第63話アリエル

 サイド:レーラ=サカグチ


 私が現場に着くと、酷い光景が広がっていた。


 四肢を槍で貫かれ、木に吊るされて気絶した阿倍野輝夜が縄で雁字搦めに固められていたのだ。

 石畳の床には血の溜りができていて、普段の能面フェイスはどこ吹く風――弱弱しい表情の彼女は、失血多量で今にも死にそうな勢いだった。


「辞めなさい!」


「しかし……姫?」


 私はセラフィーナに思いっきりに平手を打った。


「良いから辞めなさいっ!」


「しかし、邪魔する者には容赦をするなという我々は命令を守って……」


「そんな命令は……私は出していないわ!」


「ですが、リンフォード様がそのように……っ!」


 くっそ……リンフォード……。

 どこまで私をイライラさせるつもりなのっ!?

 今日のこの場は私に任せるって言ったじゃんっ!


 私は泣きそうになりながら、ロンギヌスで吊るされた阿倍野輝夜の縄を切った。

 そして、土気色の顔の彼女の脈を取る。


 ――良かった……生きてる。


 見たところ、セラフィーナたちも加減をしていたようで、内蔵に至る外傷も無い。

 

 私が安堵したその時――周囲に一陣の風が吹き、直後、圧倒的な怒りの霊圧が走った。


 ビクっと私たちが振り向いた瞬間――


「どういうことなんだ? サカグチさん?」


 セラフィーナを初めとしたガーディアンズ達は森下大樹の発した敵意丸出しの威圧のオーラで腰を抜かしてしまい、その場で膝をついてしまった。

 私にしても、膝がガクガクと震えて――そこで怒声がなった。


「――どういうことなんだって尋ねてるんだっ! 答えろよっサカグチさんっ! なんで阿倍野先輩が……死にかけてんだよっ!」


 森下大樹は私に歩みを進めて、そして私の肩を強く掴んで――


「ちょっと! 痛いから!」


 そこでセラフィーナが銀槍を森下大樹に繰り出した。


「貴様! 姫に危害を加えるなっ! アギュっ!」


 裏拳一閃。

 ボロ雑巾のようにセラフィーナは彼方の方向に飛んでいく。


「三下は黙ってろっ! 今回は加減した。だが、次は加減しない。次は裏拳で頭丸ごと粉微塵に吹っ飛ばすぞっ!」


 憤怒の表情の森下大樹。

 そこで、ガーディアンズの残りの4人が色めき立った。

 力量差は分かっているだろうに、彼女たちはそれでも私のために精一杯の虚勢を張る。


「姫に近寄るな! この化け物っ!」


「我等……レーラ様のガーディアンズ! 命は惜しくは無いっ!」


「仲間を助けに来たお人良し……! なれば人質を盾にとってしまえば……っ!」


 そこで私は精一杯の声で叫んだ。


「みんな! お願いだから! 森下大樹と阿倍野輝夜に近寄らないでっ!」


「しかし、姫……?」


「いいから近寄らないでっ! こちらから攻撃さえしなければ彼は命までは絶対に奪わないからっ! 勝てないから……絶対に彼には勝てないからっ!」


 私の言葉で、森下大樹は阿修羅のような表情を若干和らげた。


「何が起こったんだ? どうしてこんな事になってんだ? なあ、サカグチさん?」


「……ヴァチカンの命令よ。言い訳じゃないけど……こうなるとは私は知らなかった」


 森下大樹はしばし考えて、私に尋ねてきた。


「阿倍野先輩からメールがあった。助けてくれってメールがあったんだ。この人は……強がりで意地っ張りで俺には絶対によっぽどじゃなければ頼らない。そんな人が俺にメールを送ったんだ。怖かったんだと思う、死を感じたんだと思う。で、実際にこのザマだ」


「……そうね」


「命令の一言で、知らなかったの一言で……済まされるのか? 人が一人……死にかけてんだぞ?」


「……謝罪はしないわ」


「ハァ?」


「私の属している組織が、いや……私の部下が行ったことだもの。今更謝罪はできないわ」


「……で、何があったんだ?」


「ヴァチカンは命令遵守の上下関係のハッキリした組織よ。私たちには私たちの理屈があって……ただ、それだけの話」


「……事情は大体分かった。でも、俺には思うことがあるんだ」


「思うこと?」


「俺らって……君にとって……何なのかな?」


「……」


「俺と……阿倍野先輩だってきっとそうだ。多分……君の事をただの他人だとは思っていない」


「……」


「分かり合えることはできないのかな? やっちまったことは仕方ないし遺恨は簡単には消えないだろう。でも、サカグチさんは知らなかったんだろ? だったら、今からでも……まだ間に合うはずだ」


「……」

 

 優しい微笑を浮かべて、森下大樹は私に右掌を差し出してきた。


 私は彼の差し出すその手を握ろうとして……。


「……姫?」


 ガーディアンズの一人が私に声をかけてきた。


 そこで私は首を左右に振った。


 本当は森下大樹の手を握りたい。もう二度と離れないように――力一杯に握りたい。


 でも、私はこの10年間ヴァチカンで育ち、ヴァチカンの理屈で教育を受けてきた。


 今回の件は本当に心の底から納得ができない。

 でも、ヴァチカンの理屈ではそれは正しいとは分かる。

 そして何より、そんな些細なことは全て捨て置いて、それでも――今の私には9年間私を支えてくれた……大切な……守るべき人たちがいるのだ。


 私は元々ヴァチカン以外の場所で生まれ育ったから、最悪の場合はヴァチカンから抜けるという選択肢もある。

 でも、赤子の頃から聖騎士として生まれ育った彼女たちに、ヴァチカン以外に生きる場所を知らない彼女たちにそれを求めるのはあまりにも酷だ。



 そして――


 ――恐らくはリンフォードは森下大樹でもどうにもならない相手だ。



 私がリンフォードに反旗を翻せば、私とガーディアンズは全員ボロ雑巾のように殺されてしまうだろう。

 森下大樹だって……彼の性格上、ここで私が助けを求めてしまえば何があっても全力で立ち向かってしまう。

 それに反旗を翻えすとまではいかなくとも……安易にここでヴァチカンを抜けるという選択を取ると……それこそヴァチカンからの粛清の対象になる可能性もある。

 いや、私も含めて恐らくはそうなるだろう。



 ――だったら、ここで森下大樹と私たちは決別をする必要がある。



 今後、不要な危険が森下大樹とガーディアンズに……襲い掛からないように。


 私は最後に森下大樹に尋ねた。


「ねえ、森下大樹?」


「何だ?」


「私は私達の理屈に沿って、横浜を災禍に巻き込むことになる」


「絶対にそれは許せねえな。俺の育った町で、俺の家族も知り合いもたくさんいるんだ」


「うん。そうだよね? で、もう一度だけ尋ねるわ」


「ん?」


「もう、ハッキリ言っちゃうわね? 異世界で拾った金髪の少女。そして、私。何か思うところはない?」


「……なんでお前は……そんなにアリエルの事にこだわるんだよ」


 少し困ったような表情を見せる森下大樹に、私は涙が出そうになった。

 本当に色んな感情が胸を渦巻いていく。


 ――いや、でも……ありがとう。


 おかげでフンギリもついたわ。

 私は胸を張り、そして右手で森下大樹をビシっと指差した。


「森下大樹? 鎮祭の儀式は私たちが一つ潰したわ」


「ああ、神主さんが血まみれで倒れているのも確認したよ」


「最後の忠告よ。私たちは3日後にもう2つの拠点を攻めるわ。そう――確実に攻める。ここから先はヴァチカンの理屈の血みどろの大人の御伽噺の世界よ。だから――絶対に私たちの邪魔をしないで。今度はアンタ達のことは庇いきれない。いくらアンタが強くても……アレには絶対に勝てない」


「アレ?」


「私はヴァチカンに属しているわ。だから、アンタ達とはそもそも分かり合えない。それに……私にもこの世界で守りたい人たちができたんだ。馬鹿みたいに私のことをいつも気にして、私のためなら本当に命を捨てられるような……そんなお馬鹿な、狂おしいほどに愛おしい人たちに出会えることができたんだよ。これって幸せなことだと思わない?」


 私は泣き笑いの表情を浮かべて――にぃにへと強がりの笑みを浮かべた。

 そして、地面に倒れて痙攣しているセラフィーナを抱きかかえて、にぃにへと後ろ手を振った。



 ――これは決別。あるいは――失恋の宣言だ。



「だから、ごめんね。お願いだからこれ以上私たちには関わらないで……もう会うことも無いと思うから。さよなら……にぃに」


「……にぃ……に?」


「さよなら」


「おい、ちょっと待て! お前、今……にぃにって……」


 森下大樹の言葉には私は反応せずに、ガーディアンズを引き連れてその場を後にした。









 サイド:森下大樹



 それから――。



 俺は土気色の表情の阿倍野先輩に回復魔法をかけつづけた。


 回復魔法を使用すること2時間。おかげでMPは空っぽになったが、どうにか阿倍野先輩の峠も越えた。

 後は輸血をすれば簡単にいつもの憎まれ口を吐くこともできるだろう。


 阿倍野先輩に回復魔法をかけ続けている最中に、俺は今までの色んなことを思い出していた。


 ――そして、俺の頭の中で今更ながらに……にぃにという言葉でアリエルとサカグチさんがつながった。


「本当に……どんだけアホなんだよ俺は」


 サカグチさんが今まで出していたシグナルを、俺は気づけないでいた。

 本当は彼女は、彼女なりに控えめに……そして大胆に俺に伝えていたというのに。


 でも、それ以前に思うところもある。


 アリエルとしてじゃなく、ただのレーラ=サカグチもまた、俺の少ない友人の一人だ。それは間違いない。

 そして、彼女は何らかのシガラミで身動きが取れないでいる。いや、あまつさえ……俺を守ろうとしてくれているフシもある。

 今までの付き合いでそれが分からないほどに俺もアホじゃない。


「良し……」


 眠ったままの阿倍野先輩を総合病院に引き渡し、俺は家へと戻った。










 朝帰り。

 自室で3時間ほど仮眠して、昼下がりに俺はリビングのソファーでコーヒーを飲んでいた。

 と、そこで母ちゃんが隣に座ってきた。


「ダイキちゃん? 顔色真っ青ですよ?」


 朝帰りや学校を休んだことには何も言わずにそう言ってきた。

 まあ、いつもどおりの母ちゃんだ。


「なあ、母ちゃん?」


「どうしたですかー?」


「守りたい人が、助けたい人がいるんだ。彼女は多分……困っている」


「おっ!? ついにダイキちゃんにも彼女ができましたかー?」


 嬉しそうにそう言う母ちゃんを、俺は苦笑しながら制した。


「そんなんじゃねーよ」


「じゃあ、どんなんなのですか?」


「ただの古い馴染みの知り合いだよ。彼女は俺に何かを隠している。恐らくは自分ではどうにもできない悩みを抱えて……俺にもそれをどうにもできないと思っていて。で、俺にも事情を打ち明けられずにいるんだ」


「ふーむ……」


「そして多分、彼女は俺とは考え方も違えば生き方も周囲の状況も違う。俺の側に寄せようとすれば、あの娘は何かを失うことになると思うんだ。いや、少なくとも彼女はそう思っている。二つに一つを選ぶっつーかな……柔軟な思考ができない精神状態に追い込まれているんだ」


 彼女の言うヴァチカンの理屈。

 それは俺と阿倍野先輩の側の理屈とは絶対に相容れないものだ。

 いうなれば、それは俺が阿倍野先輩を取るか、サカグチさんを取るかという話なのかもしれない。


「……」


「このまま俺が何もしないっていう選択肢もある。それで彼女たちは上手く回るんだろうけど……かといって俺は何もしない訳にもいかない」


 まあ、少なくとも、ヴァチカンでのサカグチさんの居場所は無くなるだろう。

 だが、俺が動かないと一般人に甚大な被害が生じることも間違いない。

 そしてそれをこの国の霊的バランスを守る退魔師である阿倍野先輩は是とはしないだろうし、俺だって納得できない。


 母ちゃんは何かを考えて、そして天井を見上げた。


「何かを守ろうとすれば何かを失う……それはそうかもしれないのです。二兎を追えば二兎を失うという言葉もありますですしねー」


 そこで、母ちゃんは俺の両肩に手を回して、そして俺を引き倒した。

 所謂、膝枕の格好だ。


「でもね、ダイキちゃん?」


 母ちゃんは優しい微笑を浮かべて、俺の頭を優しく撫で始めた。


「捨ててはいけないもの。守らなければいけないもの。本当に二つに一つを、確かにダイキちゃんの言うとおりに選ばなくてはいけなくてはならない時もあるのかもしれないのです」


「……うん」


「でも、今はその時ですか? 本当にその時なのですか?」


「……え?」


「そこで二つを守るのが……男の子として生まれた宿命だとお母さんは思うのですよ」


「二つを……守る?」


「ダイキちゃんが何に巻き込まれているのか、お母さんには分からないのです。でも……」


「でも?」


 そこで、ニコリと母ちゃんは笑った。


「泣いている女の子を見捨てるような男の子には、お父さんもお母さんもダイキちゃんを育ててはいないはずなのです」


 苦笑しながら俺は笑った。


「うん。おかげで色々困っている」


 サカグチさん……アリエルにもこの世界で色々あったんだろう。

 色んなシガラミに雁字搦めに固められて、不本意ながらに「もう私たちには関わらないで」っていう言葉が出たんだろう。

 だからこそ、彼女は別れ際に泣きながら笑っていたんだ。


「懐かしいですね。子供のころはいっつも……ダイキちゃんは泣いて帰ってきて、こんな風に頭を撫でてあげたのです」


「うん」


「いや、つい最近までダイキちゃんは……学校でいじめられていたですよね? でも、いつの間にか、男の子の顔をするようになったのです。お母さんはそれが嬉しいのです」


「……うん」


 そこで母ちゃんは膝枕を辞めて、俺を無理やりに立たせた。


「で、結局俺はどうすれば良いんだ? 母ちゃん?」


 実際問題、何をどうすれば全てが丸くおさまるかなんて俺にも分からん。

 今、俺がやろうとしていることは……ただ行き当たりばったりに力技で全てをぶっとばそうとしているだけなんだから。


「ふふ。それはお母さんには分かりませんです。でもね? やりたいようにやれば良いんですよ」


「……ハァ?」


 そしてパンと掌を叩いた。


「不器用で良いんです。失敗したって良いんです。間違えたって良いんです。でも……悔いの無いように、絶対に今の自分にできる全力をぶつけてくるんですよ? お母さんはダイキちゃんを応援していますですよ」


 ちょっと涙が出てきそうになってきた。

 見た目は若作りだが、やっぱり俺の母ちゃんだ。

 ほとんど事情を分かってないのにこのアドバイスはありがたい。


「じゃあ、母ちゃん……ちょっと学校休んで……山奥まで……行ってくるわ」


「多分ですけど……この前に来た黒髪の綺麗な女の子と、お隣さん……外国人の美人ぞろいの一家も一緒に帰ってくるのですよね? 横浜駅辺りで電話をくださいなのです。特盛りのカラアゲを用意しておくのです。隠し味とかは無しで……本気を出さずに普通に作りますですから」


 そこで俺はクスっと笑った。

 本気を出さないときの母ちゃんのメシは一般人にもすこぶるウケが良い。


「体育会系ばっかだから、米は10合くらい炊いといてくれ」


「はいなのですー」


「じゃあ、母ちゃん……行ってきます。メシは任せたぜ?」


「泥舟に乗ったつもりで任せておくのですー」


「そこは大船だろ?」


「これは一本取られたのですー」


 笑いながら、俺は覇王の鎧――パーカーを身にまとう。

 そして、玄関に向かい金属バット――相棒であるところの聖剣:エクスカリバーを手に取った。


「アリエル……」


 ひとりごちながら、異世界で最後に見せた彼女の泣き笑いを思い出し、それが廃屋の神社で見せたサカグチさんの泣き笑いと重なった。


「必ず助ける。お前がピンチなら、困っているのなら――俺が必ず助けるから」


 そして、思う。

 あっちの世界で俺と一緒に旅をしていたヤンの兄貴は死んだ。

 俺のドジを庇って勇者を生かすために死んだ。

 他にも、俺を生かすために死んだ人はたくさんいる。


 そして、アリエルも死んだ。俺を助ける為に……勇者を生かすために死んだはずだった。



 でも、レーラ=サカグチは生きている。

 そう、アリエルは……生きているんだ。



 俺の手の届くところに、彼女はまだいる。

 だったら、俺が彼女に笑顔を戻すことはできるはずだ。


 ギュッと金属バットを握り締め、そして背負ったゴルフバックにエクスカリバーを収納する。

 あっちの世界では色んなものを失った。だから俺は力を求めた。

 もう2度と、悲しい思いをしないように、そして、悲しい思いをさせないように。

 そして、俺は力を得た。死ぬ思いをして、人を守ることができる力を得た。

 だから、俺は――



 ――もう、俺は絶対に何も失わない。







 そうして、俺が家を出て歩き始め、駅への曲がり角に辿りついたところで――セーラー服の少女の姿が俺と同じくゴルフバックを背負って微笑を浮かべて立っていた。


「あら? 奇遇ね? 森下君? 目的の神社も分からずにどちらまで?」


「ちょっと――レーラ=サカグチのところまで。行き先は阿倍野家の本家に殴り込みをかけてでも聞きだすつもりでしたよ」


「あら? 本当に奇遇ね? 私もそこに行こうとしていたのよ……九尾の神社での借りを返しに行くためにね。ちなみに目的の神社は私が知っているから殴り込みをかけなくても良いわよ」


 そうして俺は苦笑した。


「体調は? で、どうして先輩が?」


「誰かさんの回復魔法のおかげで万全よ。外傷もないし、輸血で一発全快だったわ」


「彼女たちが目指す拠点は二つです。恐らくはサカグチさんとガーディアンズ5名の二手に別れてきます。残る拠点の一つを落とされれば終わりなんですよね? 完封しないと意味がないんです。そして、俺と先輩の体は一つずつです。どちらが来ても……勝てますか? 後……次は本当に負ければ殺されますよ?」


「勝算はあるし、勝つしかないでしょう? あの馬鹿は……一発平手打ちしないと分からないはずだから。何にビビっているのかは知れないけれど本当にお馬鹿ね――ここに、こんなに頼れるナイスガイがいるのにね」


「アンタも九尾の時は俺に頼らんかったでしょうに」


「ふふ、そういえばそんなこともあったわね」


「本当に勘弁してくださいよね」


「でも、レーラ=サカグチが貴方に決別の言葉を言うほどにビビッているって事は……バックに笑えないのがいるはずよ?」


 俺は押し黙った。

 そして大きく大きく息を吸い込んで俺はこう言った。



「その為の――勇者です」



 ヒュウと阿倍野先輩は口笛を吹いた。


「真顔でそこまで言えるなら上出来よ。期待しているからね」


「ええ、任せてください」



 そうして、俺と阿倍野先輩は手と手を取り合って、駅へと向かった。





 ――向かう先は廃墟の神社。決戦の地だ。

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