第44話  精霊武装

フェリクスは様子見とばかりに風魔法を放つ。しかし、神は避けようともしなかった。


「そんなもの、私には効かぬぞ」

「予想はしていたけど、硬すぎでしょ」

「次は私からいくぞ」


神が手を上げると、手の先から5つの光の矢が現れた。手をフェリクスの方へ振りかざすと、光の矢がフェリクスに向かってきた。


あまりの速さにフェリクスは避けきれず、光の矢が1本、腕に掠っていった。フェリクスの後ろに飛んでいた光の矢は簡単に壁を突き抜けて行く。


「シルフ」


今度はシルフに神力を渡し、攻撃してもらう。特大のかまいたちが神に向かうが、レイピアによってかまいたちは簡単に切り裂かれてしまった。


「どうした、手も足も出ぬか」

「いや、貴方が今、防御しただけでも情報としても十分ですよ」


今度は、フェリクスから神に切りかかった。今度は受け止められてもフェリクスが飛ばされることはなかった。


「少しは、やれるようだな」

「それはどうも」


しかし、すぐに神の後ろに光の矢が出現する。鍔迫り合いの最中にノーモーションで出現した光の矢はそのまま、フェリクスに迫る。


鍔迫り合いの最中、フェリクスは僅かに体を逸らし光の矢を完璧に避けて見せた。


「器用だな、少年、そろそろ、私も本気を出そう」


神はまたしても神力を上げたのか、フェリクスが鍔迫り合いでじりじりと押され始めた。


「さっきの威勢はどうした、まだまだ、こちらは上がるぞ」


その宣言通り、フェリクスはさっきほどではないが10メートルほど飛ばされることとなった。神はさらに追撃の剣劇をフェリクスに放ってきた。またも、フェリクスは神に力で飛ばされることになるかと思われたが、フェリクスはしなやかな受け流しを使い、神の剣戟を避けた。元々、力で兄に勝てないと思ったフェリクスが刀を使い始めたのだ、どんな剣戟でも受け流すことは簡単にできる。


「本当に器用なことをする、これならどうだ」


神のレイピアに水が纏われた。嫌な予感がして、フェリクスは地面に土精霊の術式を施す。すると神とフェリクスの間に土の壁が作られた。しかし、構わず、神はレイピアを振るう。振るわれたレイピアからは水があり得ない速度で発射され、いとも簡単に土の壁を切り裂いた。それはまるで武芸大会でアリサ王女が見せた水魔法と同じものだった。しかし、威力がけた違いに違う。あれでは刀で受け流しをしようものなら、刀の一部が削り取られるだろう。土精霊の術式が最大の防御だったフェリクスにとってもはや、防御という選択肢は消え失せた。


土の壁が崩れるまでの少しの時間でこのままではダメだと思ったフェリクスはシルフに話しかける。


「シルフ、あれを使う」

「決断早いわね」

「あれは出し惜しみなんかしていたら、すぐ死ぬ」

「後は頼んだわよ」


土煙の中から現れたのは、鎧を倒した刀を持ったフェリクスだった。


「ほう、その年で精霊武装を使いこなすか」


フェリクスが二刀流なり、戦いの第2ラウンドが始まった。

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