第103話決戦前夜の頂上決戦 その1

 時系列は遡り、特異点発生の前日。




 サイド:森下大樹


 沖縄行の朝、羽田空港に向かう前に俺は母ちゃんの朝飯を食っていた。


「しかし大樹ちゃん?」


「なんだ母ちゃん?」


「突然……沖縄なんて大変なのですねー。さすがのお母さんも驚いたですー」


「ああ、俺的には母ちゃんが細かいことを気にしない性格で助かってるけどな。普通なら絶対止めるだろ」


「お母さんは放任主義なのですよー」


「まあ、その放任主義のおかげで、妹が夜な夜な遊び歩くようになっちまったんだけどな」


 と、そこで俺は手に持っていたサンドイッチを皿に置いて、真理亜を睨みつけた。


「おい、真理亜?」


「何? お兄ちゃん?」


 カップラーメンをすすりながら、真理亜もまた俺を睨み返してくる。


「沖縄から帰ってきたら話があるからな」


「は? なんで?」


「なんでって……」


「だから、私がどこで何をしてようがお兄ちゃんに関係なくない? 顔を合わせれば説教ばっかりでマジうざいんですけど」


「昔のお前は……そりゃあ多少は生意気だったけどそこまで酷くなかったぞ? 何があったんだよ?」


「だからお兄ちゃんに関係なくない?」


「……」


「……関係あるだろ。俺はお前の兄ちゃんだ」


 俺の言葉で一瞬だけ、真理亜は儚げな表情を見せて、そして首を左右に振った。


「話なんない。はっきり言わなきゃわかんない?」


「はっきりって何なんだよ」


「マジ……キモいんですけど」


 それだけ言うと、真理亜は食べかけのカップ麺をその場に置いて、立ち上がって自室へと去っていった。






 そうして俺は成田から機上の人になった。

 那覇空港でソーキそばを食べて、バスを乗り継いで市内のホテルへ。

 そして――首里城に辿り着いたのは夕方の頃合いだった。


「さすがに……MPの回復率はすげえな」


 阿倍野先輩曰く、神社や歴史的建造物は龍脈や風水上の重要なスポットの上に立っている場合が多いらしい。

 そして、この場合は首里城はバッチリとそのものズバリのスポットだったって訳だな。

 首里城内の広場のベンチでスマホを弄って、数時間――時刻は午後10時だ。

 おかげさまで沖縄に来てからMPも100以上回復している。


 と、そこで俺の眼前数メートルに身長140センチ前後の10歳前後の白髪の黒装束の少女が現れた。


「待たせたな魔法少年」


「だから魔法少年って何なんだよ」


「まったく、魔法少年なんていうワケの分からない奴がターゲットだなんて、あちきもツイてねえよな。困ったもんだぜ」


「ってか、こっちもワケのわからん奴に絡まれて非常に困ってんだがな」


 そこで俺は立ち上がり、周囲を見渡した。

 首里城の大広場の石畳……まあ、戦闘には支障はなかろう。

 ってか、間違いなく地形破壊が起きるだろうけど、ニンジャってのは闇の社会ではアンタッチャブルなヤバい存在みたいだからニュースとかにはなんねえだろう。


「言っておくが、俺は強いぜ? スキルを使用するお前なら言ってる意味がわかると思うが……レベルにすると78だ」


 ゴルフバックから金属バット――エクスカリバーを取り出す。


 しばし考え、忍び系幼女である服部雅はクスリと笑った。


「レベル……? ああ、段位のことか。それだったら、あちきの段位は――99段だ」









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