第76話 情報提供
フェリクスが鉄のオオカミを倒したことにより兵士たちからは今度こそ、大きな歓声が上がった。
「どうやら、礼を言わなければ、いけないみたいだな、フェリクス」
「気にしなくていいよ、アベル」
アベルの事を親しく呼ぶフェリクスに兵士たちから抗議の視線が飛ぶが、アベルがいち早く手で兵士たちを制した。
「俺の友人だ、今は恩人でもある」
アベルの言葉に兵士たちは渋々と言った感じで、引き下がった。
「何か、知ってそうだな」
「話さないわけにも行かなそうだしね」
「ここでは何だし、中で話そう」
「それはありがとう」
アベルの言葉にフェリクスはお礼をいい、駐屯地の中に2人は入っていった。
駐屯地は四方を石の壁で囲まれ、中には小さな城まで立っていた。フェリクスはアベルに連れられ、一番高い部屋にいた。部屋にはフェリクスとアベルしかいなかった。
「良かったのか?あんなに行ってくる兵士たちの忠告を聞かなくて」
「あいつらは心配しすぎなんだ、それにフェリクスならいつでも俺を殺すチャンスがあったしな、今ここで俺を殺すことはないだろう」
「急に殺す理由が出来たかも知れないよ」
「だとしたら、さっき、俺をあのオオカミから助けた理由がないだろ」
「それはそうだね」
フェリクスはこれ以上、からかっても無駄だと思ったのか、肩を竦めてアベルの言葉に同意した。
「それでフェリクス、あの兵器について知っているのか?」
「知っていると言うか、あれの試作品を見た事あるって、言うのが正確かな」
「試作品?ともかくあれは何なんだ、あれによって我が国は存亡の危機に立たされていると言っていい、知っているのなら教えてくれると嬉しいのだが」
「あれは、精霊を原料に使った兵器だね、恐らくあの兵器を無効化するには中の核を精霊術で破壊しなければいけないよ」
「だから、お前は精霊武装を使っていたのか」
「まぁ、そうだね、そっちの方が早いと思ったからね」
「しかし、意外だな」
「何が?」
アベルの言葉にフェリクスは首を傾げる。
「お前がすんなりと教えてくれたことがな、てっきり金でも要求されるのかと思ったぞ」
「ああ、別に今回の事では何も要求はしないよ、俺はあの兵器を全部破壊すると決めているからね、その為ならなんだってするってね」
「つまり、他の情報なら要求するという事か」
「そうかも知れないね、流石に敵国の情報を寄こせとか言われたら、国際情勢を鑑みますが」
「まぁ、今回はあの兵器の事を教えてくれるなら、何も言うまい」
「俺はあの兵器が使われているのなら、全面協力しましょう」
「それはフェリクス、個人なのか?」
「俺、個人です、商会ではありませんのでご注意を」
「別にお前だけでも十分なのだが・・・」
ソロSランク冒険者と言うだけでも1万の軍を壊滅させられるぐらいの戦力を持っているので、ある意味過剰戦力だ。だから、冒険者は国同士の戦争に加担してはいけないと国との条約で決まっている。フェリクスが今やっている事も兵器の件が無かったら立派な条約違反だ。下手をしたら冒険者の資格をはく奪されるかの所為すらある。
「つまり、あの兵器を無効化するには精霊使いがいるわけか、どうしたものか」
「そんなに人数がいないのか?」
「実はそうなのだ、レオンハルト国には俺を含め5人しか精霊使いはいない、父上の警護の面を考えると、出せるのはあと2人が限界だろう、その人数で対応できるか、不安だ」
「それなら、一般の兵士たちには足止めをしてもらおう、その間に俺が全部の兵器を破壊する」
「すまない、一方的に頼る形になってしまって」
「別に大丈夫だよ、俺の決めたことだし、それなら、何か、広範囲で連絡できる方法を考えといてくれ」
「何故だ?駐屯地になら連絡をする魔法ぐらいあるぞ」
「俺が敵なら、一回、兵器が効かないとわかったら、対応される前に同時多発的に使用すると思ってね、襲う場所が駐屯地だけとは限らないし、違う連絡方法はあった方がいいと思っただけだよ」
フェリクスの言葉にアベルは少し試行して、フェリクスの言い分が合っている様に頷きながら返事をした。
「・・・お前の言う通りに兵士に通達しよう、民に被害が出てからでは遅いからな」
「それじゃ、俺は休ませてもらおうかな」
「ああ、兵士たちに最高の待遇で接しよと言っとくな」
「普通の待遇でいいよ、特別待遇とか、アベルが一番嫌いなことでしょ」
「ハハハ、違いない」
フェリクスの知らせてくれた情報とアベルの迅速な対応によりレオンハルト軍はことごとく、ディスガルド軍の兵器攻撃をことごとく潰していった。それによりディスガルド軍が優勢だった情勢が次第に劣勢になっていった。
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