第48話  移動

「それで、その精霊の森にはどうやって行くんだ」


次の日、準備を整えて、フェリクスたちは、王都の外に出ていた。


フェリクスは各地を飛び回っていた経験があるが精霊の森なんてものは一度も耳にしたことがなかった。それから通常の場所ではないことがフェリクスには分かっていた。それにアリサの来ていると言う発言からフェリクスは精霊の森は移動するものであることを推測していた。


つまり、ウンディーネやシルフは何かしらの方法で精霊の森の場所を分かる手段を思っていることになる。


「それはね、この指輪が教えてくれるの」


ウンディーネは胸元から、透明な指輪を取り出すとその指輪を自分の中指に着けた。


すると指輪から一筋の光が伸びた。


「なるほど、精霊にしか使えない指輪か」


精霊にしか使えないのならば、下手に誰かに拾われる心配もないし、拾うとしても精霊にしか拾えないのであれば精霊の森の場所がばれることはない。


「どのぐらいかかりそうなんだ?」


1人が持っていける食料の量は決まっている。移動距離が現実的に遠すぎたら、転移も視野に入ってくる。


「そうね、指輪の光、具合から、普通に歩いて1日って所かしら」

「それなら、走れば、すぐに着きそうだな」

「歩いて1日の距離をすぐって、ほんとに規格外ね」

「え、そうですか」

「ここにも規格外が居たんだった」


ウンディーネは忘れていたと言わんばかりに頭に手を当てた。


「それなら、すぐに向かうか」

「そうですね」


と言うことでフェリクスとアリサは走って移動することなった。


道中、走りながらフェリクスは気になっていたことをアリサに聞いた。


「それにしても、よく王様がこんな旅行なんて、許可したよね」


このアリサはこのレイヴァース国で一番の戦力と言ってもいい。普通なら有事があることを考えて、王都を離れることなど、許してくれないはずだ。


「それはフェリクス君と一緒なら、いいと許可をくれましたよ」

「どういう理屈なんだ、それは?」

「それは私にも分かりません」


軽く会話を挟んでいるが、2人は馬などより圧倒的に早く走っていた。通り過ぎる行商人や冒険者などが2人を見て驚きのあまり、口をあんぐりと開けていた。


そんな速度を出していた為、2人は1時間もしない内に目的の場所へと着いた。


「ここか」


フェリクスが荒野の真ん中で突然止まり、それに合わせてアリサもその場に止まる。


「え、何も見えませんけど、フェリクス君?」


荒野の真ん中で突然止まったのだから、アリサの反応は当然と言えた。


「いえ、彼が合っているわ、アリサ」


ウンディーネの嵌めてある指輪が1番輝いていたが、それよりも指輪の光がどの方向も指していないことが目的の場所がここであることを指していた。


「何でフェリクス君は、ここが精霊の場所であると分かったんですか?」

「俺には見えただけさ、あのデッカイ森が」


フェリクスが見ている先には何もない、ただの荒野が広がっているだけだ。アリサは何故、自分に見えないものが見えているのか、分からなかった。


「それじゃ、ご対面と行きましょうか」


ウンディーネは指輪を触ると指輪から一帯を埋め尽くすほどの光が溢れ出る。思わず、フェリクスとアリサは目を瞑ってしまう。光が収まると目の前には霧に包まれた、森が現れた。


「すごい」

「なるほど」


2人とも突然、現れた森にそれぞれの反応をしていた。


「さぁ、入り口が閉じる前に入るわよ、2人とも」


ウンディーネの声にフェリクスとアリサは精霊の森へと足を踏み入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る