第98話 病気
病人が出たとの報告だった。しかもそれは、主要な町の所で大勢出たとこの事だった。
「医者と薬の手配はしておく、まずは商会員と連絡を取れ、病人が大量に出たということは感染症の可能性もある、くれぐれも注意を怠るな」
フェリクスは指示を出しつつも少しだけ違和感を覚えていた。それはこの復興最中のこの国に病気が流行るとはタイミングが良すぎた。その事をフェリクスはダルクに言ったが、反応は淡白だった。
「確かにお前の懸念も分かるが、そう判断するには材料が少なすぎる、もし、本当に病気が流行っていたら、取り返しがつかん、他のする事が無いなら、この国の過去の記録でも遡ってみたらどうだ?」
ダルクの言う通り、感染症の危険があるなら、フェリクスは医者や薬の手配ぐらいしか、やる事がない。フェリクスはダルクの助言に従い、城にある記録保管所に来ていた。以外にもこの国の記録保管所はしっかりしていて、人口や財産管理などは事細かに書かれていた。
「過去の記録はどんな感じだ?フェリクス」
「誰かと思ったら、アベルか」
「商会の者に聞いたら、ここにいると聞いてな」
「記録に関しては思いのほか、几帳面に書いてあったね、そして露骨に金を抜いている感じだね」
「流石、ディスガルド帝国と言った所か」
「過去の国の広がった病気に関しても流石と言った対応だったよ」
「何が流石、なんだ」
「記録を見ると病気が広がる前に全員を村ごと焼き払ったみたい」
「それはまた、極端だな」
「だから、病気の症状は分かるけど、大まかなよそう
「まぁ、それはどうでもいいんだけど、そのせいで今回、住民に不安が広がるかも知れないのが不安だな」
「まぁ、医者も派遣しているし大丈夫だろう」
「大丈夫ならいいんだけどね」
フェリクスの懸念は当たることになる。状況確認に奮闘している商会員が住民の妨害を受けていると報告が来た。それに対してフェリクスは商会員に住民を傷つけないように注意を行った。そんな問題が発生している中、病気の情報が入ってくる。
「会頭、副会頭、報告します。現状、帝都11人、マニラ町32人、ナウル町112人、タリン町86人、何処の住人も症状は同じで、症状は発熱、嘔吐、腹痛、下痢などです。現在、タリン町では住民が病人を殺せと暴動が起こっているようです」
「報告ご苦労、業務に戻ってくれ」
魔法での報告を切ると、ダルクとフェリクスは話し合いを始めた。
「やっぱり、誰かの陰謀だろ、親父」
「今回の病人の数を見る限り、そうだろうな、しかし、問題は何が、原因かだな」
「帝都とマニラ町が少ないのがカギになりそうだね」
「それから考えると恐らく、口に入るものだろうな、今、帝都の食事は、全部商会が管理しているから、病人が少ないのだろう」
「なら、問題はマニラ町の人数の少ないは何故かって事か」
「それが分かれば、自ずとされた事がわかるだろう、フェリクス、調べてこい」
「だと思った、了解」
フェリクスはそれだけ聞くと転移結晶を使い、マニラ町に設置された転移魔法陣に飛んだ。
マニラ町にフェリクスが着くと商会員はフェリクスの姿に驚きの声を上げる。
「副会頭、何故、ここに病気が移ったらどうするんですか?」
「多分、感染症じゃないから、安心して」
「何でそんな事が分かるんですか?」
「ただの状況から判断しただけだよ、だから、原因を調べに来た。ここの住人が食事をどうしているか、調べて欲しい」
「食事ですか、分かりました、調べてまいります」
商会員はフェリクスの言葉を聞くとすぐに外に出て行った。フェリクスは商会員を待たず自ら町に出て原因を調べ始めた。
町を軽く歩くが、その様子は様変わりしていた。活気に満ちていた港の市場も今ではみんなが静かに買い物をしている状態だった。フェリクスはさらに歩き、住民街の方を見て回った。質素な街並みに塩害対策の為、家の屋根はイネやススキと言った植物で作られていた。そして、脇には何かを貯めるような樽がたくさんあった。その街の様子を確認し終わると、フェリクスは商会の支部に帰って行った。
「あ、副会頭、こんな時にどこ行っていたんですか?」
「ちょっと町の様子を見に行っていたよ」
「はぁ、緊張感が無さすぎます」
「ごめん、それで調べた結果はどうだったの?」
「はい、調べた結果、魚介類を中心に刺身などが多いですね、他だと、商人たちが持ってくる野菜などがあるそうです」
「報告ありがとう、ちょっと俺は考えるよ」
そう言ってフェリクスは建物の奥に引っ込んで行った。
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