第66話  町の様子

一番近くの町に入る前に、フェリクスはシルフに声を掛けた。


「シルフ、念の為に俺が呼ぶとき以外で来るのは控えてくれ」

「わかったわ」


シルフはそう言うと本の中に戻っていった。それを確認するとフェリクスは町に入っていった。しかし、すぐにフェリクスは止められることになる。


「おっと、町に入るなら通行料を払ってもらうぜ」


町の兵士らしき者たちが、ニヤニヤしながら、フェリクスの事を止めてきた。


「ギルドカードじゃダメなんでしょうか?」


通常、町に入る時はギルドカードの提示だけで入れるものだ。その確認の為の質問だったが、兵士たちの顔を見ていたフェリウスは無駄だと悟った。


「だめだな、金を出せ」

「では、通行料はいくらなのでしょうか」


むしろ、Sランクのギルドカードなど見せない方が安くつくと思った、フェリクスは、そのまま通行料を聞いた。


「そーだな、お前は身なりが良いから、金貨一枚と言った所か、ギャハハハ」


金貨一枚の価値を知らずにただただ要求してくる兵士たちにフェリクスは嫌悪感しか抱かなかった。


「そうですか、ではこれで失礼します」


兵士に金貨一枚を投げるとフェリクスはそのまま町の中に入っていった。あっさりと金貨を出したフェリクスに兵士は唖然としてその様子を見ている事しか出来なかった。


もはや、姿だけで難癖をつけられえる可能性がある事が分かったフェリクスは、町に入り、最初に古着屋を探すのだった。


無事に古着屋を見つけ貧民層の服を手に入れたフェリクスは、町の門を通らずに町を出て行った。


日も落ち、道端でフェリクスが野宿の準備が終わった後、フェリクスは精霊たちに声を掛けた。


「シルフ、ノチス、今は大丈夫だよ」


フェリクスに呼ばれたことにより、シルフ、ノチスはフェリクスの前に姿を現した。


「また、結構、景色が変わったわね」


周りを見渡したシルフは、フェリクスがまたかなりの距離を移動したことが分かった。


「かなり移動したからね」

「それで、ドワーフたちが捕られているとして、何処にいるのか、見当はついているの?」

「俺の予想では、ドワーフが捕らえられているとしたら、帝都の王族か地方の貴族、どちらかしかないと思っている」

「その内、ご主人さまはどっちだと思うんですか?」

「しいて言えば、帝都かなと思っている」

「それじゃ、今は帝都って場所に向かっているんですか」


フェリクスはノチスを褒めるように頭を撫でた。


「そうだよ」

「でも何で、わざわざ野宿なんてしているの。危険じゃない?」

「町の方が危険かなと思ったからだよ」

「そう言われると反論できないわね」

「そこら辺のモンスターで俺を殺せるモンスターなんていないからね。一番怖いのは悪意の持った人間だね」

「全く嫌な国ね。悪意の持った人間が大勢いそう」

「それは大勢いるみたいだね」


フェリクスはそこで立ち上がり、腰につけている刀を抜いた。


「何しているの?」


フェリクスの行動にシルフの頭には?マークがついていた。


「盗賊だね」


その言葉がシルフに聞こえる頃には、フェリクスは盗賊の一人を切り倒していた。


「まぁ、貴族たちがあんな調子なのに、治安がいいわけないよね」


そのまま混乱状態の盗賊たちをフェリクスは簡単に切り伏せ、戦闘は5分しない内に終わりを迎えた。


刀に着いた血を切り払い鞘にしまうと、フェリクスは自分に魔法をかけ服の血を洗い落とした。


「ふう、これじゃ、しっかりと結界を掛けないとだめだね」

「直ぐに盗賊に気づいたのによく言うわ」

「気づくと言っても意識がある時と意識がない時だと差があって、一瞬、気づくのが遅れるよ」

「それにしてもそれどうするのよ」


シルフが指したのは、盗賊たちの死体だった。


「まぁ、血の匂いで魔物が寄ってきても嫌だし、焼いちゃうよ」


すぐにフェリクスは有言実行する。魔法で死体を燃やすのには少し時間が掛かったが、幸い近くには何もなかったので、問題はなかった。遠くから見てもただの焚火に見えた事だろう。


「疲れたし、もう寝るね、お休み、シルフ、ノチス」


死体の処理が終わると、フェリクスは結界を魔法で張り、そのまま眠りに入った。

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