17年越しのラブレター

柏屋 纒

第1話 出会いと別れ


 俺の名前はたもつ。

先月32歳になったごく普通のサラリーマンだ。


 25歳の時に結婚した妻と、2人の娘がいる。

パッとしない俺だったが、なんだかんだ歳をとって

家族ができた。

 新卒で就職した会社を勢いでやめてしまった

こともあったが、何度かの転職の後、ようやく安定した仕事に就くこともできた。


 この話は、そんな俺がこれまで秘かに想い続けて

きた、ある恋の話だ。


 高校生の頃、

 そうあれは、16歳になる年の夏の頃だ。

俺は生まれて初めて一目惚れをした。

 相手は地元である道東の同じ学校、別のクラスの

同学年で、俺と同じ中学出身の共通の友人に

連れられて、校内で紹介された。

 俺は、一目見た瞬間から彼女に心を奪われ、

目が離せなくなったのを覚えている。

 彼女の名前はなごみ。

 なごみは、背が高くない俺と比べても

かなり身長が低くて、小動物みたいに懐っこい、

とにかくかわいい女の子だった。


 初めて会ってからというもの、お互いに

惹かれあっていた俺たちは常に一緒に過ごしていた。

 工業系の高校と短大が一貫の学校で、

女子の数が少なく、しかも人気者のなごみと

ベタベタするのは目立ってしまっていたが、

そんなことも気にしないくらい彼女が好きだった。


 でも、2人は付き合っていたわけではないんだ。

 在学中のその間一度も。


 お互いを想い合っていることは、言葉にしなくても感じていたし、2人ともその気持ちが行動に出て

しまっていたと思う。

 ただ、俺にも彼女にも、それを相手に伝える勇気がなかった。

 俺はあまりになごみが好きだったし、なごみも

同じように俺を想ってくれていた。

 だからこそ、想いを伝えて、もしもフラれて

しまった時のことを考えると、踏み出す勇気が

出なかった。


 学生だったその期間は、2人とも別の誰かと

付き合うことがあった。

 どちらかに恋人が出来ると、どちらかはその寂しさや悔しさを掻き消すために違うタイプの誰かと

付き合った。

 今でもバカなことしてたと思う。


 ただ、俺となごみのこの微妙な関係は、ある時に

一度、終わってしまうんだ。


 ことの始まりは2人が18歳のとき、初めて会ってから3年が経つ頃だ。


 ある時なごみが相談だと言ってこんな話を

持ち出してきた。

 「たもつ、あのね、私今日前の彼氏に呼ばれて

  ファミレスでご飯食べに行くんだけどね?

  なんか、よりを戻したいとかなんとかで。。

  行っていいと思う??」

 俺は複雑な気持ちだったが、なごみが後押し

して欲しくて言っているんだと思っていた。

 「お、いいんじゃない^_^!

  結構長かったあの彼氏でしょ??

  相当お前のこと好きだなwww」

 完全に心にもない事を言ってしまったが、

その時は例によって俺も彼女を作ってしまっていて、

無理矢理なごみのためと思って気持ちを誤魔化した。

 「そっかぁ、そうだね(>ω<)!

  それがいいのかも(>∀<;)!!」

 なんだか、なごみの表情が浮かない。。

 「じゃあたもつも賛成してくれてるし、

  今日は行ってみることにするね(∀;)、、!」

 なごみは笑顔だけど、すこし涙を流した。

 「なごみ、どした??汗」

 俺にはなごみがなんで泣いているのか

分からなかった。

 「んーん!大丈夫( *`ω´)。!!

  じゃあ、今日は一緒に帰れないけど、、

  行ってくるね!」

 そう言って、その日は別々に下校した。

 何ヶ月かぶりだったと思う。


 一年ほどして、なごみが妊娠した。

 相手はあの時よりを戻していた彼氏で、

ドタバタだったがそのまま結婚した。

 この年はなんとなく、ソワソワしたまま一年を

過ごしてしまい、俺は留年が決定した。


 結局その後、なごみの結婚生活は長くは続かず、

旦那の浮気が原因で一年で離婚した。


 俺はこの頃もまだなごみのことが好きで、

彼女もいなかったこともありまた一緒に遊ぼう、と

なごみを誘うことが多かった。

 ただ彼女は、前の旦那との子供がいること、

離婚したばかりであることを気にして、誘いを受け

てくれることはなかった。


 結局、なごみの離婚後はあまり会うこともなく、

俺の地元外への就職が決まり、いつしか連絡も

とらなくなっていた。

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