第2話 再会

 就職が決まった俺は、地元から車で約4時間半

離れた札幌に近い街で仕事をしていた。


 社会人としてのスタートは可もなく不可もなく

と言った感じか。

 ただ、その頃趣味であるものを作っていた時に、

とんでもない発明をした。

 動物や人の意識だけを過去の身体に飛ばし、

一時的にタイムスリップを可能にする機械だ。

SFチックだか、いわゆるタイムマシンという

やつだ。

 しかし、ありえない空想ばなしで終わってしまう

気がして、この発明を公に出すことはなかった

のだが。


 しかし、社会人になってからいくらか経ったころの俺は、少し心を病んでいた。

 学生から社会人になり、変化していく自分の周りの環境に対応しきれていなかったのもあったし、

まぁ、とにかくなごみに会えないとういことが、何よりも辛かったんだが。


 そんな中で俺は、今の妻と出会うことになる。

友達の友達ということで知り合った、札幌の女性

だ。


 なごみの事が頭から離れないままではあったが、

心が弱りきっていた時期に、支えになってくれた

妻の事は愛していた。

それなりに恋愛し、付き合って2年の頃、プロポーズをした。


 順調に結婚の準備をしていた頃、突然、SNSを

通じて、こんなメッセージが入った。

 「たもつ!元気??

  私だよわかる(≧∀≦)!?

  たもつの連絡先変わってたからさ、

  色々探してこっちからメッセージしてみた^ ^」


 なごみだった。


 嬉しかった。


 このメッセージを見た時は正直泣きそうに

なった。


 俺の頭の中で、メッセージをそのまま言葉に

している、なごみの姿が浮かんでいた。


 いつもの元気でかわいい声。

 いつもの嬉しそうな笑顔。

 俺と2人で過ごしている時の、なごみだ。


 とにかく会いたくて。会いたくて。

なごみは今度、地元からこっちへ遊びに来ると

言うので、早速会う約束を取り付けた。


 婚約をしていた今の妻と俺、なごみの息子となごみの4人で遊びにでかけた。

 妻には俺の親友のなごみ!と紹介した。

 2人きりだった以前とは違うけれど、お互いの

家族と一緒に過ごすのもそれなりには楽しかった。

 昔のたもつはこんなやつだとか、今のたもつは

こんなやつだからどうだとか、妻とも仲良く

なってくれたようだ。

 ふと帰り際、なごみの顔を覗いてみた。

いつもの笑顔だ。

 最後に会ってから5年程経っていたが、

相変わらずかわいいな、なんて思っていた。


 だけど、どこか淋しげな顔もしていたと思う。

 その意味もわかっていたけど、その時の俺は

何も言えなかった。


 その後は家族ぐるみで会うようになり、

やがて、なごみも2回目の結婚をした。

 その頃にはなごみとは、親友であり、兄妹のような存在でもあるなんとも微妙な関係になっていた。

 実は結婚を報告してくれた時は、今度の相手は

大丈夫かなと心配していたんだが、それからみんなで会うたびに、イイヤツだ、なごみを任せても

良さそうだと思うようになっていった。


俺自身はというと、仕事を変え、昔から

やりたかった車関係の仕事についたりして、

最終的に地元に戻り新しい仕事を始めた。

その間に、俺にも2人の娘ができていた。


 とにかく、なごみとの関係はそんな状態のまま

続いていった。

 気がつけば俺となごみが出会ってから、

もう17年が経っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る