第80話  クレソン一家

「あれ、なんだろ?」


小さい子供が村の外で遊んでいると目の前にモンスターの大群が迫っていた。訳のわかっていない子供がモンスターに襲われる寸前、モンスターたちは一気に切り裂かれ、塵となって消えた。


「ここは危ないから、村の中に戻るんだよ」

「うん、分かった、お兄ちゃん」


ヴェルナーが子供の頭を撫でていると、その子供の母親が寄ってきて、子供を抱きしめた。


「もうこの子は心配させて、どなたか、ご存じ無いですが、娘を助けて頂きありがとうございます」

「いえ、気にしないで下さい、それより、今からこの村全体を覆う結界を張りますから村の中で居てほしいと、村全体に知らせて貰うと嬉しいのですが」

「はい、すぐに知らせてきます」


娘を抱えると母親は、すぐに村の中央に走って行った。それを確認するとヴェルナーは探知魔法を使い村人の場所をすべてに確認した。それでまだ村人が村の中にいる事を確認すると村全体に結界を張った。長男、ヴェルナーは剣の達人ではあるが、魔法が全く使えないと言うわけではない。むしろ、普通の魔法使いより使える方だ。


村全体に結界を張り終えると、ヴェルナーは、近くのダンジョンに向かって一直線に移動を開始した。


途中に居たモンスターは漏れなく切り捨てられ、塵と消えた。


かなりの速度で移動している為、ヴェルナーの目の前にはダンジョンがすぐに見えてきた。そのままダンジョンに侵入すると一気に奥まで突き進んだ。一番奥にはダンジョンボスが待ち構えていた。しかし、ヴェルナーは他のモンスター同様、一振りで倒してしまった。


ダンジョンコアが破壊されて事で、ダンジョンの崩落が始まるが、そんなことは気にせず、ヴェルナーは上に向け、剣を振る。それだけで、地上までの一本道が出来た。その道を通って外に出ると、ヴェルナーは次のダンジョンに向かった。


「うわぁ、モンスターだぁぁぁ」

「にげろぉぉ」

「もう、だめぁ」


村人がモンスターから逃げ惑う最中、ロレンツは空から現れた。もうすでに何人か、モンスターに襲われていたが、ロレンツが魔法を発動すると、すべての動きが止まった。


「・・・僕の目の前で好きに出来ると思うの」


また、別の魔法をロレンツが使うと、モンスターたちは消え去り、怪我を負っていた村人も一瞬で元通りの体になっていた。


「・・・防御魔法を張っとくから、後は好きにしなよ」


ロレンツは近くの村人だけ聞こえるように声を発すると村人一人ひとりに魔法が掛かる。魔法をかけ終えるともうそこにはロレンツはいなかった。


次の瞬間にはロレンツはダンジョンの目の前に居た。


「・・・潰れろ」


ロレンツが魔法を発動すると、ダンジョン全体に重力が掛かった。そのまま、重力によってダンジョンにいる生物は、押しつぶされ、塵となった。ダンジョンが崩れるのを確認するとロレンツは次のダンジョンに向かった。


一番広エリアを担当したのはもちろんダルクだった。探知魔法で誰が何処にいるか、確認しているダルクは、ヴェルナー、ロレンツが助け漏れている人たちを魔法で遠距離から防御しつつ、ダンジョンを攻略していた。


「我が息子たちは、まだまだ、詰めが甘いと見える。しかし、久しぶりの骨のありそうな問題だ。早急に片づけるとしよう」


ダンジョンボスをヴェルナーの様に一振りで片づけると、転移魔法を使い、次のダンジョンの場所に移動した。それを繰り返し、ダルクは圧倒的な効率でダンジョンを攻略していった。


結果的にダルクは息子たちと倍以上の差をつけてダンジョン攻略をすることになった。また、生きている人達を誰一人として死なせることはなかった。

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