第43話  降臨

「さぁ、アリサよ、その者は罪を犯した逆賊だ、殺せ」

「なるほど」


王様はさっき、其方の話だけでも聞いてやろうと言っただけで、罪に問わないとは言ってなかった。


「お前か、私を呼んだのは」


声はアリサだが、明らかに口調がアリサではないことに気が付いたフェリクスは最悪の事態になってしまったことを悟った。


「なに、お前、まさか」


アリサ王女はいつの間にか、王様の目の前に移動すると王様の首を右手で鷲掴みにした。


「答えろ、お前が私を呼んだのか」


首を掴まれているので、王様は答えられない。恐らく、あのままではすぐに死んでしまうだろう。


「答えろぉぉぉ」

「ぐっ」


そのまま首の骨が折れてしまうのではないかと思ったフェリクスは風の術式を使うとアリサから王様を奪取した。


「それじゃ、答えたくても答えらないよ」

「早いな、少年」

「それに貴方は、前、呼ばれた時に、この王様を見たんじゃないの?」

「確かに見たが、前に呼ばれた時は、そやつの父親に呼ばれたものでな」

「それで確かめていたと」

「そういうことだ、早く、そやつをこっちに渡せ」

「流石にそういうわけにはいかないね」

「なんだと」


フェリクスの言葉に反応して、アリサの神力が爆発的に上がる。


「お前は関係なさそうだから、見逃してやろうかと思ったが、どうやら違ったらしいな」

「まぁ、この人はあんまり関係ないけど、貴方の宿主には関係があるからね」

「なんだ、この女の事でも好いているのか?」

「別にそうゆうわけじゃないよ、ただ、親を殺しとかはやってほしくないと思っただけだよ」


フェリクスは王様をお姫様抱っこの状態から下ろし、手で逃げるように伝えた。それに王様は困惑している様だが、ここにいては命がないと思ったのだろう。素直にフェリクスの指示通り後ろに逃げた。


「でも、前回、神落としの儀式は成功したのに、何で今回は失敗したんですかね?」


適性はアリサの方が高いと言う話だ。普通は失敗などしないだろう。


「そんなの簡単だ。前回はあまり、シンクロ率が高くなく、あまり器の人格を侵食できなかっただけだ」

「つまり、今回はシンクロ率が高く、人格まで侵食出来たってことか」


まさかの適性が高いのが裏目に出るとは王様も思っていなかっただろう。


「さて、話もここら辺でいいだろう、死ぬ覚悟は出来たか、少年」

「最後に一つだけ、どうすれば、器の人は開放できますか」

「ふっ、面白い、それを乗っ取っている私に聞くか、答えは簡単だな、私を殺せば、開放はされるぞ、さぁ、私を殺して見ろ、少年」


その言葉を言い終わるとアリサはレイピアでフェリクスに切りかかってきた。


フェリクスはアリサのレイピアを刀で受け止めるが、その瞬間、あまりの怪力に一気に後ろの壁まで飛ばされてしまう。


「がっ」

「ほら、どうした、少年、この少女を開放したくはないのか」


余裕のつもりなのか、アリサに乗り移った神はフェリクスに追撃を加えず、待っていた。


「これでも魔法の肉体強化を目一杯かけたんだけどな、やっぱり魔法だけじゃ、だめみたいだ、シルフ」

「ようやく呼んだわね、どう、勝算はありそう?」

「まぁ、ゼロじゃないかな」


フェリクスに呼ばれて、横にシルフが姿を現す。


フェリクスの言葉に神は面白そうに眉を上げた。


「ほう、面白いことを言う、そして、それは四大精霊のシルフではないか、勝算があると言うなら試して見るといい、全力で叩き潰してやる」

「それじゃ、アリサ王女を取り戻しますか、シルフ」

「ええ、行くわよ、フェリクス」


そうして、無謀とも言える神との闘いが始まった。

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