第22話  爆弾

時間はもう日も落ち完全な夜中の時間となっていた。フェリクスとしては寮の夕食の時間が過ぎていて、夕食を無駄にしたのが気がかりだったが、今回は緊急を要するので仕方がないと諦めていた。


そんなことを考えながら、フェリクスは目的の場所に到着した。


フェリクスが来た場所は、何年も前に事業に失敗した商人の家だった。この前、購入されたにも関わらず、その屋敷の姿は人の手入れが行き届いていない状態で放置されていた。


(屋敷で感じる気配は8人か、他も心配だから、ちゃっちゃとやりますか)


気配を消して屋敷の前まで来たフェリクスはさっき自分で紹介した魔法陣の書かれた紙を取り出した。魔法陣を起動すると、屋敷を中心に一帯が白い膜のようなものに包まれた。


それと同時にフェリクスは屋敷の上に飛ぶ。


そこには屋敷の周りを警戒していた2人がいて、突然のフェリクスの登場に驚くが声を上げる間もなくフェリクスに切られた。


(まずは2人、後は気配から2階に3人、1階に3人ってとこか)


フェリクスはそのままの勢いで窓から2階に飛び込んだ。飛び込んだ先に1人いるのは分かっていたのでそのまま1人切り捨てると窓を破った音に気が付いた仲間が集まってきた。


「どうし――」


部屋に入ってきた1人をさらに切り倒して、残り4人。どうやら残りは起爆装置の守りを固めたらしい。


「くそ、起動させたはずなのに、何故、何も反応がないんだ」


1階からはそんな悲痛な叫びが聞こえてきたがフェリクスはそこにめがけて電撃の魔法を放つ。起爆装置は屋敷の真ん中とも言える場所にあり、屋敷の構造上、どの部屋からも屋敷の真ん中が見える構造になっていたので、細かく狙わずとも起爆装置には魔法が当たった。


そして近く敵はもちろん近くにいたので全員に電撃魔法が当たり、全員気絶する羽目になった。


「以外にあっさり、終わったわね」

「まぁ、大抵の人間は俺より弱いからね、それより早くこいつらを縛り上げないといけない」


フェリクスは起爆装置に一番近くにいた1人と他の3人を別に魔法で縛り上げると、起爆装置を調べ始めた。


「何で、こいつだけ別に縛っているの?」


シルフは一人だけ別に縛り上げられている人について指した。


「そいつが、この装置を操作していたからだよ、ほかの奴らよりは少しだけ立場が上ってところかな」


起爆装置は全長5メートルにも及び、その長さの原因となっているのが、長いアンテナだった。その下にそれを支えるための足と操作するための四角い箱があり、その箱の中心には大きい宝石が埋め込まれていた。


フェリクスは軽く爆破装置の操作パネルを操作するともう用が済んだように箱の中心の宝石を引っこ抜いた。そして、止めと言わんばかりにアンテナを刀で原型をとどめないくらいに切り裂いた。


「次、いくよ、シルフ」

「はーい」


しっかりと、捕虜にした3人を風魔法で空中に浮かせるとフェリクスは北へ向かった。


その頃、ほかの場所でも順調に起爆装置を壊していた。


フェリクスが両方のチームを確認できる場所まで来たときには両者から連絡が同時に来たぐらいだ。


「こちら、起爆装置破壊完了です」

「こっちは、終わりましたぜ、若」


フェリクスも連絡するために右耳のイヤリングに手を当てた。


「了解、二人ともありがとう、ほかにも人いるかもしれないから警戒はまだ続けてね、ところで捕まえた人っている?」

「一応、指揮官っぽいのはつかまえましたが、情報を持っているかは怪しいですぜ」

「こちらも同じような感じです」

「わかった、それじゃ、起爆装置の宝石だけ回収して撤収しよう」

「了解です」

「わかりましたぜ、若」


ここまで順調にいっていたが、ここでフェリクスにとって予想外のことが起こる。突然、捕らえていた捕虜から苦悶の声が聞こえていた。


「なに!」


捕虜の方を見ると体中から文字のようなものが浮き上がっていた。


「これは呪詛か」


フェリクスは必死に解除を試みるが思いのほか体中に広がる呪詛のスピードが速い。しかも解除してもすぐに次々と文字が浮かび上がってくる。フェリクスは指をフル動員しても一時的に解除されるだけで、効果はないに等しかった。しかし、諦めるわけにもいかず必死にフェイクスは指を動かす。


フェリクスの奮闘虚しく、捕虜たちは死んだ。


「若」

「副会頭」


フェリクスが捕虜の治療を諦めた直後、同時にフェリクスの元に連絡が来た。


「ああ、言いたいことはわかるよ、捕虜から呪詛が出てきて、どうすればいいかだろう、たぶん、解除は無理だ、やられた、その呪詛には決して触るな、何が起こるかわからない」

「これはどうゆうことなんですかい、若」

「敵に呪詛、しかも高度な呪詛を使えるものがいるってことかな、正直、ここまでしてくると予想外だ」

「若が予想外とは珍しいですな」

「とりあえず、敵はもういないだろう、警備隊に知らせよう」

「そうですな、とりあえず、テロを防げただけでも御の字でしょう、気を落としなすな、若」

「そうだな」


グレッグから励ましの言葉をもらったがフェリクスの気分は今一晴れなった。

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