第117話お兄ちゃん その4
サイド:森下大樹
「ってことで、もう終わりにしちゃって良いのか?」
金属バットを振りかぶった俺の言葉で蘆屋道満は顔面を蒼白にさせて、そして首をブルブルと振った。
「待て! 待てっ! 待て待て待て待てっ!」
「いや、待てって言われても……待てるかこのクソ野郎っ!」
ぶっちゃけ、俺の怒りは絶賛フルアラート状態だ。
ここまでキレたのはいつ以来なんだろうか。
忍者:服部雅から、ことの顛末を聞いた瞬間に血管が何本かブチ切れたし。
ってか、真理亜……マジで気づいてやれなくてすまん。
あー……クソっ! 本当にこんなんじゃ兄貴失格だ。真理亜は一人で悩んで……たった一人で戦ってきたってのに。
っつーか、どうして俺の周囲には素直に俺に事情を打ち明けてくれない奴ばっかなんだよ。
と、そこで蘆屋道満は真理亜に視線を送って「閃いたっ!」的に大きく頷いた。
「確かにワシではお前には適わん」
「だろうな。話にすらならんだろう」
「で、あの魔法少女は――貴様の妹なのだな?」
「ああ、そうなるな」
「奴はフルバーストを敢行している。つまり――老婆化と廃人化は避けられん」
「……だろうな」
「ここで提案がある」
「……提案?」
「ワシの軍門に下らんか? 降伏せんか?」
「手前の……軍門にだと? この圧倒的な状況でどうして手前に降伏を?」
「妹を――助けたくはないのか?」
「どういうことだ?」
「システムの管理者はワシだ。ならば……摂理を捻じ曲げ、老婆化の運命もワシの胸先三寸でできんこともない」
「……」
しばし俺は押し黙る。
そこで蘆屋道満は「貰った!」とばかりに大きく頷いた。
「ワシの目的は日ノ本の国の霊的治安を司るアマテラス――かつて、安部清明を派遣し、ワシを追い詰めた連中への復讐だ。その為に牙を磨き続けてきた。が、貴様という戦力を得ることができるのならば――雌伏の時は終わる。なあに、悪いようにはせん。贅沢な暮らしでも女でもすべては貴様の思うがままだ。どのようにしてワシの右手となる男を邪険に扱えようか?」
「……」
さて、どうしようか。
と、その時――阿倍野先輩がこちらに走ってきた。
「話は聞かせてもらったわ。蘆屋道満?」
「なんだ? 安部の小娘?」
「少し――森下君と話をさせてもらえないかしら? 一応、この人の参謀を私は自負しているわ」
「参謀って……まあ、そうですね。俺からも要請する。少し、阿倍野先輩と話をしたい」
懐から懐中時計を取り出し、軽く蘆屋道満は頷いた。
「5分だ。それで結論をつけろ」
※ 4時間後くらの日付変わったあたりに次話更新します。
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