第58話田中花子 ~セラフィーナ~
※ 今回下ネタ酷いです。
「姫! 洗濯物を下げておきますね!」
お隣さんへの挨拶を終えた私は入浴中だった姫に、ドア越しに声をかけた。
「うん。いつもありがとうセラフィーナ」
いつもどおりの可憐な声が返ってくる。
天使のような容姿に愛らしい声色。
姫のねぎらいの言葉に私の胸に温かい感情が広がっていく。
――私は姫を守る為にここにいる。
戦場では姫は自動回復能力を活かして最も危険な死地に先陣を切って斬りこんでいく。
我等ガーディアンズの存在意義は姫の負担を少しでも減らすことなのだ。
そして、姫の自動回復は魔力をもって為される。
自働回復関連の魔力の消費速度は尋常ではない。
我々の任務はただ単に姫の物理的護衛というだけでなく、もう一つの役割は姫の乾電池であることだ。
魔力譲渡の術式で……我々は姫に自らの魔力を捧げ、姫は例え魔力が空になったとしても再度……不死鳥のごとくに自動回復能力の力を使役することができるのだ。
そして、姫のサポート言う我々の目的は日常生活でも変わらず、どのような些細な雑事でも行うのが我等の使命となる。
洗濯カゴから、姫の使用済みの衣類を洗濯機に放り込む。
ただし、縞模様のショーツとブラジャーは当然のことながら別途で取り出し、ジャージのポケットに入れておく。
――姫は長風呂だ。大体1時間は入浴時間をいつも取られるのだ。
私は腕時計を確認し、残り時間の確認を行う。
――良し、いける。これならバレない。
台所に向かい、電子ポットのお湯を鍋に移す。
そして鍋を火にかける。
「今日は……ダージリンにしようか」
紅茶は英国人の最大の娯楽の一つだ。
沸騰したお湯に満たされた鍋。
その中に、私は茶葉と姫のショーツとブラジャーを放り込む。
煮込むこと数分。
これで姫のエキスをたっぷりと抽出した紅茶が出来上がった。
私は鍋を持つと、そのまま自室へと向かった。
紅茶を茶器に移し、そして私は自室の鍵を閉める。
次にクローゼットから姫の写真を元にしたポスターを数枚取り出した。
1枚を残して、部屋に画鋲で貼り付けていく。
そして、抱き枕を取り出し、やはり姫のポスターを抱き枕に装着させる。
そうして最後に私はタンスから――以前に拝借した姫の使用済み下着を取り出した。
今朝に拝借したものだから、熟成期間としてはイマイチだが、今日はこれで我慢するしかない。
次に、私は姫のショーツを頭に被った。
――いわゆる……変態仮面スタイルだ。
そして最後に片手で抱き枕を抱いて、片手でティーカップを手に持つ。
カップに口をつけると、ダージリンの芳醇な香りが鼻腔に広がっていく。
――本当に……落ち着く。何という幸せなひと時なのだろう。
感無量になった私は、ともすれば涙がこぼれそうになるのを必死に堪える。
「ああ……姫」
天井を見上げてため息をつく。
何故にあそこまで愛らしいのか。
何故にあそこまで気高く美しいのか。
「姫……姫……あァ……姫……フっ…フッ……フォーーーー!!!」
いかん、私としたとこが取り乱してしまった。
それもこれも姫が可愛らしすぎるのが悪いのだ。
と、そこで私は異変に気づいた。
――姫のショーツの香りが……いつもと違う。
これは……微かに漂うこの芳香は……まさか……メスの香り?
そういえば、昨日の晩にお隣さんでラブコメ的なちょっぴりエッチな一悶着あったという話だ。
まさか……と私は絶句する。
姫は、あの冴えない学生の部屋に行って……微かな発情を……?
子供の頃から姫の下着はチェックしているが、この香りは初めての出来事だ。
つまりは――これは尋常ならざる事態だと判断せざるを得ないだろう。
私は装着した姫のショーツを脱ぎ捨てて、一気に紅茶を煽り、吐き捨てるように呟いた。
「森下大樹……これは早急に話をつけねばならんな」
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