発言したのか?

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