第78話  秘密兵器

突然、それはレオンハルト国内に出現した。その報告を聞いてフェリクス、アベルは現場へ急行した。そこにいたのは、30メートルはあろうかといった鉄の巨人だった。しかもそれが3体も居た。


「あそこまでデカいと現実味が無いから不思議だな」

「そんな事、言っている場合か」


巨人が出現したのはレオンハルト国の首都アンチテーゼの近くだった。ゆっくりとだが巨人たちは首都に向かっていた。


「あのオオカミと同じ見た目から同じ兵器だと分かるが、しかし、あんなに巨大なもの止められるのか」

アベルは大きさから、何をすればいいか、思考が停止している様だった。

「ともかく、魔法で牽制するぐらいしかないと思うし、城壁で魔法使いを待機させとくのと、市民の避難ぐらいしといてよ」


思考が停止しているアベルの代わりにフェリクスが的確な指示を出す。


「おお、そうだな」

「わかったなら、早く行ってくれ」


まるでここに居たら邪魔になると言わんばかりの言いに周りの兵士は憤りの視線を向けるが、アベルは手で兵士を制す。


「すまない、頼む、フェリクス」

「任された」


それだけ言うと、アベルは兵を率いて、首都に向かった。


移動しているアベルに一人の近衛騎士が喋りかけてきた。


「王子、アイツのあんな言い方、許せません」

「フェリクスはこの国を助けてくれているのだ、文句ではなくお礼を言うべきだ」

「しかし、王子にあんな言い方・・」

「別にフェリクスの主張は間違ってないし、こちらに恩と感じて欲しくないのだろう」

「恩に感じてほしくないですか」

「あいつは恐らく、あの兵器がこの戦争に使われているとわかった時点であいつは一人の力で兵器を破壊することを決めていたのだろう。俺にはあの兵器に関わってほしくないと見える」

「関わってほしくないですか」

「あいつは兵器だと言ったのだ、つまり、我が国もあの兵器の詳細が分かれば、あの兵器が使えるという事だ」

「あいつは我が国にあの兵器を使ってほしくないという事でしょうか?」

「多分、そんな事をしたら、今度は我が国とフェリクスは戦うことになるだろうな、私としてもそんな事は望まん、特にあの兵器の材料が精霊だと聞いたらな」


フェリクスと敵対すると考えただけでアベルにはかなりの寒気を感じた。


「・・・それは陛下が決める事です」

「お前ならそう言うだろうな、今はあの兵器をフェリクスが止めてくることを願おう、我が国にはあれを止められるだけの戦力はない」


逆にあの兵器を使えればと近衛騎士の頭にはそんな思考が頭を過っていた。まぁ仕方ないかと言った感じでアベルはそんな様子を見ていた。


誰しもあの兵器を敵国に運ぶだけで敵国の戦力を削いでくれると聞いたら、それを使いたくなるのも仕方がないだろう。普通の人には精霊など、いないのと同じなのだから。しかし、アベルはあの兵器を使う気には何故か、なれなかった。


フェリクスは巨人の下で巨人を見上げていた。巨人自体は、小さすぎてフェリクスの存在を感知していないようだった。


「しかし、それじゃ、困るんだよね」


物は試しとフェリクスは先頭の鉄の巨人に風魔法を当てた。それにより巨人は後ろに倒れそうになるが、寸前の所で耐え、元の体勢に戻った。


「この規模の魔法であの程度か」


どの程度の加減か確かめたフェリクスはもう一度、風魔法を使い、巨人の右腕を切り飛ばした。盛大な音を立て、何百キロもある鉄の塊が地面に激突した。しかし、すぐにその鉄の塊は、巨人の足に吸収され、巨人は直ぐに腕を元通りにした。巨人はこの攻撃で敵と認識したのか、フェリクスを踏みつぶそうと足を動かした。それを高速移動しならが避け、フェリクスはシルフを呼んだ。


「シルフ」

「はいはい、また精霊武装使うの?」

「いや、まだ使わない、敵が大きすぎて核の場所が分からない」

「なら、どうして呼んだの?」

「今から敵を攻撃するから、少し見ていてほしいんだ」

「見ていてほしい?」

「恐らく、今までの兵器の特性からして、大きく再生しなければいけない時に、核を中心に再生すると思うんだ」

「つまり、敵に攻撃するから、核の場所を探して欲しいってわけね」

「そういう事」

「精霊使いが荒いわね」

「任せたよ」


それだけ言うとフェリクスは魔法を使い全力で攻撃を始めた。もう一度、フェリクスは風魔法を先頭の巨人の胴体を切り離した。そのまま、移動しながら後ろの巨人の足、腕を順番に切断した。そのままフェリクスは巨人を原型が留められないぐらいの攻撃を数分間続けた。


「どう、分かったシルフ」


巨人の再生中、フェリクスは少し離れて見ていたシルフに大声を出して聞いた。


「多分、だけど、核は1体に付き、2個あると思うわ」


シルフはフェリクスに近づきながら、質問に答えた。


「それで核の場所は?」

「頭の所と胸の中心よ」

「わかった、精霊武装をお願い、シルフ」

「わかったわ」


頭と胸だけでもかなりの範囲だが、フェリクスは構わず、精霊武装を手に取った。精霊武装を持ち、そのまま巨人の頭まで駆け上ったフェリクスは、精霊武装に神力をさらに流し込んで巨人を頭から一刀両断した。


しかし、やっぱり、若干、核の位置が違ったのか、巨人は体半分の状態でそのままくっつこうとするが、体を両断したことによってフェリクスには核が見えていた。


巨人の体が再生しきる前に今度は確信を持ってフェリクスは核を破壊した。


他の2体も核の場所は同じだと分かっていたのでフェリクスに倒されるまでそこまで時間は掛からなかった。

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