第21話 作戦
クレソン商会に着いたフェリクスはマリアンヌの所に向かった。
「調べものは出来ている?」
「もちろんです、副会頭」
「ここじゃ、何だし、奥に行こうか」
「わかりました、ではこちらに」
マリアンヌに案内されて、受付から奥の執務室に移動したフェリクスは一番奥にある豪華な椅子に座った。
「では、結果を頼む」
「はい、副会頭がおっしゃった、人目に付きづらい場所で最近、買われて物件で大きい建築物があるもの、そして、偽名で買われた疑いのあるもの、以下の条件に当てはまる物件はこちらの3件です」
マリアンヌは1枚の紙をフェリクスに手渡した。
「ふむ、3件か、今、出られるA以上の冒険者は何人いる?」
「今、出られるA以上ですか、私の記憶が正しければ、出られるのはSランクパーティが1組、Aランクパーティが2組です」
「十分だ、あまり目立たずにそのパーティを集めてくれ、説明は集まってからする」
「わかりました、静かに招集をかけます」
マリアンヌが招集をかけている間に、シルフが帰ってきた。
「戻ったわよ」
「早速で悪いけど、敵のアジトはどこだった?」
フェリクスはテーブルに広げてあった地図を指してシルフに質問した。
「全く、精霊遣いが荒いわね、ここだったわよ」
シルフが指した場所はマリアンヌが調べた物件の1つだった。
「大体、予想通りだな」
「なによ、予想通りって」
フェリクスの発言に金切り声のようにシルフは声を上げた。
「もともとマリアンヌさんに怪しい物件を調べてもらっていたんだ、シルフのおかげで確証を得ることが出来たよ、ありがとう」
「それならそうと早く言いなさいよ」
口とは裏腹に完全にシルフの顔が嬉しそうに、にやけているのはフェリクスの気のせいではないだろう。
「今から商会の人たちに説明するから、横で聞いているといいよ」
「わかったわ」
しばらくすると執務室をコンコンと扉をノックする音、響き渡った。
「入って大丈夫だよ」
「失礼します、副会頭」
マリアンヌが入室するとその後ろに複数の冒険者が続いた。その中にはこの前のホーリーフラッグのメンバーもいた。
「急に集まってもらって済まない、今回の要件はそれだけ急を要するものだと理解してほしい」
「その急を要する要件って、どんなもんなんですかい、若」
「こら途中で口を挟まないの、グレッグ」
「別に大丈夫だよ、エマ、皆、こっちに着て地図を見てくれ」
フェリクスに促されて、冒険者たちは地図の広げたテーブルの周りに集まった。
「簡単に言うと、今、テロが起きようとしている」
突然の報告に皆驚きの声を上げる。
「それはまたえらいことですな」
「しかも、これに関してはあまり時間が残されていない、やることを簡単に説明する」
フェリクスは地図を指しながら説明を始めた。
「まず、この王都に爆弾に近いものが王都中に撒かれた、今、これを回収している時間はない、なので起爆装置を破壊する、その起爆装置があると思わしき建物が今、地図で印がつけてある場所だ」
「起爆装置とおっしゃいましたが、我々が装置を壊す前に起動された結局終わりなのではないでしょうか?」
「いい質問だ、レオナルド、確かに起動された終わりだ、そこでこれを使う」
フェリクスは上質な紙をテーブルの上に取り出した。その紙には複雑な魔法陣が書かれている。
「これは?」
「俺が作った特別製の魔法陣、これを発動すればそこ一帯に大体の物を遮断する結界が張れる」
グレッグは魔法陣の紙を手につかむとひらひらと紙の感触を確かめた。
「つまり、これを張って結界が壊れる前に起爆装置を破壊しろってことですかい?」
「ああ、そう言うことになる、ちなみに結界の発動時間は10分だ」
「なるほど、時間との勝負ってわけですかい」
「そう、だから今日はAランク以上のパーティに集まってもらった」
「これはお国さんに頼むのは無理なんですかい、何もこの商会だけで、やる問題じゃない気がするんですが?」
「言いたいことは分かるがさっきも言った通り時間がない、正式な手続きをやっていたら、それこそ取り返しのつかないことになる、もちろん、今回は商会として報酬を出す、それでこの話を受けてほしい」
「ちゃんとしたものが出るな、あっしは構いません」
「これは済まないと思うが敵に関してはあまり情報がない、わかるのは俺に気配を探られるような者ってだけだ」
「それに関しちゃ、それで充分ですぜ、若」
「起爆装置にはもっと護衛がいるもの思ってくれ、暗殺者などのことも考えてある程度の解毒剤も用意したので、これも戦いを始める前に飲んで準備を万全にしてほしい」
「全くこの商会は至れり尽くせりですな」
「ほかにグレッグの他に質問はないか、ないなら、どこを担当するか説明する」
地図についている印は王都の東西南につけられていた。
「王宮があるので北にはおそらく起爆装置はない、そして、グレッグのSランクパーティには西の方を担当してもらう、レオナルドとローグのAランクパーティには東の方を担当してもらう」
「残り一つの南には、若一人で行くんですかい」
「ああ、そのつもりだ、こっちが片付いたら、どっちかの応援にはいくことになるだろう」
フェリクスは一番先に自分が問題を片づけると軽く宣言したようなものだが、だれもその言葉を否定しなかった。
「こっちの応援はいりませんぜ、若」
「それはこっちも同じです、若」
グレッグとレオナルドが張り合うように声を上げるがフェリクスはそれを手で制す。
「わかった、なるべく、手助けはしないようにする、本当にダメそうなら行くからね、ローグの方もそれでいい」
「・・・」
ずっとしゃべらずにいたローグはフェリクスの言葉に無言で頷いた。
「それじゃ、決行は30分後だ、解散」
フェリクスの号令により、皆、それぞれの場所に向かった。
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