第5話 お婆ちゃん、村を作る2

 

 それにしても、土魔法は便利だ。


 お婆さんは、予定した場所の木々の伐採を終えると、土魔法で残った木の根を次々に掘り起こしていく。


 それをゴーレムが片付けて、使い勝手のいいサイズの薪へと変えていく。


 木の根がなくなると、お婆さんが魔法で平らに均す。


 やがて、塀で囲まれた村の周りを中心にその何倍もの面積の平地が出来上がった。




 そして、お婆さんの魔法によって、泉からの水路と地中の排水管が作られ、そこを挟むように小さなドーム状の家が、作られた道の両脇に整然と建ち並んでいく。


 間取りは道の西側が3LDK、東側が2LDKに統一されている。


 どの家にも小さな倉庫と畑にもなる庭付きだ。


 先のことを考えて、村の入り口近くは、店舗付き住宅にした。


 何を売るかは住人次第になるが、きっと栄えていくものだと思う。


 村の一角の建物は、食堂にも使えるように配慮したので、ゆくゆくは繁華街になるはずである。


 店舗横には、宿泊施設も準備した。


 もちろんドーム型であるが、食堂や洗い場以外に細長く中に多くの細かい部屋が仕切られている。





 お婆さんが、村の再生作業を始めてだんだん新しい村の形が見えてきた。


 お婆さんが街づくりをどこで学んだのか知らないが、作業が手際よく進んでいく。


 どの家にも泉の水が生活用水として引かれており、水が家を抜けると、そこから下水としての排水管へと流れていく。


 最終的に集まった排水は、お婆さんによって作られたビオトープで浄化され、川へと合流するのである。


 お婆さんはさすがに虫対策まではしなかったが、そこは住民がどうにかするだろう。




 家の分配は、お婆さんが村長に丸投げした。


 人口が増えるのを見越して多くの建物を余分に作ったから今なら好きなところを選び放題である。


 この大きなドームに作ってみた水洗トイレは、村人たちに好評だったので、全ての家に備え付けられた。


 各家に引かれた泉の水は村の中心に湧き出たばかりだから、飲み水としても問題ない。





 お婆さんは、村の隣に同じように塀で囲んだ農地も作った。


 そこには農業用水としての水も流したし、農地を囲んだ塀の一部を村と繋げたので、上から見ると瓢箪型だが、使い勝手はいいようだ。


 そうやって整備しているうちに、村は大きくなっていき、最終的には、瓢箪型から真ん中の丸い居住地を囲む花びらのような村になってしまった。


 それぞれの花びら部分が、畑や牧場、果樹園、霊園と多彩である。


 もちろん、中心部が村の居住区である。


 霊園を作ったのは、白ヒヒによる犠牲を忘れないためにも、村人達の霊園を欲する要望が強かったためであった。


 この村開発の途中で、白ヒヒを解体して売った収入もあり、村の備蓄食料やこれから育てる予定の作物のタネもたくさん購入できた。


 最初の大きなドームが、水源地と村の寄り合い所兼倉庫として使われている。





 そして、村の出口には、役人用の宿舎と訓練施設も用意した。


 兵士の訓練には、この辺りの魔獣や魔物駆除が役立つだろうから、お婆さんが街に戻って、ここの領主に掛け合うつもりだ。


 もし、そうなれば治安の心配はなくなるし、断られれば自警団養成所としての利用も考えている。


 野獣や魔物による村周辺の危険が排除されればここに移住する者も増えるだろう。


 それに、この辺りに詳しいこの村の住民を領民として登録し、森の開拓最前線にすれば、領地はますます発展するだろう。




 もし、領主がこの条件を呑まなければ、お婆さんは、帝に頼んでこの辺り一帯をお婆さんの私有地にすればいいだけだ。


(この国には貸しがあるからね)


 お婆さんは、悪い笑みを浮かべていたが、それは村人の幸せを願っての事でもあった。


 それからお婆さんは、馬車2台が余裕ですれ違う幅で、まっぐに街まで木々を取り除いて道を作っていった。


 道の断面はかまぼこ状で、水が溜まらないようになっているし、道自体がドームの家のように固く固められており、一定区間に馬車専用の休憩広場も作ってある。


 そこの広場には、区画ごとに馬を繋ぐ棒が立てられ、その横に大きな半球状のドームがあるので、隊商ごとに雨避けもできる作りだった。





 町ではすでに突然出来上がった道に驚いて人々の噂になっているが、町の役所が衛兵を置いて街人が迂闊に近づかないよう管理されている。


 そこに慌てたように駆け付けた領主の使いが現れた。


 何でも急ぎの調査らしく、町長もこれを急いで迎え入れ、共に村の調査に訪れたらしい。


 役人たちは、数々のドームが立ち並んだ村の作りにも驚いていたが、領地の町から伸びた最初に道の作りに驚いたらしい。


「私が少し領主を脅しておいたからね。こうなるとは思っていたよ」 


 お婆さんは、どこ吹く風だ。


 



 そして、当然のように別れがやってくる。


「ここまでしていただいて、良いのですか?魔女さまには何のお礼もできないのに・・・」


「私が勝手にした事だよ。気にしないで。それに私、魔女じゃないし」


「いえいえ、私たちは魔女さまだと信じていますよ。お陰様で、領主さまから村として認められましたし、私たちも領民として扱われています。心配していた物の取引も、領主様の派遣した商人に任せることが出来ました。どれだけ感謝してもしきれないのですが、こちらには魔女さまに渡せるものが無いのです」


「いいよ、いいよ。さっきも言ったけど、気にしないで。単なる私のお節介なのさ。これからたまに様子見に来るけど、その時に村が発展していたら嬉しいかな」


「そんな事でよければ助かります。村の隣に領主様の兵士もやってきたし、移住の問い合わせが絶えませんので、絶対に今より発展はしているでしょう。その時にお礼をしますね」


「本当にもういいってば。じゃあ行くね」


「ありがとう」


「さようならー。体に気をつけてー」


 口々にお礼を言う村の人たちに見送られて出発するお婆さん。


 お婆さんを乗せたホウキは、すごい速度で森を抜けていく。


 次はどこに向かうのだろうか?





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