第45話  決着

精霊武装とは文字通り、精霊を武装に変えるものだ。通常の武器に神力を流しただけでは、あまり精霊には効果はない。精霊武装が100%神力で構成されており、精霊にも攻撃が通じるようになるということだ。そして、フェリクスは精霊武装ならば、神にすら攻撃が通じるのではないかと考えた。その予想は当たる。


またもフェリクスから神に切りかかる。しかし、それはフェイントで応戦してきた神のレイピアを自分の刀で受け流しながら、精霊武装の刀でがら空きになった胴体を切り裂いた。


その攻撃ではアリサの体は何も傷ついていなかったが、神の顔は苦悶に満ちていた。それは神に精霊武装は通じるという証だった。


しかし、精霊武装を維持するためには、莫大な神力が必要になる。前の時はシルフがそれを代用してくれていたが、それだと5分も精霊武装が持たない。


「全く精霊武装は厄介だな」


すぐに神の表情は元に戻るが、さっきまでの遊んでいた雰囲気が消えた。


「そちらが精霊武装を出したのだ、こちらも出さねばな」


神の手に現れたのは黄金に輝く弓だった。それに合わせて、さっきまでフェリクスを攻撃してきた1本の光の矢が神の手に現れた。


「お前ら、精霊に精霊武装があるように私たち、神にも神器が存在する。果たして、お前にこれが避けられるかな」


弓に優雅とも言える軽やかな動作で1本の矢をつがえると矢を放ってきた。簡単に放たれた矢だったが先ほど放たれた光の矢とは倍以上のスピードで矢が飛んできた。


光の矢をかろうじて目で捉えることが出来たフェリクスは、避けようと体を捻るが、その眼には矢が曲がる瞬間が映っていた。そして、光の矢は、フェリクスの腹部に吸い込まれていった。


「っ」


腹部の激痛を物ともせずに、フェリクスは神と距離を取り、魔法で煙幕を作り出した。床には大量の血が飛び散っていた。隠れたことにより、すぐに治療魔法を使おうとするが当然、神はもう待ってはくれなかった。


「つまらん小細工だ」


煙幕を出して、これで攻撃が当たらないかと思いきや、煙幕の中から光の弓矢が現れた。避けてはダメだと身に染みて分かったフェリクスは精霊武装の刀で光の矢を切り裂いた。


これではせっかく出した煙幕がフェリクスにとって不利に働いてしまっていた。煙幕で何処から光の矢が飛んでくるのか、わからないのはそうとうフェリクスの神経を擦り減り結果となってしまった。


なんとか止血を終え、煙幕が晴れた先に見えたのは、光の矢を数えらぬほど弓につがえている神の姿だった。


「死ね」


神は光の矢を上に向けて放った。


ただでさえ、フェリクスは光の矢を避けることが出来なかったのに今度は刀で捌くことが不可能な量の光の矢を神は放ってきた。その矢の本数は100を優に超えてきた。


光の矢が収まった先では、フェリクスが悠然と立っていた。


「ほう、避けきったか」


フェリクスが光の矢を避けられたのはちゃんとした理由があった。神は目で見て光の矢を放っていなかった。それは煙幕を出している最中にフェリクスに光の矢を当ててきたことからわかる。つまり、別のことでフェリクスを探知しているとゆうことだ。そこでフェリクスは仮説を立てた。


もしかしたら、神力で探知されているかと。


半分賭けでもあったがフェリクスは、神力で戦闘機のフレアのようなものを作ったのだ。自分はとゆうと、霧の術式で姿を透明にし、影の術式で神力を消していた。賭けに勝ったフェリクスは無事に光の矢を避けることに成功した。


自分の怪我から、あまり動ける時間がないことを悟ったフェリクスはそのまま、神に向かって行く。


「姿を現さぬか、ならこれでどうだ」


姿が消えたままのフェリクスをあぶりだす為に神はまた、同じように光の矢の束を弓につがえられ放たれる。謁見の間に100本以上の光の矢で埋め尽くされる。


しかし、光の矢はフェリクスに当たることなく、壁を貫いて外に飛んでいった。


突然、現れた鎖が神をぐりぐり巻きにし、体を拘束した。


「なに!これは精霊武装!」


そこにフェリクスは姿を現す。


「これで、アリサから出ていってもらうぞ」


フェリクスの手には解呪の術式が用意されていて、アリスの体にフェリクスは解呪の術式を張り付けた。アリスの体には神を落とすための術式が描かれており、フェリクスは何度も接近してその術式を見て解読した。その術式さえ解除出来れば、アリサから神を追い出すことが出来るという戦法だ。


アリサの体が光り術式は解除されるが、アリサの中の神は諦めが悪かった。


『まだだ、まだいける』


術式は解除されたのに神はアリサの中で粘っていた。しかし、そこにフェリクスが刀の精霊武装を振り上げる。


「これで終わりだ」


『やめろぉぉ』


そのまま刀を振り下ろすと神は完全にアリサの中から消え去った。

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