第11話 ダンジョンボス
レオナルドは地龍の首に切りかかるが鱗に大剣を弾かれてしまう。その隙を逃さず、地龍はレオナルドに向かってブレスを吐いて来た。
「やっぱ、直接はダメか」
「ちょっと、危ないんだから、そういう危険なことはやめなさい、他の柔らかいところ狙うわよ」
クロエはレオナルドが引いたところを見ると地龍の気を引くために間髪入れずに、頭にナイフを投げた。その軌道はしっかりと地龍の目に向けられていた。地龍は思わず目をつぶり、ブレスを止めた。
「バフ、行きます」
ソフィアから魔法がレオナルドとクロエに掛けられる。しかし、魔法を発動したことによって、地龍の注意が今度はソフィアに向いてしまう。
「ほら、キリキリ動きなさい」
「わかってるよ」
クロエは鱗の隙間に刃をいれ、鱗をはがし始めた。レオナルドもクロエに倣って、大剣を首と並行に向けて切りかかる。それによって一気に鱗をごっそりと削り取った。2人の行動によってまた、地龍の注意は前衛の2人に戻る。
3人の立ち回りは冷静だった。地龍の攻撃が一撃でもあたってしまえば、致命傷はさけられないので、一人に攻撃が来そうになったら、残りの2人がその攻撃を阻むような行動をするように立ち回って少しずつだが、地龍の体力を削って行った。
不意にそのバランスは崩れてしまう。
地龍の体から、リザードンが1匹、飛び出してクロエに切りかかった。
不意を突かれたにも関わらず、クロエはリザードマンの攻撃を受け止めた。しかし、その上からリザードマンごと、切り捨てようとしている地龍の爪が迫った。他の2人は地龍のブレスを受けていて、クロエのサポートの為に動けない。
(やられる)
クロエが死を覚悟したが、地龍の爪は横から飛んできた電撃によって足首から消し飛ばされた。
「うぉおおお」
足を消し飛ばれ、痛みで悲鳴を上げている地龍に対してすかさず、レオナルドは大剣を大きく振りかぶって鱗が削れているもう片方の足を切断した。
前足の両方を失った地龍は前方に倒れ、首をレオナルドたちに差し出す形となった。そのまま地龍はなすすべもなく、首をレオナルドに切断されて、息絶えた。
「早く、ダンジョンコアを探すぞ」
地龍を倒したもののダンジョンコアを破壊しなければ、またモンスターが発生してしまう。早くしなければ、フェリクスが時間を稼いでいる意味がなくなってしまう。
「たしか、左足の所からリザードマンが出て来たわ」
モンスターはダンジョンコアからしか発生しないので、地龍からモンスターが出て来たということは地龍の中かにダンジョンコアが埋まっているということになる。
「そこを中心に行くぞ」
「ええ」
ほどなく、ダンジョンコアが地龍の中から見つかり、レオナルドはすぐに大剣でダンジョンコアを壊した。
「やっと、終わったかな」
「―――」
アルは腰が抜けた様にフェリクスを見ていた。
「若、さっきはありがとうございました」
クロエが軽く手を振ってくるのでフェリクスも軽く手を振って答えた。
「立てるか、アル」
アルに掛けていた魔法を解くとフェリクスは腰を抜かしているアルに向かって手を差し伸べた。
「はい」
その手を掴みながらアルの中ではさっきの光景が頭の中に鮮明に残っていた。
時間は少し戻る。
アルはフェリクスにレオナルド達の連携を見ておいてくれと言われていたが、フェリクスから視線を外すことが出来なかった。最初は迫りくるモンスターの数に圧倒され、恐怖を感じたがそんなもんはすぐに別の衝撃によって塗り替えられてしまう。
その様子はまるで何かの舞を踊っているみたいに綺麗だった。
フェリクスに迫るモンスターは全部、刀の一振りだけで葬られた。魔物の中の魔石を直接砕いているのか、魔物は倒された後、直ぐに散りとなって消えて行った。
アルはフェリクスの倒したモンスターの数が4桁になっているのをカウントしいた。それだけの数のモンスターが迫って来たがフェリクスは物怖じせず、レオナルド達のサポートすら、やってのけた。あれだけのモンスターを倒しながら、魔法を発動してレオナルド達を助ける余裕まであるのかと、アルは戦慄を覚えた。
最後の方はモンスターの数の方が足らなくなっていた。通路から出てくるモンスターが居なくなったのを確認してフェリクスはアルの方へ振り返った。
そこで時間は元に戻る。
「さて、ダンジョンコアも破壊しましたし、地上に戻りますか、若」
「はぁ、お前は昔から、変わんないね」
「あんたは何でダンジョン潜ったのよ、馬鹿」
「流石にそれはフォローしかねます」
ダンジョンに来た目的を忘れているレオナルドに対してパーティメンバーは苦言を呈した。
「さて、一番重要なものを隠すならこの奥だと思うんだよね」
フェリクスが指した先には壁しかなかったが、そこの一角が突然、吹き飛んだ。
「ごめん、俺の判断ミスだ」
そこから何かが飛び出してフェリクス達に突っ込んできたが、何者かの攻撃はフェリクスの刀によって受け止められた。
そこに姿を現したのは直剣を握り絞めた鎧だった。
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