第23話  真の目的

警備隊に着いてから、いろいろと今回について聞かれはしたが、わかっているのか、テロが起きそうだったから止めただけで、それ以上の説明をフェリクスは仕様がなかった。死んだものの遺留品をもう少しちゃんと調べれば、何とかなるのかもしれないが、警備隊が持っていって調べることもできなかった。


「でも、あいつらの目的ってなんだったのよ、結局、王都を爆破したかっただけなの?」

「うーん、とりあえず、怪しいのは北のどこかだろうね」

「何で場所は分かるのよ」

「今回、起爆装置があったのは東西南で、唯一の起爆装置がなかったのが北だ、最初は王城が近くて警備が厳しいからと思ったけど、爆破が陽動なら王城の近くで何かしたかったぐらいしか、思いつかないかな」

「十分、思いついているじゃない、なら早く北に行きましょうよ」

「それはどうだろう、陽動自体の爆破を潰してしまったから、王城の警備の数はそんなに減ってないし、無理やりやるほどの計画なのか、怪しいけど」

「確か学園も北の方じゃなかった?」

「そうだけど、あの学園の結界を普通に破れるとは思えないな」


軽く見ただけだが、学園に張られている結界は自分が全力で壊しにかかっても1日はかかるようなものが張られているので、少なくとも真面な方法だと結界を破っている間に誰かが来てしまう。


「それじゃ、今回はこれ以上本当に何も起こらないって保証できるの?」

「そうだな、一個だけ、可能性がある」

「あるんじゃない、早く言いなさいよ」


「敵が精霊使いである可能性」


「何よ、それ」

「それなら、学園に張られている結界も一瞬で破壊できるし、学園が狙いなら、王城より警備の数が少ないから、決行はできなくはない」

「それなら、念の為、学園に行くわよ」

「もうそれは俺の仕事じゃないんだけどな」

「何を言っているのよ、ここまで関わったのなら、最後までやるのが普通でしょう」

「普通は警備隊が学園を守るのが普通だよ」

「精霊使いだったら、警備隊じゃ、相手にならないわよ」

「確かにそうなんだけどね、わかった、行くよ」


シルフに言われ半ば強引にフェリクスは学園へと向かった。


学園に着くとそこには何も変わらない姿の学園の校舎と寮の姿があった。


「なによ、何もないじゃない」

「いや、まずい、学園の結界が消えている・・」

「でも、何も起こっている感じじゃないわよ」

「それが一番まずい」


フェリクスは全力で寮の方へ走り出すとの同時に、寮の上空に大きな花火のような魔法を放った。


「何してるよの、敵にばれるじゃない」

「いや、まずは生徒たちに起きてもらった方がいい」


フェリクスが寮の近くに着くと、一番上の寮の窓が 割れていた。そこはアリサ姫の部屋だった。フェリクスは迷わず、アリサ姫の部屋へと飛び込んだ。


そこには黒ずくめの暗殺者と剣でつば競り合いをするアリサ姫がいた。そして暗殺者の後ろでは仲間らしい2人が倒れていた。どうやら、自力で倒したらしい。


「フェリクス君!」

「気を散らすな」


アリサがフェリクスに声をかけて、気が緩んだ瞬間に、敵はもう片方の手からナイフをアリサに向けて投げつけた。


「させないわ」


アリサ姫に完全に当たると思われたそのナイフはどこからともなく現れた、ウンディーネの水によって絡めとれてしまった。


「っ」


しかし、アリサ姫は何故か、苦悶の声を出した。よく見るとアリサの足元から出てきた敵の精霊がアリサの足を攻撃したのだ。


それを確認した暗殺者はアリサ姫をつば競り合いで押し返すと、仲間の元に走った。


「させるか」


逃げようとする暗殺者にフェリクスは切りかかるが寸言の所で敵が何かを砕いた。


「転移結晶か」


少し、風が吹いたかと思うとそこにはもう暗殺者の姿はなかった。


「くそ、逃げられた」


してやられたと言わんばかりにフェリクスは悔しげな声を上げた。


「アリサ!」


ウンディーネの焦る声が聞こえてきた。その声にフェリクスが振り返るとアリサの足からは捕虜にした連中と同じ呪詛が浮かび上がっていた。


「くっ」


呪詛の痛みによってアリサ姫は地面に蹲っていた。その足を手で押さえたせいか、呪詛は両手と右足を侵食していた。


「どうするのよ、これ、さっきの奴じゃない」

「さっきとは違う」


そういうとフェリクスは靴と靴下を脱ぎ、裸足になった。何をしているんだとシルフとウンディーネはフェリクスを見たが、フェリクスは手と足の指すべてを使い、呪詛を解除し始めた。


するとアリサの両手と右足を侵食していた呪詛はみるみるうちに解除されていって、10分後にはアリサの両手、右足は元通りの状態になっていた。


「これで終わりと」


その様子を唖然として2人の精霊は見ていた。


「いやー呪詛を付けらえたのが足でよかった、あいつらみたいに体の内側とかにつけられたらどうしようもなかった」

「いや、そうじゃなくても、十分すごいわよ、あんた」

「これぐらいできないとクレソン商会の副会頭とは務まんないよ、シルフ」

「あんたの商会、会頭、どれだけバケモンなのよ」

「多分、俺の10倍はすごいかな」

「・・・」


その発言にシルフは絶句していた。


「ともかく、これでアリサ姫は大丈夫だろう、俺はそろそろ、おいとましましょうかね、アリサ姫がそんな恰好だし、起きた後、面倒そう」


そんな恰好とのことはバスローブ姿ことだ。緊急の事とはいえ、乙女の部屋に無断で入ったのだ、男子としては気まずい。


「あら、意識しちゃっているのかな、フェリクス君~」


ウンディーネがフェリクスの肩を軽く、掴んだが、振りほどかれてしまう。


「煩いな~、ともかく俺は自分の部屋に帰る、軽く結界だけ張っとくよ、後は2人で見といて」


ホントにそれだけ言うとフェリクスは自分の部屋に帰って行った。

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