第4話 お婆ちゃん、村を作る


「魔女さま。どうやって退治したの?」


 昨日の少年が、お婆さんに尋ねる。


「なあに、少々知恵があっても所詮は魔物。興奮したら見境なくなるの。白ヒヒが、開けられないドームを開けようとしてイライラしはじめたから、昨日作った地下道を通って門の横の小さなドームから外に出たのよ。そして、跳ね橋をを上げ、ヒヒが村から出られない様に閉じ込めた」


「それで?」


「その時も、白ヒヒたちは必至にドームを壊そうと躍起になっていて、私の存在には気が回らないから、そこまでは簡単だったわ。それから私は、起爆装置を作動させて避難するところだったのよ。一匹だけ私の存在に気が付いて騒ぎ始めたのだけど、ちょうどその時にドームの外に取り付けた爆弾がいっぺんに爆発したの・・・」


 お婆さんが、ここまで説明してつばを飲み込む。


 見た目ではわからないが、戦いの興奮がまだ冷めてないらしい。


「あの爆音と地響きはそれだったんだね」


「かなり丈夫に作ったから、ドームの中に被害はなかったでしょ」


「うん。ビックリして子どもが泣き叫んだくらいかな」


「それはすまなかったね。それで爆発に巻き込まれたのが、あの体半分吹き飛んだ白ヒヒ。その時一緒に放った風魔法で足を切り落としたのが、あそこの白ヒヒよ。アイツが私の存在に気が付いたの。白ヒヒは、足の血管が太いから、そこを斬られると数分と持たないわ」


「へぇー。そうなんだ」


「あとは、爆発音でパニックとなり、森に逃げようとして塀を飛び越えて掘りに落ちたのと、落とし穴に落ちたので終わりよ。塀のの向こうは見えないから飛び越えたら串刺しになるのが一瞬の事ね。ついでに毒も塗ったから、槍の刺さりが浅くても致命傷になるのは間違いないわ。たとえ知恵のある魔物として怖れられても、冷静さを失えば、予め用意された罠にも簡単にかかるものなのよ。狩りにも使えるから覚えておくといいわ」





 そこに、村長が近づいてきた。


「魔女さま。本当にありがとうございました。なんとお礼を言って良いのやら」


「感謝するなら、この少年と、神様のくれた偶然ね」


「町の役所では、誰も俺の相手をしてくれなかったんだ。もうダメだと思ったよ」


「それもあるけど、私がやりたい事は違うのよ。とりあえず、片付けましょうか?白ヒヒの毛皮や牙は高く売れるし、肉が傷まないうちに解体しないと食べられなくなっちゃう」


「えっ?食べられるのか?」


「白ヒヒの肉は美味しいらしいわよ。部位によっては栄養価も高いからその分高値で取引されるし。干し肉用などこの村で食べる分を取り分けたら、町へ売りに行きましょう。私の知っているところで高く買い取ってくれるはずよ」


「それは魔女様が倒したのだから村で貰うわけには・・・」


「そんな小さな事気にしないでよ。それよりも、この村をもっと整備してもいいかしら」


「元々、整備されていないから、お婆さんの好きなようにどうとでもしてください。でも、勝手に整備するとなると・・・土地は領主様のものでは?」


「今までも勝手に住んで開拓してたのでしょう?何を今更。それに、森を切り開いて整備すれば、村も増えるし税収も増える。結局は、領地のためにもなるのよ」


「そうですか。それなら私たちはどうすればいいでしょうか?」


「今まであなた達が住んでいたほったて・・・。エヘンッ、小屋は雨も打ち込むし、隙間風が入って大変でしょう?あのドームみたいにしたらダメかな?みんな同じ間取りになるけど」


「それは構いませんが、良いのでしょうか?」


「俺は断然その方が良い。トイレが家の中にあれば、夜中は便利だし」


 少年は賛成の様だし、集まってきた人たちからも否定的な意見はない。

 まあ、気に入らなければ、そこに住まなくてもいいしね。





 村長への確認が済むと、お婆さんは、村の周り一帯の木々を魔法でなぎ倒していった。


 お婆さんの手伝いをしているのは、人型の土人形であるが、おばあさんは、これを『ゴーレム』と呼んでいる。


 そしてゴーレムたちは、お婆さんが切り倒した木々の枝を払い、一ケ所に運んでまとめていく。


 かなりの速度で木が並べてられ、上へと積み上げられていくのが不思議な光景だ。


「はあー、魔物を倒したのにも驚いたけど、こりゃまた凄いもんだね」


「おや、村長さんかい。この木の山はこのまま材木として売ってもいいけど、この木が乾燥したら、家具に使うといいよ。それまでは家具を町で購入するんだね。生木を使うと乾燥するにつれて反ってくるから使えないんだよ」


「そうなのですか。今まで、街へ買い出しに行く事があっても、こちらから売るのは露店に対してくらいのものですからね。どうすればいいのか知らないんですよ」


「そのことに関しては、私に考えがあるから少しの間待っててね」


「そうですか...」


 村長は、お婆さんの一言が残念だったらしい。




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