第97話 最後の美味しいもの
次の朝、皆が起きてくるが、何故、一緒の部屋にいるのか、寝ぼけて分からないようだった。と言うか女子が起きた時点でそんな事を言っている状況ではなくなった。悲鳴が鳴り響き、一同はパニック状態になってしまった。
「もう、それならそれで先に言っといてください、若」
「ごめん、ごめん、次はそうするよ、それじゃ、後は任せたよ」
「了解です」
エルガーも捕まえて、問題が解決したフェリクスとアベルは今まで通り、町の様子を見に行った。
「ここでは何か見るものがあるだろうか?田畑が広がっているだけだぞ」
「色々あるよ、ここの土壌、水、作物の種類、後は、どのような方法で農業をやっているかとか、調べるだけなら山ほどあるよ」
「そ、そうだな」
フェリクスからどんどん出てくる知識にアベルは、戸惑いの声を上げる。
「しかし、ここの町以外はほとんど田畑だ、全部、見て回るのか?」
「流石にそこまでの時間は無いから、端と端を見てみようかなと思っているよ、それなら、土壌や水の変化が分かりやすいかなって」
「なら、また、分かれる感じだな」
「でも今回は自分の魔力で魔法を発動させてね、アベル」
「・・・頑張ろう」
「それじゃ、また後で」
フェリクスとアベルはまた、分かれ、町の様子を確認する為、二手に分かれた。
フェリクスは田畑の端の方まで進んでいくと、急に小人精霊が出てきた。
『あっちにいいものがあるよ』
しかし、小人精霊が指したのは田畑から外れた森の方だった。その方向へフェリクスが進んでいくと森の中にポツンと一つ小屋があった。その脇には、小さな畑がポツンとあった。フェリクスが畑に近づくとその脇に椅子を置いて、パイプ煙草を吸っているおじいさんがいた。
「ここに客とは珍しいの」
「私はクレソン商会のフェリクスと言う者です。ご老人はここで何をしているのでしょうか?」
「見て分からぬかの、畑仕事じゃよ」
「何を作っているのか、聞いても?」
「ジャガイモと言う、農作物じゃよ」
ジャガイモと言う名前をフェリクスは聞いた事がなかった。
「それはどう言った、作物なのか、教えて貰ってもよろしいでしょうか」
「そうだの、比較的、誰でも簡単に栽培しやすい芋ぐらいしか、儂には説明できんの」
「誰でも簡単に栽培しやすいと言いましたか?」
老人の言葉にフェリクスは食い気味に質問した。
「確かに言ったの、どうしたんじゃ?そんなに声を上げて」
老人の言葉に、フェリクスはとんでもない価値を見出していた。というのは、誰でも簡単に栽培出来ると言うことは、今から働きたいものにはうってつけ作物である。現在、漁業が主体のこの国では富んでもない価値が生むだろうと。
「ご老人、その植物について商会に来て、色々教えてくれませんか?勿論、報酬は払います」
「儂はここで隠居生活をすると決めているのじゃが」
「なら、ここに商会員を連れてくるのでその植物と育て方を教えて頂けますか?」
「まぁ、それぐらいなら、いいかの」
「わかりました、至急、人を来させますのでよろしくお願いします」
「そんなに急がんでも儂は逃げはせんよ」
フェリクスは老人と約束を済ませると、イヤリングで遠話の魔法を知らせ、この事を父ダルクにすぐ伝えるのだった。それが終わるとフェリクスは、アベルと合流する為、町に向かうのだった。
町でアベルと合流するとフェリクスは帝都に戻ると言った。
「また、えらく急だな、田畑の話はいいのか?」
「今はそれがどうでも良くなるぐらいの事が起こったから、一回、帝都に戻ることにするよ」
「それはまずい事態なのか?」
「いや、良い事だよ」
「それなら良かった、最近は悪い事が続いたからな」
「まぁ、そうだね」
「フェリクスがそんなに急ぐと言うことは、よほど良い事なのだろう」
「地方の事もここで大体終わったし、これから忙しくなるよ」
「お前が忙しいと言うと末恐ろしく感じるな」
それから2人は帝都に戻り、本来の王子がやる仕事と副会頭がやる仕事に追われることになった。フェリクスが見つけた3つのものによりクレソン商会は着々と出した出資を取り戻していたが、そこに驚きの報告が入ってくることになる。
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