第97話魔法少女システム 後編
その日の放課後。
ちょっと話があるとのことで、阿倍野先輩とレーラが俺を森林公園に呼び出した。
で、今現在……いつもの森林公園で俺と阿倍野先輩とレーラが公園のベンチに座っているというのが現在の状況だ。
「ねえ森下君? 貴方の妹のことなんだけど……」
「え? 真理亜ですか? 前にもチラっと話をしたかもしれまんせんが、アイツはいつも朝帰りで困っているんですよ」
「そうなの、それで――」
何やら思いつめた表情の阿倍野先輩だったが、俺は言葉を遮ってこう言った。
「あ、そうそう、俺からもちょっと話があります」
「え? 話?」
「ちょっと沖縄に行かなくちゃならなくなりましてですね……」
「……沖縄? どうして?」
「ちょっと……実はですね」
一部始終を説明した後、レーラが瞳を見開いた。
「ニンジャ? アンタ本当にニンジャと接触したの?」
「ああ」
と、レーラの表情から血の気がどんどん引いていく。
「おい、どうしたんだレーラ?」
レーラはその場に跪き、嗚咽のように声を絞りだした。
「あい……え……ぇ……」
「おい、本当にどうしたレーラ?」
「あい……え……え……アイエエ……何で……なんで……ナンデ……ニンジャ?」
顔面蒼白でガクガクと震えている。
いかん、セラフィーナ先生と同じ状態に陥ってしまっているようだな。
っていうか、外国人というか……ヴァチカンの面子はニンジャにビビりすぎなんだよ。
「大げさなんだよお前らは」
と、俺は阿倍野先輩に視線を移す。
すると、阿倍野先輩は小刻みに体を震わせ、白目を剥いて口から泡を吹きながらこう言った。
「あい……え……え……アイエエ……何で……なんで……ナンデ……ニンジャ?」
「お前もかいっ!」
ともかく……と俺は思う。
阿倍野先輩がここまでビビっているってことは――
――ニンジャってマジでヤベえ連中なんじゃなかろうかと。
サイド レーラ=サカグチ
翌日の昼休み――高校の中庭。
「森下大樹も沖縄に行っちゃったし、どうすんのよ?」
「森下君はMPが枯渇しているわ。回復という意味でも沖縄のニンジャの聖地は的確よ。当然ながら、魔素の濃さはここいらとは段違いでしょうでしょうから」
「つってもさ……相手は忍者でしょ? ある程度MP回復しているって言っても、また大幅にMPを減らすんじゃん? いや、下手すりゃ……勇者でも……」
そこでフルフルと阿倍野輝夜は首を左右に振った。
「確かにそうかもしれないわね。でも、私はそれでも森下君を信じるわ」
「でも、どうすんのよ? 協力要請をできるような状況じゃなくなっちゃったわよ? 特異点の発生まで後数日でしょ? 妹ちゃんも張り切って全力全開で狩りまくってるし……」
「魔法少女……人修羅の問題は私達が片づけるしかないでしょうね」
「つってもさ? 歴代の魔法少女が……現世に溢れるんでしょ?」
「そう、それが魔女狩りが行われた理由の一つでもあるわね。正気を失った前回の特異点から発生した全ての過去の魔法少女が現世に溢れ、無秩序に破壊を開始する。でも、その為には、異次元に存在する卑弥呼の核が現世に現れる特異点の発生……逆に言えば、システムそのものを叩くことが出来る唯一のチャンスとなるのよ」
「私たちだけで抑えることはできるの? 本人は自分が何をしようとしているか……全く気づいてないんでしょう? それに、事態が大げさになればヴァチカンなり日本の組織からの介入もあるはずで……」
「ともかく――」と阿倍野輝夜は溜息をついた。
「やるしかないでしょう。今の私たちは……ヴァチカン風に言うのであれば、それは魔女の集会……いや、サバトを待つしかないのだから」
「でも、本当に真理亜ちゃんに伝えなくても良いの? たった一人で夜の道を歩み続ける修羅道の先に提示された安息の場所。でも、それは本当は……」
「何度も言わせないで。もう貴方も納得済みのことでしょう? 森下君の妹をピエロとして躍らせることになろうと、システムの全てを終わらせるためには――サバトを発生させなくてはいけないのだから」
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