第67話 救出
次の日の昼にはディスガルド帝国の帝都にフェリクスは到着していた。帝都は中心に城があり、周りには貴族街、中級階級の順に町が広がっていた。さらに帝都の周りの城壁には貧民層のごみダメの様な場所があった。
最初の町の事もあった為、フェリクスは、貧民層の変装をして、帝都の周りを観察していた。しばらく観察していたが、やはり貧民層の扱いは酷いものだった。警備の為、巡回している兵士が難癖をつけて、人を痛めつけている姿をフェリクスは何度も見た。
そして、フェリクスはドワーフたちがこの帝都にいる確信を得た。
兵士たちの装備が普通では手に入らないぐらい上等なものだったのだ。普通ならば、末端の兵士がそんな上等な装備を持っているのはあり得ない。後の問題はドワーフたちが何処にいるかである。しかし、その問題の解答もフェリクスには問題にすらなっていなかった。
武器や鎧を作るにあたって、必ず必要なものがあるとフェリクスは知っていたからだ。それを頼りにフェリクスは、すぐにドワーフたちの居場所を探し当てた。
そこは、職人たちが武器を作っている場所、職人街と呼ばれる場所にやって来ていた。
(シルフ、ノチス)
そこで近くの壁に隠れながらフェリクスは精霊たちを念話で呼んだ。
(二人とも、あそこの家の地下を調べてくれ)
(わかったわ)
(わかりました、ご主人様)
精霊たちはフェリクスの指示を元に1軒の家を調べ始めた。暫く待っていると2人が帰ってきた。
(ドワーフたちが、居たわ)
(ドワーフたちの人数とそれを守っている人数を正確に頼む)
(ちょっと待ってね、えっと、確か)
(ドワーフのおじちゃんたちが15で、周りに居た人が20だったよ)
(ありがとう、ノチス)
(・・・ありがとうね、ノチス、でも何であの建物ってわかったの?)
(武器や鎧を作るのにはどうして火が必要なんだけど、ここだけ家が使われている感じ無いのに煙突から煙がたくさん出ていたからだよ)
(あんたの知識と観察眼には恐れ入るわ)
(まぁ、これだけ分かれば十分だから、乗り込むよ)
フェリクスは壁に隠れることをやめ、建物にゆっくりと入っていった。1階は本当に何も使っていないのか、埃まみれだった。しかし、埃によって足跡が続いていた。その足跡をフェリクスは足跡を立てずにゆっくりと追っていった。するとある床で不自然に足跡が切れていた。その床をフェリクスは力ずくで引っぺがすと、盛大に音が鳴り、床から階段が現れた。
そこからのフェリクスの行動は早かった。その音を確認しに来た兵士の首をあっという間にすぐに跳ねると、フェリクスは中に滑り込み、出てくる兵士の首を飛ばしていった。
「お、おまえ、このドワーフがどうなってもいいのか?」
最後の一人になった兵士はドワーフに剣を突きつけ、人質に取った。それに対してフェリクスは風の精霊術を使い、背後を取って、兵士を切り伏せた。
「これで終わりっと、皆さん、助けに来ましたよ」
フェリクスはドワーフたちを救出した旨を伝えたが、肝心のドワーフたちはフェリクスのことを訝しげに見てきた。
「お主は誰んじゃ、ドワーフを助ける人間なんぞ、聞いたことが無いぞ」
今まで経験からドワーフたちは人間不信になっている様だった。そこでフェリクスはカリヌーン王からもらった書類を見せた。
「そ、それは、我らの王の印」
書類には、カリヌーン王の印鑑が押されており、フェリクスがドワーフたちから、信用を得るには十分な情報だった。
「これで、信用して頂けましたかね。それでは皆さん、集まってください」
フェリクスの号令に戸惑いながらもドワーフたちはフェリクスの周りに集まった。
「それでは今から転移結晶でここを出たいと思いますが宜しいでしょうか」
フェリクスが取り出したのは、前にダンジョンまで移動した手のひらに収まらないぐらいの転移結晶だった。
「待ってくれ」
転移しようとするフェリクスを1人のドワーフが止めた。
「何でしょうか?敵の増援が来ないとも限らないので、早めに移動したいのですが」
「儂は儂の作った武器が戦争に使われると聞いた、儂はそんなのは耐えられん、どうにか、できんか?」
ドワーフの言葉にフェリクスは少し考えた。
「・・・何処に武器や鎧が運ばれたか、分かりますか?」
「恐らく、城だと思う」
「わかりました。では皆さんで、自分が離れたら、これを砕いて下さい。場所はレイヴァース国のクレソン商会に繋がっています。そこでマリアンヌと言う受付嬢にフェリクスの使いで来たと伝えて下さい」
「わかったぞ」
「ではその様にお願いします」
それだけ伝えるとフェリクスはその場を去った。
もはや、早さの勝負だと思ったフェリクスは直ぐに城に向かった。
城壁を軽く精霊術で飛び越え簡単に侵入が出来たはいいが、ドワーフたちが作った武器は一番強固に守られていた。
またも精霊たちに確認してもらった結果、城の地下、宝物庫に武器は収納されていた。
それを確認したフェリクスは、そのまま霧の精霊術で透明になり、宝物庫侵入することが出来た。一番強固に守られているとは言え、この国の兵士の質はそこまで高いとは言えなかった。姿が見えないだけで、フェリクスは誰にも止められることはなかった。しかし、宝物庫は自体に警報の魔法が掛けられており、フェリクスが入った瞬間、警報が盛大に鳴り響いた。
しかし、そこまではフェリクスの予想通りで、外の兵士は中を確認するが、中には誰にもいないので首を傾げていた。
兵士がそれで戻っていくのを確認した、フェリクスは、保管庫にあるものに炎の精霊術を片っ端からかけていた。
精霊術を掛けたものが溶けているのを確認するとフェリクスは、すぐに城から抜け出し、手のひらに収まるぐらいの転移結晶を砕いて、マリアンヌさんの元に飛んだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます